2016年の衝撃的なソロデビュー以来アーティストイメージを見事に更新していくゼインが、2枚目のアルバム『イカロス・フォールズ』をリリースした。
まずゼインといって真っ先に連想するものはなんだろう。やはり元ワン・ダイレクションのメンバーとしての姿という人も多いのではないだろうか。17歳の時にイギリスの人気オーディション番組「Xファクター」に出演した後、ワン・ダイレクションを結成し、怒涛の勢いで世界を席巻。時代を代表するボーイズ・グループとなった。しかしそんな人気絶頂の中、あまりに大きくなり過ぎた環境に疲れ、2015年にグループが休止を迎える一足前に脱退を発表。
当初は一切の活動を行わず実質の引退とも噂されたが、翌2016年に突如としてソロ作品をリリース。個人的にワン・ダイレクションのイメージが強かっただけに初めて『PILLOWTALK』を聴いた時は衝撃を受けた。トラップ・ミュージック通過後のダークさも感じさせる世界観にしっかりとハマったゼインの歌声。アイドル然とした表情はそこにはなく、純粋にカッコいい！と受け入れることができた。
2016年の映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に提供されたテイラー・スウィフトとの『I Don't Wanna Live Forever』は、これまた映画のテイストに添った彼のファルセットを楽しめる良曲となっていた。そんな元1Dというイメージを良い意味で覆す作品を連発、またMIAのアルバムやイギリスの人気ビートメイカー・ユニットであるスネークヒップスなどの作品に客演し、活動をさらに活発化させる。その中で2016年に満を辞してリリースしたソロデビューアルバム『Mind of Mine』は全米/全英ともに初登場1位を獲得し、アルバムでは英出身男性ソロ・アーティストとして史上初の快挙という記録を残し、新しいゼインを提唱するには充分過ぎるインパクトを与えた。
あれから2年、いよいよ12月21日に最新アルバムがリリースされることがアナウンスされた。(配信は12月14日)。この突然のニュースにファンはもちろん、ソロから新たにゼインの魅力に目覚めた人々の期待も高まったが、なんと今回は『イカロス(飛翔)』と『フォールズ(転落)』という2部作からなる大作であるという。2017年からリリースされている曲は全て収録され、さらに日本限定ボーナストラック2曲が収録された全29曲のアルバムは、ゼインのシンガー・プロデューサーとしての才能が贅沢に堪能できる。
もちろんゼイン自身が歌詞を含め全曲の制作に携わっているが、製作陣も豪華。12月に来日を果たすThe WeekndやLogic、Cardi Bなど手がけるFrank Dukesや名ヒップホップ・プロデューサーのティンバランド、さらに今作で一番多くの曲に携わる大活躍を見せているのが、Clean BanditやCharli XCXも手掛ける新鋭Salt Wivesだ。おなじみのベテランから新しい才能まで幅広いメンバーを揃えている。コラボレーションするアーティストも最近ではDiploとの『LSD』名義で活躍するSIAやNicki Minaj、PARTYNEXTDOORなどバラエティ豊か。そして今作でも楽曲によって表情を変えるゼインの歌声に注目してもらいたい。
ここでは日本限定ボーナストラックとして収録されている曲も紹介しよう。ドレイク率いるOVO SOUNDに所属し、ドレイクの最新アルバムやCalvin Harrisの作品にもフィーチャーされているカナダ人ラッパー/シンガーのパーティネクストドアをゲストに迎え、グラミー受賞歴を誇るフランク・デュークスとマーダ・ビーツが手掛けた『Still Got Time』。そしてSIAを迎え、元The Bird and the Beeのメンバーにしてアデルの『Hello』やケンドリック・ラマー、フーファイターズ、BECK、ポールマッカートニーのプロデュースまで、恐ろしいほどの活躍を見せるグレッグ・カースティンと共に手がけた『Dusk Till Dawn』。しかもこのミュージック・ビデオは映画『アメイジング・スパイダーマン』を手掛けたマーク・ウェブ監督が手掛けており、映画並みの世界観を味わえる。シンガーとしてだけでなく作曲作詞を手掛けるプロデューサーとしての彼の才能までたっぷり味わえる29曲もの大作。今後の活動がますます楽しみだ。
【リリース情報】
ZAYN - 『イカロス』と『フォールズ』
国内盤CD : 2018/12/21 | 配信 : 2018/12/14
17年-18年リリース・シングル全8曲+日本限定ボーナストラック2曲収録
Written by TJO.