“メロコア・パンク出身の4人が奏でるシティポップ” “ツマミいらずのグッドミュージック” なんだかすごい情報量で一瞬脳が「???」となるが、一度聴けばトリコになってしまう、それが「YONA YONA WEEKENDERS」の音楽だ。今年各所で話題をさらい、11月に待望のEP『夜とアルバム』をリリースしたばかりの彼らに、バンド結成の背景やEP制作の裏側を聞くことができた。
YONA YONA WEEKENDERS
Vo. 磯野くん、Gt. キイチ、Ba. シンゴ、Dr. 小原 "Beatsoldier" 壮史の4人で結成されたメロコア・パンク出身の4人組バンド。Vo. 磯野くんの表現力豊かな歌声と骨のあるバンドサウンド、長きにわたってアンダーグラウンドなシーンの最前線で活躍した彼らが作りだすステージは必見。2018年9月、自主制作盤「誰もいないsea」を会場限定で発売。同月、下北沢ERAにて行われたリリースパーティーでは、深夜イベントながら500杯近くの酒が出るという異例の事態に...。2019年4月、レコードストアデイ2019にて1st 7inchシングル「誰もいないsea/明るい未来」を全国の加盟店にて発売しSOLD OUT。その後アルバム楽曲配信を解禁し、Spotify、Apple Musicなどでは多数プレイリストに選出、 再生数は3ヶ月で13万回を突破。 メディアや著名人からもピックアップされ自主制作盤ながら各所でO.A.され、"ツマミいらずのグッドミュージック"に中毒者が続出中。
ーblock.fm初登場ということで、まずは自己紹介をお願いします。“お酒がすすむバンド”ということで、みなさんの好きなお酒も教えていただければ…!
磯野くん:ボーカルの磯野くんです。30歳、岡山県出身。好きなお酒はハイボール。最近プリン体が気になってるので…(笑)。
キイチ:ギターのキイチです。30歳、東京の葛飾区出身。最近は本搾りのレモンが一番気に入ってます。焼酎と果汁だけで作られてて、変な甘みがなくて好きなんですよね。
シンゴ:ベースのシンゴです。30歳、東京の神津島出身で、19歳のときにこっちに来ました。いつもビールのホワイトベルグを飲んでます。
Beatsoldier:ドラムのBeatsoldierです。29歳、岩手県出身。好きなお酒はキンミヤで割った緑茶ハイですね。次の日に残らないので(笑)。
ーもともとはそれぞれ別のバンドにいたということですが。
磯野くん:みんな別のバンドで、ライブハウスで一緒になるメンバーでした。
Beatsoldier:メロコアとか青春パンクのバンドをやってたんです。僕は今も掛け持ちで3つくらいやってますね。
キイチ:僕も、YONA YONAとは別で今もスカパンクのバンドをやってます。
磯野くん:僕はメロコアバンドを解散して、しばらく音楽から離れてたんですよ。でも就職した先がブラック企業で、1~2年働いたんですけど病んじゃって。シンゴが飲みに誘ってくれたときに仕事のことを愚痴ってたら、「もう一度音楽やれば?俺ベース弾くから。片手間で良ければ手伝うよ」って言ってくれて。それでもう一度バンドをやることにしたんです。僕がギターボーカルで、シンゴがベース、ドラムも必要だってことでBeatsoldierに声かけて。キイチは別の飲み会で一緒になったときに「俺もやりたい」って言ってくれたんです。
キイチ:ちょうどその時やってたバンドが解散するタイミングだったので、一緒にやれたらってことで。
磯野くん:でも彼はもともとベーシストなんですよ。
キイチ:そう。だからこのバンドに入るために機材も揃えてギター練習して。最初は何やっていいかわからなくて、とりあえず見てるだけでした(笑)。
磯野くん:それが2016年の頭ぐらいですね。
ーバンドがスタートするときに、シティポップでやることは決まってたんですか?
磯野くん:なんとなくは決まってましたね。僕はもともとこういう音楽も好きで、最初は弾き語りがやりたくて東京に出てきたんですよ。でも最初はどういうライブに出たらいいかもわからず、メロコアやってる専門学校の同級生のツテでメロコアを始めたんです。なので、今回は自分の歌が活かせそうな音楽をやろうと思って。あと今ちょっとブームにもなってるから、乗っかろうと(笑)。
ー他のみなさんは違和感とかなかったですか?
