イギリス音楽業界、コロナ禍の影響により、約6万9000人の雇用が失われたことが明らかに

雇用が失われるとともに同国の音楽産業の経済価値も1年でほぼ半減。特にベニューやフェスなどライブビジネスの落ち込みが目立つ。
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2021.10.25 12:00

イギリスでは昨年、コロナ禍でクラブやライブハウスなどの音楽ベニューの閉鎖、大規模フェスの中止などが相次いだことにより、音楽業界で働く約6万9000人の雇用が失われていたことがわかった。また、同国の音楽産業の経済価値は、数十億ドルの損失を被ることになり、この1年間でその価値はほぼ半減することになったという。



音楽業界の雇用人数は昨年1年で35%も減少


音楽団体・UK Musicの年次レポート「This Is Music 2021」によると、2019年時のイギリス音楽業界には、音楽販売やライセンス、グッズやライブなどにより、58億ポンド(約9083億円)分の経済価値があったという。しかし、コロナ禍の昨年は31億ポンドにまで下落。音楽業界の雇用人数も過去最高だった2019年の19万7000人から昨年は12万8000人へと35%減少したと推定されている。

また、イギリスの音楽業界の労働者の4分の3は、個人事業主たちによって占められているが、個人事業に転身したばかりの場合は政府の支援制度を受けられなかったこともあって、何万人もの労働者が再就職のための職業訓練を受けるなど音楽業界とは別の仕事を探さなければならなかった。



2020年のライブビジネス部門は、前年から約90%下落


最も損失が大きかったライブビジネス部門では、2020年の収益は、2019年から約90%減の数億ポンドにまで下落。その収益の多くは、2020年の年初に行われたロックダウン前のライブやその他のイベントによて得られたものだった。

UK MusicのCEOのJamie Njoku-Goodwinは、「この18ヶ月間は、イギリスの音楽業界にとって非常に厳しい状況で数十億ドルの損失を出してしまいました。UK Musicでは政府に対し、イギリスの音楽業界、特にライブビジネス再建のための支援強化策の最優先事項として、ブレグジット後のEU内でのツアーの障壁を取り除くことを要請しています」とコメント。音楽業界に対する税制上の優遇措置や、EUの一部の国でツアーを行うミュージシャンに対する交通手段や労働許可証の制限の撤廃、ライブイベントのチケットにかかるVAT(付加価値税)の恒久的な削減、などの措置を求めている。

イギリスでは今年8月に音楽業界からの政府への支援要請により、コロナ禍で中止や延期せざるをえなかったフェスやその他の大規模イベントに対する保険制度の導入が実現したが、政府対応の遅れにより、昨年の音楽業界の損失を回復させることはできなかった。また、コロナ禍の影響により、同国のナイトライフシーンでも8万6000人の雇用が失われたことがNTIA(夜間事業協会)の報告で明らかになっている。

関連記事:イギリスのナイトライフシーン、コロナ禍の影響により、8万6000人の雇用が失われたことが判明 

written by Jun Fukunaga

source: https://djmag.com/news/over-one-third-uk-music-industry-workers-lost-jobs-2020-new-report-finds


photo: Paul Holloway 

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