日本ではあまり耳にする事のないムーブメント、SYNTHWAVE(シンセウェイヴ)とは

SYNTHWAVE/OUTRUN についてPART2STYLEのNISI-Pが解説。
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2019.11.21 09:00

Written by PART2STYLE・NISI-P(Twitter:https://twitter.com/nisi_p )


PART2STYLEのNISI-Pです。

今回は僕の番組「PART2STYLE RADIO」内で紹介したSYNTHWAVE / OUTRUNについて、番組内では辿り着かなかったところまで掘り下げてみたいと思います。


先ずはSYNTHWAVEとは何なのか?

いくつかインターネット上に上がっている記事の引用を見てみましょう。



●シンセウェイヴ Wikipedia


“音楽ライターの四方宏明によれば、シンセウェイヴでは「サウンドだけではなく、コンセプトとヴィジュアルにおいて、80年代カルチャー(映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、ファッション、グラフィックなど)へのノスタルジー的引用」がおこなわれるという。

音楽的には、シンセウェイヴは1980年代の映画、ビデオゲーム、カートゥーンなどから強い影響を受けている。このほかには、ジョン・カーペンター、ヴァンゲリス、タンジェリン・ドリームなどからの影響もある。

ミュージシャンのPerturbator(James Kentのソロプロジェクト)によれば、シンセウェイヴは基本的にインストであり、1980年代風の常套句が含まれていることが多い。例えば、電子ドラム、ゲート・リヴァーブ(英語版)、アナログ・シンセサイザーで鳴らしたベースラインやリードなどが、当時の曲を模倣するために使われる。”

引用:シンセウェイヴ - Wikipedia


●What is Synthwave? 2018 Edition


翻訳

“シンセウェーブに見られる先ず第一の概念は、砂浜やデッキ、または当時のアーケードゲームで過ごした夏の日々のロマンチックなビジョンです。このビジョンは、ヤシの木や海辺の夕焼けに満ちたマイアミやロサンゼルスなどの沿岸のアメリカの都市のイメージに基づいています。音楽的には、80年代に理想的とされたイメージを捉えています。サーフボードやローラースケートをしている人が集まるビーチを背景にピンク色のネオン文字で「Come to L.A.」と書かれたビンテージのポストカードの音楽的な表現です。


シンセウェーブの2番目のコア概念要素には、80年代の科学技術への憧れが含まれます。この側面は、シンセウェーブプロデューサーのサイエンスフィクション、コンピューター、ネオンライト、未来的なスーパーカーへの関心を通して表されています。また、80年代のホラー映画にも適用されます。ホラー映画自体には、科学技術のテーマが頻繁に含まれていました。


音楽的には、シンセウェーブの起源は、 ‘00s半ばのダンスジャンル、特にハウスとニューディスコに関係しています。 初期のシンセウェーブアーティストは、80年代のユーロディスコ、ファンク、エレクトロ、映画、テレビ、ビデオゲームのサウンドトラックからインスピレーションを得、特にレトロなシンセサイザーサウンドにフォーカスしました。 テレビコマーシャル用の80年代のジングル、VHS制作会社、夜間のニュース番組などの小さな要素も、このジャンルの起源に役割を果たしました。


シンセウェーブが80年代に夢中になったにもかかわらず、それは単に古いサウンドとアイデアの再ハッシュではありません。 このジャンルの曲のほとんどはヴィンテージクリエーションに使用できず、実際の80年代の音楽はほとんどシンセウェーブのように聞こえません。 代わりに、過去からの要素のレトロフューチャリスティックな進化であり、融合であり、適切に明確な音楽的および視覚的側面を持つ代替タイムラインに取り込まれます。 プロモーターのサミュエル・バレンタインが簡潔に言うと、「シンセウェーブは決して起こらなかった未来の音楽ですが、誰もが80年代に夢見ていたものです。」 ”

引用:What is Synthwave? 2018 Edition



●Synthwave,what is it?


翻訳

“RetrowaveまたはOutrunとしても知られるSynthwaveは、2000年代初頭に登場した電子音楽のスタイルです。優れたインストゥルメンタルパートで、80年代のSF映画(ニューヨーク1997、ロボコップ)または象徴的なTVドラマシリーズ(ナイトライダー、ストリートホーク、マイアミバイス)から来たシンセサイザーメロディーとニューウェーブの音楽ジャンル(デペッシュモード、ザ キュア)に大きく影響を受けています。SYNTH(esizer)と(new)WAVEの二つから名前が生まれました。ジャン=ミシェル・ジャール、ジョルジオ・モロダー、ウェンディ・カルロス、ジョン・カーペンター、ヴァンゲリス、タンジェリン・ドリームなどの伝説的なミュージシャンは、このスタイルに多くの影響をもたらしました。リズムの基本は、80年代の楽曲から直接サンプリングされ、フレンチエレクトロに多く見られるような動きのあるフィルターで処理されます。


Synthwaveの作曲家は、SideChainコンプレッションから、また時にはハウスミュージック、エレクトロロック、ヒップホップに見られるような重く強力なキックやスネアからベースラインを作成するために現代の音楽機材も使用しています。このスタイルは、ホラー映画の音の雰囲気に触発されたダークウェーブ(またはダークシンセ)、80年代と同じように音色を処理するシンセポップ、メランコリックかつロマンチックなドリームウェーブ、レトロ フューチャリスティックな映画に直接インスパイアされたフューチャシンセなどにも同じように見られます。”

引用:Synthwave,what is it?