Beatsoldier:メロコアのシーンにはいたんですけど、いろんな音楽を聴くようにはしてたので、そんなに違和感はなかったですね。むしろ磯野の作る歌がめっちゃ良くて、スタジオで合わせてるだけで楽しいっていうのがあって。
キイチ:違和感というより、最初は何をしたらいいかもわかんなかったので(笑)。ベース目線でシンゴを見ても、「あ、こいつも何やっていいかわかってないな」って感じでした。今でもそうなんですけど、磯野とBeatsoldierはこういう音楽を知っててヒントをくれるのでやりやすい。あとは単純に良い曲を持ってきてくれるので。結構楽しみにしてるんですよ、デモを聴くの。「うわぁ、良いのきたなぁ!」っていう瞬間が楽しい。
磯野くん:シンゴはハイスタみたいなバンドでベースボーカルをやってたんですよ。もともとはガンガン突っ込む系の音楽だったから、YONA YONAでは「後ノリにして!」とかアドバイスして。
Beatsoldier:よく注意したよね。
シンゴ:最近ようやくスタートラインに立てたなっていう感じです(笑)。
ーバンド名はどうやって決まったんですか?
磯野くん:週末活動するバンドってことで「WEEKENDERS」は決まってたんです。
シンゴ:磯野とキイチと俺でバンド名決めようって飲んでたんだけど、決まらなかったんだよね。
キイチ:あのときは序盤で強いの飲みすぎた(笑)。これじゃダメだってことでカフェに入りなおしたんだけど「WEEKENDERS」しか出てこなくて。それで一旦解散して。
シンゴ:俺と磯野は近所に住んでたから一緒にチャリで帰って。そしたら突然「YONA YONA」って降ってきたんだよね。
磯野くん:そう。それで「YONA YONA WEEKENDERS」っていいじゃん!って決まった。
Beatsoldier:僕にはLINEで連絡が来て、「オッケー」って返しました(笑)。
ーYONA YONA WEEKENDERSとしての活動はどういう感じでスタートしたんですか?
磯野くん:みんな別で仕事をしてたので、最初は本当に遊び感覚で。平日の鬱憤を週末にバンドで晴らすって感じだったんです。2016年の年末を初ライブにしようって決めたんですけど、ライブするには最低でも5、6曲必要なので、曲を作ってスタジオに持っていって、みんなでジャムって…っていう感じで曲作りから。「明るい未来」が最初にできた曲ですね。ブラック企業で働いてたときの愚痴を歌った曲です(笑)。
Beatsoldier:疲れてる人に響く曲です(笑)。
磯野くん:「38度の微熱」っていう歌詞は「38度くらいで熱だなんて言ってないで働けよ」って言われてたのを歌詞にしました(笑)。
ーブラックですねぇ…。それからは?
磯野くん:2017年はライブがメインでしたね。どういうライブハウスにシティポップバンドが出てるかがわからなかったので、メロコア時代のツテを辿って、メロコア系のライブとかハードコアのイベントに出てました。
ーファン層はどこからついてきたんですか?メロコア系?
