新型コロナウイルス感染拡大を受け、世界中でクラブが営業自粛を余儀なくされる中、その苦肉の策として急速に広まったDJセットのライブ配信。その中でも利用者が多いことで知られるTwitchが、著作権侵害に関するトラブルに見舞われている。
この問題について、TwitchはTwitterでライブストリーマーによる著作権侵害クレームを受けていることを報告。これによって、2017年〜2019年の間に配信された動画で使用された著作権のない動画の削除要請が殺到していることが明らかになった。こういった大量の削除要請はTwitchによると初とのことだが、Twitchはストリーマーに対して、音源使用に関するガイドラインに違反する動画を削除し、それを遵守することを呼びかけている。
YourEDMによると、ストリーマーのダッシュボードには古い動画が表示されず、それらを削除する場合、手動でそれを見つけ出して行う必要があるという。有名ストリーマーの中には、”著作権で保護されている可能性のある音楽”を含む10万本以上の動画を各自のチャンネルに保有している場合もあり、それらを手動で削除していくことは現実的に難しく困惑する者もいるようだ。
またTwitchにはYouTubeのコンテンツIDシステムのようなものが実装されていないため、著作権を持つ側も侵害にあたる動画を報告する場合は手動でそれらを見つける必要があるようだ。
Twitchは、クラブの営業自粛以降、海外だけでなく、日本のクラブの無観客配信でも利用されており、無料配信における投げ銭機能などが注目されてきた。また新型コロナ感染拡大を受けて、収入面での損害を被ったミュージシャンの救済措置の一環として、SoundCloudと提携し、収益を得ることができるアフィリエイト機能を実装したことも記憶に新しい。
DJプレイの配信においては、かねてから類似サービスでは著作権のない音源の使用がBANの対象となっていたため、比較的にその措置が緩いと実しやかに囁かれていたため、Twitchが利用されてきた背景もある。ただ、著作権のない音源を使用することを禁止するのはTwitchでも同じであり、YourEDMはストリーマーがそのルールを知ってはいても問題が表面化するまでは無視してきた可能性があると指摘している。
Twitchでは、同サービスが設けている“音楽のガイドライン”に違反した場合、同社のDMCA規定のもと音楽の権利所有者から削除要請を通告される可能性とともに、コミュニティガイドラインのもと、措置を講ずる可能性あると警告しており、DJセットを配信するストリーマーは、ガイドラインにある禁止事項の「ご自分で所有している音楽またはTwitchで共有するライセンスを受け取っている音楽以外の音楽を組み込んでいる、事前にレコーディングされた音楽トラックの再生またはミキシング」に違反しない形で配信を行う必要がある。
とはいえ、アーティストが収益を得る以外にもこれまでに有名クラブや音楽プラットフォームが、Twitchを利用した配信イベントによって、新型コロナウイルス禍で影響を受けた人々に対する寄付金集めが行われるなど、業界支援の役割を果たしていたことも事実であるだけに頭の痛い問題だ。
それだけにこの問題に関する音楽家のための法律相談サービス「Law and Theory」代表を務める弁護士の水口氏の呼びかけは、今後のDJセット配信にとって、大きな意味を持ちそうだ。(DJ配信と著作権に関しては氏によるnote記事の内容が興味深いので気になった人は一読してほしい)
現時点では繰り返しになるが、ストリーマーが音楽配信、DJプレイを配信する場合、Twitchの“音楽のガイドライン”を確認しなおす必要がある。
ガイドラインが定めた「Twitch配信およびVODで使用できる音楽コンテンツの種類の例」は以下のとおり。
・ご自分で所有している音楽 – ご自分で作詞/作曲したオリジナル音楽、ご自分でレコーディングまたは歌ったまたは演奏したオリジナル音楽、レコーディング、歌うまたは演奏する権利および基礎となる音楽または歌詞に対する権利を含む、Twitchで音楽を共有するのに必要なすべての権利を所有しているまたは管理しているオリジナル音楽。レコード会社または出版社など、ご自分でつくるコンテンツに対する権利を管理する組織と、契約関係にある場合、その音楽をTwitchで共有することが契約関係を侵害することにはならないことを確認してください。
・許諾を受けた音楽 – ご自分以外の誰かが全部または一部を所有している著作権で守られた音楽であって、関連する著作権所有者からTwitchで共有するライセンスをご自分が取得した著作権で守られた音楽。
・Twitch Singsでの上演 – Twitchのサービス利用規約に従って作られていることを条件として、Twitch Singsゲームプレイで録音または録画された歌の歌唱パフォーマンス。
またあわせて「Twitch配信またはVODで使用できない音楽コンテンツの種類の例」も確認しておく必要があるだろう。
なお、Twitchでは2015年に配信で使用できる著作権フリー音源「Twitch Music Library」を公開しているが、確認してみたところ現在、こちらへのリンクは機能していなかった。それだけに現時点の「Twitch Music Library」の状況についても何らかの説明が行われることに期待したい。
written by Jun Fukunaga
source:
https://www.twitch.tv/p/ja-jp/legal/community-guidelines/music/
photo: BagoGames