チルウェーブとはグローファイとよばれることもある、音楽ジャンルのひとつである。
メロディはノスタルジックな旋律が多く、チープさを感じさせるうち込みがバックトラックになっていることが多い。Clairoのようにチルウェーブの楽曲を作っているアーティストは、深くリバーブをかけてもやもやした音像をつくっていることが多くボーカルにもエフェクトがかかっている。シンセサイザーによるフレーズは浮遊感があり、ビートのパターンはニューウェーブの影響が強いディスコティックな要素が強くなっている。幻想的なアンビエントの特徴もブレンドしたレイドバック感が強烈なシンセポップである。
しかしこれらは最低限の要素であり、バンドによって音楽的な特徴は大きく違っている。サーフミュージックのようなチルウェーブを演奏するバンドもいれば、ビート寄りのアーティストもいるなど様々だ。
2000年代の後半から10年代にトロ・イ・モアやウォッシュト・アウトなどが登場したことが、チルウェーブが世界的に存在を知られることになったきっかけだ。また、盛り上がりの中心がSNSで作品の発表もインターネットが中心であったこともこのジャンルの特徴といえる。
チルウェーブに影響をされオカルトがテーマのウィッチハウスやヴェイパーウェイブといったジャンルも生まれるなど、新しいムーブメントも誕生している。
Clairoはボストン出身のミュージシャンである。10代のころから宅録でチルウェーブの影響を感じさせる楽曲を発表しており、インターネットを経由してファンベースを大きく広げている新世代のアーティストだ。
Clairoはbandcamp などSNSを中心にしてClairoは楽曲を発表している。特に2017年にFather/Daughter Recordsから発表されたコンピレーションであるThe Le Sigh Vol. IIIに収録されたPretty Girlという楽曲は話題となり、インディーポップ・バンドHoopsのメンバーであるDrewも絶賛した。
また、同年オスロのアーティストであるJakob OgawaのデビューEPにも参加するなど活動の幅を広げている。Clairoはチルウェーブからの影響を感じさせる楽曲を宅録で公開するだけでなく、アコースティックギターを演奏する動画などもネット上で公開しているのが特徴だ。特にエイミー・ワインハウスの楽曲であるhe can only hold herのカバーは話題を集めた。また2017年にはシングルを配信で3曲リリースしている。
2018年にはLil YachtyやHindsなどとコラボレーションしているMatthew Dillon Cohenを起用して、昨年配信限定でリリースしたシングルであるFlaming Hot Cheetosのオフィシャルミュージックビデオをネット上で公開している。
さらに同年の2月にはPC Musicというレーベルの所属アーティストであるDanny L HarleがClairoを招いて新曲を発表している。
中田ヤスタカやCarly Rae Jepsenなどメインストリームのアーティストとコラボレーションすることが多いDanny L Harleが、Clairoをフィーチャリングアーティストとして起用した楽曲のBlue Angelは神聖な雰囲気を感じさせる曲調である。
PC Musicに所属するアーティストならではの特徴である人工的な質感のあるトラックだが、音色はとてもきらびやかでビートも控えめになっている。この曲でのClairoボーカルはpretty girlで聴かせたようなキッシュで舌足らずな歌い方とは違い、神聖さを感じる歌声になっている。
Clairo - Flaming Hot Cheetos
Photo: https://www.facebook.com/clairecottrill2/
Written by 編集部