Anthem(アンセム)と呼ばれる楽曲は、DJをかじったことがあるアーティストやミュージシャンであれば、誰でもひとつは思い浮かぶ事だろう。音楽が世界中にここまで広がりを見せていることについても、多大なる貢献をしたことは説明することもないといえる。そういったアンセム曲を聞くことで元気をもらったという人も多いのだ。
アンセム曲といえば、もともとは16世紀なかば以降、イギリス国教会の礼拝式に用いられる合唱曲という位置づけであった。そこから「何かを代表する楽曲」という意味に幅が広がり、その何かとは自分自身であったり、国や街、または季節など、「その楽曲でイメージされるものがある楽曲」が現代ではアンセム曲ととらえられており、多くの人に夢や勇気を与える楽曲とも言える。音楽の街ニューヨークを代表する近年のアンセム曲といえばこの曲がイメージされるのではないだろうか。
今を時めくDJアーティストの多くも、それぞれのキャリアの中で存在するアンセム曲の影響を受けたという人も多いのではないだろうか。無類の音楽マニアと呼ばれる人の中にも、自分だけのアンセム曲が最も好きという人も多い。DJを得意分野とするアーティストやミュージシャンの中にも、幼少期からそういったアンセム曲に夢中になったというケースも少なくない。むろん、育った環境や家庭の雰囲気などによっても受ける影響の違いは明らかである。
アンセム曲は、それぞれの国によって、捉え方や対峙の仕方も全く異なるということは確かなことといえるだろう。国の威信をかけてアンセム曲を作り上げるという国家も多い。「国家が国民の聞く音楽まで統制できるの?」という疑問を持つ人もたくさんいるかもしれないが、その答えはもちろん、ノーだ。日本以外の国でも聞く音楽は原則として全く自由である。
前述したように、昔から教会の音楽としてもアンセム曲が度々のようにクローズアップされるのが、イギリスである。とりわけ、イングランド国教会の礼拝では、毎日の朝晩に大勢の人が集まってアンセムを歌うことになる。何語で歌うかが気になる人も多いだろうが、英語を使うのが一般的なケースだ。カトリック教会のモテットと似ているという評判も多いが、あくまでも、一線を画していることは覚えておきたいところだ。日本人からしてみれば、同じように聞こえるかもしれないが、当事者にとっては、全く異なるものという認識を持つことも多い。
祈祷書において、「アンセム」という言葉が出てきたのは1662年が初めてであり、その言葉はかなり歴史が長いといえるが、DJ界やハウスミュージック、R&Bなどでも使われるようになったきっかけについてはハッキリしないというのも真実である。毎日のようにアンセム曲に合わせて踊ることが楽しみというアーティストやミュージシャンも多いが、「曲のルーツや時代背景などには興味がない。楽しい気持ちに導いてくれればそれでよい」という意見を持つ人も多いだろう。
現代音楽におけるアンセムとは、応援歌や国歌として位置付けされることが多い。「応援歌や国歌と聞くと、なんとなく堅苦しい」というイメージを持つ人も多いかもしれない。オリンピックなどの国を挙げての大会なセレモニーなどの機会がなければ、なかなか披露されることも少なくなってしまう。代表的なアンセム曲といえば、「伝説のチャンピオン」を真っ先に挙げる人も多い。ご存知クイーンが世に送り出した名曲だ。スポーツ応援歌としての認知度も高くなっており、日本はもとより、世界中のあちらこちらで演奏されている。そのタイトルにもある通りに、たくさんの人を勇気づけるメッセージ性の強い楽曲である。
written by 編集部
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