Written by NISI-P(PART2STYLE)
どーも皆さん。PART2STYLEのNISI-Pです。
PART2STYLE RADIO内のコーナー“HOT80’S” 連動企画。
今回は80年代の音楽史において忘れてはいけないブレイクビーツについてUKベースミュージック視点から触れてみましょう!!
そもそもブレイクビーツとは何なのか?
元は70年代にアメリカのブロンクスにて、HIPHOPの父ジャマイカ系アメリカ人のDJクールハークが、2枚の同じファンクやソウルのレコードを使い、間奏のドラムだけになる部分を繋ぎ合わせプレイしたのが始まりと言われています。
ピンとこない人は映像で見てみて下さい。02:00あたりからまさにそれって言うのが見れます。
dj KENTARO DJテクニック講座(02:00よりビートジャグリング)
因みにこのDJクールハーク等によってDISCOミュージックからHIPHOPへと時代が移って行く様子が、Netflixの“ゲットダウン”と言うドラマで見ることが出来ますので、興味がある方は是非。
このゲットダウン、クールハークやグランドマスターフラッシュをはじめ名だたるHIPHOPレジェンドが制作協力している作品です。
とまぁ、こうしてファンクやソウルのドラムだけになる部分に着目すると言うカルチャーが産まれます。
そして、70年代終盤から80年代にかけて、ニューヨークではラリー・レイヴァンがガレージを、シカゴではフランキー・ナックルズがハウスを、デトロイトではホアン・アトキンスとデリック・メイがテクノという音楽を誕生させます。
そんな中、ROLANDのTB303,TR909というシンセサイザー、ドラムマシーンの価格が下落。中古市場に二束三文で出回り、それに目をつけたデトロイトやシカゴのアフリカ系DJやプロデューサー達が音数も少なく骨太で荒削りな楽曲を制作し始めます。
TB303 & TR909
https://partizanskiyizsintezator.tumblr.com/post/15316148223/thats-it
そんなディスコ・ミュージックを継承しつつもニューウェイブ感にあふれるシカゴハウス やそこから派生したアシッドハウスは、サッチャー長期政権の政策によって経済状況が大きく変動したイギリスの若者達によるセカンド・サマー・オブ・ラブというレイブ・カルチャーによって受け入れられ、大西洋を越えていきます。
The Summer Of Rave 1989 (Full Documentary HQ)
当初はLGBTによるメッセージのアウトプットであったハウス・ミュージックも海を越えるとともに、そのメッセージ性は薄れ自由度が高まり、ヒップハウス、イタロハウスなど色々な形に広がっていく中、87年にはM/A/R/R/SのPump Up The Volume、
M|A|R|R|S - Pump Up The Volume (Official Video)
89年にはBLACK BOXのRide on time、I don’t know anybody else、同じく89年 TechnotronicのPump up the Jamなど世界的ヒットが生まれて行きます。
Black Box - Ride on Time (Official Video)
Technotronic - Pump Up The Jam (Official Video)
同時に世界的ヒットとまでは行かないまでも、HIPHOPの手法を強く押し出したColdcutやNorman Cook(後のFatBoySlim)等ブレイクビーツ使いとして名を馳せる面々も活躍を始め、HijackやGunshotといったUK HIPHOP勢が高速ブレイクビーツに乗せてラップをし始めたり、我々のファミリーでもあるDADDY FREDDYや、今ではCongoNattyとしてジャングルの第一人者となっているRebelMC等 がレゲエ色の強いブレイクビーツを使った作品を出し始めたりとあちらこちらでブレイクビーツの存在感が強まって行きます。
Coldcut - Say Kids What Time Is It? (by Ninja Tune)
Double Trouble ft. Rebel Mc - Street Tuff (Official Video)
このようにして90年以降の爆発的なダンスミュージック・ブームが訪れ、UKならではの自由な解釈によってブレイクビーツとは切っても切れない関係であるハードコア、ジャングル、ドラムンベースが産まれて行くのですが、番組コーナーのテーマ的に90年以降のお話は別の機会に。
とは言え、このままではあまりにもなので、90年代のジャングルを代表するモンスターヒットを例に説明すると、M Beat feat General LevyのIncredibleという楽曲、こちらで終始流れているドラムビートはBlowflyのSesame Streetという楽曲のドラムのみになっている部分をテンポを速めて流しているものです。
M Beat feat General Levy Incredible
blowfly - sesame street(00:25辺りより)
当時のサンプラー(録音機材)はメモリーの都合上、録音可能時間がとても短く、名器として名を残すE-MUのSP1200は1つのパッドに2.5秒、全体で10秒、AKAIのMPC60でメモリ増設しても26.2秒までしか録音出来ないため、早回しで録音そしてサンプラー内でピッチを下げて使うというプロセスを強いられていたのですが、そのお陰で荒々しい独特のブレイクビーツ感や、ジャングルなど高速ブレイクビーツが産まれるわけです。
E-MU SP1200
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:E-mu_SP-1200_(111607sp1200).jpg
AKAI MPC60
https://happymag.tv/in-praise-of-the-akai-mpc-a-hip-hop-time-machine/
現在は作曲にしてもパソコンさえあれば、やりたい事は大体出来てしまう時代ですが、不便な中の創意工夫と行き当たりばったりのノリで数々の素晴らしい音楽ジャンルが産まれたわけで、この便利な時代にあえて目の前にあるものだけで頑張って何かを産み出してみるのも面白いかもしれませんね。
という事で、今回の番組連動MIXはブレイクビーツとしてサンプリングされ数々の名曲を産み出したサンプリングソースのファンクやソウルの代表的な物を集めてみました。
ジャングルやドラムンベースで使われるものを中心に、ヒップホップなどの大ネタなど、超長尺の大辞典的MIXになったので、コレのここがああなってるんだなぁとか、そんなのも関係なく素敵な曲だなぁとか、そして皆んなジャングルやドラムンベースのようなハードな音楽を産んだ人達もこういった音楽を通って来てたんだなぁと、それぞれ楽しんでみて下さい。
音楽って本当に素晴らしいものですね。
では。
BreakBeatsMix by NISI-P
nisi-p (part2style)
PART2STYLE RADIO
毎月第3水曜日20:00-21:00放送