磯野くん:ほとんどそうですね。今でもそんな感じです。
Beatsoldier:前のバンドでも見てくれてた人たちが「あいつら変わったことやってるぞ」って聴いてくれたり、ライブに来てくれて。
キイチ:バンドマンの奥さんとか家族にやたらウケがいいんです(笑)。ただ、そこからどうやって広げていけばいいかがわからず。かといっていきなり知らない箱に出るのも怖いし、どうしようかと思ってたときに、Ultra Vybeっていう流通会社の方が連絡をくれて。
磯野くん:「誰もいないsea」のMVを撮って、これからどうしていこうか考えてるときだったよね。「シティポップバンドがハードコアのイベントに出てるぞ」みたいな噂を聞きつけて、ライブに来てくれてたんです。それで、「一緒に面白いことやりたいから、サブスクと7inchを出しましょう」っていう話になって。それが今年の春ですね。
ー結果的にシティポップではないライブに出てたのが良かったのかもしれませんね。
Beatsoldier:確かに。他のバンドと並んだときも、僕らの土臭さとか異質な感じが出ていいのかもしれない。
磯野くん:こんな身なりのシティポップバンドいないもんな(笑)。
シンゴ:うちらは満場一致でパーカー(笑)。
磯野くん:全国流通盤が出る前に、「誰もいないsea」の自主盤を作って下北沢ERAっていうライブハウスで深夜のリリースパーティーをやったときは、500杯くらい酒が出て。みんな酔っぱらいすぎてCD買ってくれなかったんだけど(笑)。そういうところから「ツマミいらずのグッドミュージック」っていうバンドのキャッチコピーが来てます。YONA YONAが他のバンドと比べて何が違うかっていうと、土臭い雰囲気とか、みんな酒が好き、若すぎない、サラリーマン、っていうところが僕らにしかない特徴だと思うんですよね。
ー今回のEPをリリースすることになった経緯は?
磯野くん:「誰もいないsea」がラジオで広がってサブスクの再生回数も伸びて。次はアルバムを作りたいっていう話をしてたときに今の事務所の担当からDMが届いて、会って話して所属を決めました。
ーじゃあ事務所に入ったのは今年なんですね?
磯野くん:そう。6月くらいです。
ーEPリリースは11月ですよね?すごいスピードですね。
磯野くん:事務所の人と僕らで飲みながら今後の活動イメージを話し合って、まずは最初のステップとしてEPを年内に出そうということになって。僕らが出したいと思ってたものを形にしてくれました。
ー「誰もいないsea」と「明るい未来」はもともとあった曲ですが、他の4曲は新曲ですよね。
磯野くん:はい。「アルプスへGO!」と「Never Sleep」はすでに出来てたので、あとの2曲は今年の夏に作りました。酒飲みの、夜のバンドってことでEPのテイストも「夜」をテーマに作ろうということになり、「夜のgroovin’」と「BUREIKO」を急ピッチで作って。ゲロ吐きそうになるくらい大変でした。歌詞も前日まで書けてない、みたいな。
キイチ:月1でレコーディングだったもんね。3ヶ月くらいで作った感じです。
ー楽曲制作は主に磯野くんの担当なんですか?
Beatsoldier:はい。あとは、構成とかちょっとしたアレンジをスタジオ内でみんなで作ってます。今年の夏は仕事終わってからスタジオに行って、っていう毎日でした。
ー楽曲制作で意見がぶつかったりとかはないですか?
磯野くん:あんまりないよね。
Beatsoldier:たまにかな。これはダサいぞと思ったら言うようにしてる。意見を出せば“いいじゃん”って受け入れてくれるし。ボツになった曲も何曲かあるんです。シンゴとキイチと僕はいいと思ってても、磯野がやりたくないって言うものはボツ。そこだけは頑なだよね。
磯野くん:そこはこだわりがあるね。難産なんですけど、曲作りは好きなので。
ーブレイクのきっかけになった「誰もいないsea」は仕事中に出来た曲だそうですね。
磯野くん:そうなんですよ。僕、外回りの仕事をしてるんですけど、突然メロディーが降ってきて。慌てて家に帰ってギターで弾いて作りました。名曲の予感がしたんです。
シンゴ:最初にスタジオ持ってきたときはふざけてるのかと思ったけどね(笑)。
Beatsoldier:俺も最初は「?」って感じだった。意気揚々とスタジオに持ってきたけど、「明るい未来」のほうがよくない?って。
シンゴ:そう。でも何回もボイスメモ聴いてたら耳についちゃって。
磯野くん:そうだったの?それは知らなかった。
ー曲を作るときは降ってくる感じが多いんですか?
