近年、イギリスの権威ある音楽賞でも優秀な成績を収めるアーティストを輩出しているUKのヒップホップシーンだが、そのうちの「UKドリル」と呼ばれるサブジャンルが最近、同国の警察の規制によって、YouTubeに公開していたMVを削除されるという事件が起こった。
「UKドリル」は、元々はアメリカのシカゴ発祥だと言われている暴力的な表現が特徴のヒップホップのサブジャンル「ドリル」のイギリス版で、本家同様、犯罪がテーマになった過激で暴力的な内容のギャングスタラップ。(最近ではDrakeにフィーチャーされたGiggsもこのジャンルの有名ラッパーとして知られている)
そのため、それを問題視したスコットランドヤード(ロンドン警視庁)は、過去2年の間にYouTube上に公開されている50~60本のUKドリル関連MVの削除を同プラットフォームに依頼しており、5月には30本ほどのMVが削除されたとThe Guardianなどが報じていた。
またUKドリルの有名グループの1101は、先月、警察からその音楽で使われる暴力的なリリックが問題視され、今後、許可なくそういった内容のリリックを書いたり、音楽を制作することができない状態に追い込まれたことが報じられるなど、UKドリルは現在、公権力による規制対象になっている。
こういった現状を踏まえ、UKドリルコミュニティのアーティストやファンはその対抗策として、表現への規制がYouTubeなどメジャーな動画投稿サイトなどより、ゆるいと考えらているアダルトサイトに削除されたMVを投稿するアイデアを思いつき、実施。最近では実際に有名アダルトサイトのPornhubでUKドリルのMVが視聴できるようになっている。
Mixmagによると、現在同サイトで視聴できる動画は、先述の1011や、BSIDE、Zoneといった別のグループのYouTubeから削除されたテレビ番組でのライヴ動画やMVとのこと。
一見すると音楽とはあまり関係がないと思われるPornhubだが、実は2014年に音楽レーベルも設立していたり、ユーザーもKanye Westが『The Life of Pablo』をTIDAL限定で配信した際には、同作を違法アップロードし、無料公開していたという。
そのほか、同性愛を公言している女性若手ラッパーのYoung M.Aは、今年、同プラットフォームの「Visionaries Director's Club」という動画シリーズでポルノ監督デビュー。「The Gift」というLGBTQポルノを公開しているなど、意外にも音楽シーンとも繋がりがある。
UKドリルのメジャー動画投稿サイトからの締め出しは音楽業界の問題だが、少なくともコミュニティはこういったゲリラ活動を行うことで現状に対抗しているようだ。
written by Jun Fukunaga
source:
http://mixmag.net/read/banned-uk-drill-videos-are-resurfacing-on-pornhub-news
http://mixmag.net/read/uk-drill-group-1011-can-no-longer-make-music-without-police-permission-news
http://www.papermag.com/young-ma-the-gift-2558757900.html
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