とまぁ、以上の記事からわかる事として


1. 80年代シンセサイザー音楽、ニューウェイブ等の影響を強く受けた音楽である。

2. 同じSYNTHWAVEの中でも陰と陽的な2種類に大きく分かれる。

3. フレンチエレクトロ的なフィルタリングやコンプレッション処理が多く見られる。

4. 音楽だけでなくアートワーク等を含めた世界観としてのムーブメントである。


といった感じでしょうか。


とは言ったものの、誰が定義定義付けたわけでもなくインターネット上で膨れ上がっていったムーブメントなので、製作者達の自由な解釈によって様々なものが出てきているのも現実です。


ただし同じ80年代モチーフのムーブメントの中でもVAPORWAVEとはハッキリとした区分けがなされているようで、VAPORWAVEとはサンプリングソースありきのエディットを主体とした楽曲、SYNTHWAVEは打ち込みを主体としたオリジナル楽曲という解釈で大体合っていると思われます。

近年よく目にする、邦楽の80年代アニメや歌謡曲、シティポップなどがエディットされた楽曲はこちらのVAPORWAVEやその派生ジャンルに含まれるものであることが多い。

映像に関してもグリッチエフェクトやRGBスプリット、VHS加工などが極端に用いられているものもVAPORWAVEに関するものであることが多い。


こちらのVAPORWAVEに関しては日本語による情報もインターネット上に多く見られるので、興味のある方は是非チェックしてみてください。


この2010年代に人気を博したサブカルチャームーブメントVAPORWAVEを近年急激な勢いで追い抜いたのがSYNTHWAVEであり、海外版2ch(現5ch)的存在であるredditでもVAPORWAVEコミュニティーの登録者数158Kに対してOUTRUNコミュニティーは326K(2019年11月時点)と圧倒的です。

もはやその勢いはサブカルチャーという域を超え、様々なシンセサイザー等ソフトウェアのプリセット音源としてSYNTHWAVEが入ってきたり、沢山のサンプル音源パックが販売されたり、DAWアプリケーションの大手STUDIO ONEの新作発表の映像が完全にSYNTHWAVEをモチーフとした世界観であったりと様々なところで勢いと影響を感じることが出来ます。


にも関わらず、国内においてSYNTHWAVEというジャンル名を聞いて音楽的にピンとくる人がほぼいないのも事実であり。

その理由として、reddit内でも純粋に音楽的な観点よりも、SYNTHWAVEっぽい絵を描いてみたとか、SYNTHWAVEっぽい写真撮ってみた等アートワークなども含めた広がりが大きいことがあるでしょう。



Google画像検索「80s synthwave album covers」キャプチャ


Synthwave album cover art


Googleで「80s synthwave album covers」と画像検索すると、徹底して世界観の追求がなされており、どれを取ってもわかりやすい。

そしてアートワークに関しても、サイバーパンク的な物と夕陽やヤシの木がモチーフになった物の2通りがみられます。


SYNTHWAVEのロゴジェネレーターなる物も発見。

Retro Wave - PhotoFunia: 無料のフォトエフェクトとオンラインフォトエディター

https://m.photofunia.com/jp/effects/retro-wave




Kavinsky、Mitch Murder、FM-84、Timecop 1983、Lazerhawk、Miami Nights 1984等、調べて行くとよく目にする名前が出てくるのですが、その中でもフランスのプロデューサーKavinskyさんはとても重要人物のようで、『Teddy boy』という2006年に発表されたEPがSYNTHWAVEの走り的存在なよう。




そして、このKavinskyの「NightCall」が2011年にアメリカのアクション映画『DRIVE』のオープニングに使われ、その他にもサントラにはELECTRIC YOUTH等SYNTHWAVEのアーティストが起用されたことから、一気にその存在が知られる事となったそう。




その後は、Hotline MiamiやKung Fury(こちら何と主題歌を歌っているのはナイトライダーのデビッド・ハッセルホフ)などゲームにフィルムにと色々なところでSYNTHWAVEは活躍を見せます。



これらの楽曲達を一枚の画像にまとめたものが、Outrun/Synthwave/Retrowave Essential Album Chart というタイトルでSubredditにアップされているので、興味がある方はここから辿って色々聴いてみて下さい。

https://www.reddit.com/r/outrun/comments/7j2nta/i_made_an_outrunsynthwaveretrowave_essential/



reddit:Outrun/Synthwave/Retrowave Essential Album Chart


現在進行形で様々な解釈によって広がりを見せているSYNTHWAVE、僕自身が愛して止まない理由として、もちろん大好きなヴィンテージシンセサイザーがふんだんに使われている事もあるのですが、それ以上に、格好悪いくらいにストレートな少年の憧れや夢のようなワクワク感が詰まったカルチャーであること。

皆が巧みな変化球で三振を取り続ける中、ひたすら170km/hのストレートを投げようとしてくるような無骨さが僕の心を掴んで離さないわけなのです。


そんなSYNTHWAVEをまとめたMIXをSCENE MIXにアップしたので、是非皆さん聴いてみて下さいね。



HOT80’s SYNTH WAVE MIX by NISI-P

https://block.fm/radios/785


それでは!!また番組で!!


PART2STYLE RADIO

毎月第3水曜日20:00-21:00放送

https://block.fm/radios/3






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