磯野くん:いえいえ、この曲だけ特別ですね。僕がある程度骨組みを作ってみんなでアレンジして作るパターンと、スタジオでジャムって作るパターンがあるんですけど。「アルプスへGO!」はスタジオでジャムってできた曲ですね。サビのコード進行は浮かんでて、それをみんなで弾きながら。作ってる途中は“磯野語”っていう仮の歌詞で歌うんですけど、そのときは適当に「アルプスへGO~」って歌ってたらそれが採用されました。“アルプス”って歌舞伎町の居酒屋なんです。その時は新宿のスタジオだったので。サビが決まって、他の部分もお酒にまつわる歌詞にしました。
ー「アルプスへGO!」はMVもすごいストーリーでしたね。
磯野くん:ホンマイサムっていう友人が監督で、ずっとMVを撮ってくれてるんですよ。僕がでしゃばりなので、僕が主人公のストーリー仕立てにしたいっていう案を出したんです。しがないサラリーマンが女の子のいる店で酒飲んで、やらかして店員に殴られたりして、結局“アルプス”っていう身の丈にあった居酒屋にたどり着いてみんなで飲むっていうストーリー。でも監督には普通すぎるって言われて、埋められることになりました(笑)。
Beatsoldier:埋めた山も南アルプスのどこかなんです。そこもちゃんとかけてる(笑)。監督はYONA YONAになる前の磯野のバンドも撮ってるので、磯野の撮り方を一番わかってるんですよ。
ー改めて振り返って、今年はどんな1年でした?
磯野くん:早かった。特に6月からは激動でした。自分たちのペースでやってたものが、周りからのサポートでどんどん加速していったのを体感しましたね。良い話がどんどん決まっていくこのスピード感が初めてだったので、体が悲鳴をあげてましたが(笑)。でも本当に嬉しかったですね。色んな経験をさせてもらえた1年でした。
Beatsoldier:東京に出てきて10年、「バンドやっててよかった」って一番思った1年でしたね。みんなは他のバンドでリリースとか経験してたけど、俺は初めてだったので。タワレコ挨拶まわりとか、初めての経験がたくさんできて楽しかったです。
磯野くん:一番嬉しかったのは普通の人が僕らの音楽を聴いてくれてることですかね。メロコアのリスナーっていわゆる“キッズ”じゃないですか。今は自分の母親とかも良いって言ってくれる。もちろんメロコア大好きなんですけど。今の事務所に入って一番最初にやったライブがこれまで僕らが出ていたのとは毛色の違うライブで、SpotifyでYONA YONAを聴いてるっていう親子連れが来てくれたんですよ。3歳くらいの子が「誰もいないsea」ですごい踊るんですって言ってくれて。その人は事務所の周年イベントにも来てくれたんですけど。
Beatsoldier:すごいかわいいんですよ。小さい子がライブ中もステージの前で踊ってて。
ー今までの活動では出会えなかったリスナー。
シンゴ:本当にそうですね。
キイチ:確かにあの光景を見て「違うところにきた」って感じがしたかもしれない。
ー来年以降はどういったイメージで活動するんですか?
磯野くん:有名なフェスには出たいですね。ワーキャー言われたい(笑)。
キイチ:味をしめちゃったからね(笑)。
磯野くん:今回は「夜」っていうテーマでEPを作ったんですけど、次は昼間聴いても酒がすすむようなアルバムを作りたいななんて思ってます。30代が出せる爽やかさを詰め込んだような。
Beatsoldier:いい感じに肩の力が抜けたおっさんのバンドでいたいよね。
磯野くん:僕ら、「さまぁ~ずさんみたいになりたい」って言ってたんですよ。おっさんだけど爽やかじゃないですか。ああいうイメージのアルバムを作りたいですね。
キイチ:さまぁ~ずさんみたいなアルバムって何?
Beatsoldier:それはちょっとわかんないや(笑)。
磯野くん:…伝わらないか(笑)。まぁ、楽しみにしててほしいです!
アーティスト名:YONA YONA WEEKENDER
2019.11.20 発売 1st EP「夜とアルバム」
1,600 円 (tax out) / PDCR-0015 / para de casa
CD 1 枚組 ※紙ジャケ仕様
【トラックリスト】
01 アルプスへ GO!
02 Never Sleep
03 夜の groovin'
04 誰もいない sea
05 BUREIKO
06 明るい未来
全6曲収録
HP:https://www.yonayonaweekenders.com/
Twitter:@yyw_from_tyo
Written by Moemi