今こそvitaminが必要だ。『RAZZLE DAZZLE SUPREME』と『Vitamin Blue』に見るtokyovitaminの創造性

Duke of Harajuku『RAZZLE DAZZLE』コンピレーションアルバム『Vitamin Blue』をリリースしたtokyovitaminの活動とその魅力について紹介。
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2021.01.13 11:00

Written by Tomohisa Mochizuki


緊急事態宣言が再び発令され、“STAY HOME”という言葉すら懐かしく聞こえる今、思い返してみれば2020年も音楽やアートが身近にあって元気を与えてくれた。日本ではあまり重要視されないが、芸術は人間らしく生きるためのエッセンシャルなものではなかろうか。緊急事態宣言の影響でライブイベントのキャンセルが相次ぎ、2021年もこんな状態が続くと思うと憂鬱である。そんな状況下にあっても、そのバイタリティを発揮し続けているのがtokyovitaminだ。





垣根を越えて新たな価値を生むVisonary集団。『RAZZLE DAZZLE』、『Vitamin Blue』に見るtokyovitaminのクリエイティブ


東京を拠点にグローバルに活動するtokyovitaminは、音楽とストリートファッションをピュアに繋ぎ、アンダーグラウンドからメインストリームまでを悠々と横断するコレクティヴだ。コロナ禍以前は定期的にイベントを行い、主催するパーティなどで不定期に販売されるオリジナルアイテムはその都度人気を集めている。そんな彼らの真髄は、キャッチーなデザインセンスだけでなく、アーティストのキュレーションを含めたクリエイティブにあると言えよう。Duke of Harajukuの『RAZZLE DAZZLE』とコンピレーションアルバム『Vitamin Blue』を同時期にリリースした2020年の下半期にはその実力を存分に発揮し、存在感をさらに強めた印象がある。


Duke of Harajukuは『RAZZLE DAZZLE』でゲームサウンドの影響を色濃く残しつつそれらをアップデートし、Duke of Harajukuの持つ感性とダンスミュージックをミックス。ヒップホップ・トラップと日本のゲームやSFアニメのエッセンスをプラスした新機軸のサウンドを打ち出した。BEMANIシリーズやダンスダンスレボリューションといった日本独自に発展し今なおその存在感を発揮している“音ゲー”で、ダンスミュージックを知った時のような初期衝動を彷彿とさせる作品だった。





その特徴は彼が新年も早々にリリースしたデラックス盤である『RAZZLE DAZZLE SUPREME』でさらに顕著になっている。このアルバムについては、block.fmで行ったインタビューの最後に彼自身が言及していたものだが、『RAZZLE DAZZLE』の中から5曲をREMIX、新たに5曲を追加したデラックス版。新たにDosingのSteffen Yoshiki、TREKKIE TREXのFellsius、 RYOKO2000、VDIDVSやMat Jr.がプロデューサーとして参加し。新曲「花火」では新人女性R&BシンガーのKONA ROSEをフィーチャーしている。「RAZZLE DAZZLE」からトランス・レイヴ色をさらに強め、インタビューでも語られていた“原宿”、ひいては東京が持つカラフルなエネルギーを作品として表現し、Duke of Harajukuの世界観を炸裂させたアルバムとなっている。


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tokyovitamin名義でリリースされた『Vitamin Blue』は、サウンドプロデューサーDisk Nagatakiがキャプテンとなって、宇宙的サウンドスケープを旅するような音楽旅行へと連れ出してくれた。コロナ禍による自粛疲れもピークはとっくに過ぎ、鬱屈していたネガティヴマインドを濯いで、解放してくれるかのようなビートとサウンドに心踊った。tokyovitaminのMat Jr.を始め、Star Boy、Laptopboyboyといった多様なサウンドプロデューサーを迎えて制作された数々の楽曲は、時にダンサブルでトリッピーでリラックス。懐の広いレトロフューチャリスティックな音楽性を示した作品だった。客演にはDuke of Harajuku、kZm、Gab3、Loota、LEX、Who28、mojomossomen、Young Coco、Jin Doggに加え、YunBやNAPPY NAPPAといった国内外のグローバルな面々が多く参加し、スペーシーなサウンドに彩りを添えている。







復刻ではない、アップデートされた東京の肖像


音楽だけでなく、ストリートファッションとの繋がりもtokyovitaminには欠かせないファクターだ。さまざまなコレクティヴやアーティストと交わり、m-flo20周年記念のオフィシャルコラボグッズなどを手掛けてきたtokyovitaminは、裏原宿カルチャーの重鎮ブランド、HYSTERIC GLAMOURとのコラボレーションを果たしたことは記憶に新しい。『Vitamin Blue』収録のDuke of HarajukuとLEXの「Ice Cream」のMVでは、HYSTERIC GLAMOURとtokyovitaminとのコラボレーションアイテムを身に纏いオフィシャルルックとともに公開され話題を呼んだ。



グラフィックを手掛けたのはtokyovitamin所属のDJであり、フロントマンとして活躍するVick Okadaの盟友、交流の深いグラフィックデザイナーVERDY (VK DESIGN WORKS)だ。アパレルコレクションやホームグッズが発売され好評を博し、アイテムの製作秘話はHYSTERIC GLAMOURの北村信彦とVERDY、Duke of Harajukuの鼎談というかたちで語られている。




Duke of Harajukuは『RAZZLE DAZZLE SUPREME』のアルバムリリースを記念し、新たなスペシャルアイテムの作成も進めているという。


Duke of Harajukuコメント:

「今回のアルバム『RAZZLE DAZZLE: SUPREME』は僕が考える東京を音で表現しています。 今後はRAZZLE DAZZLEを音楽だけでなく、ブランドとしても展開を考えていて、アルバムジャケットのキラキラベルトバックルもそのブランドの表現の一つとして作成しました。コロナウイルスでなかなか外に遊びにいけなくて、モヤモヤした気持ちが溜まっている人が多いと思うけれ ど、このアルバムを聴いたら絶対に楽しく踊りだしたくなるから、音量マックスで聴いてみてね!」  


block.fmのインタビューでは“RAZZLE DAZZLE”を原宿のお土産みたいになるような、アイコニックなブランドにしたいと話していたが、近日中に販売を予定しており、販売に先行してイメージフォトも公開された。








モデル:ASHLEY


『RAZZLE DAZZLE』、『Vitamin Blue』を通じアートワークやMV、Visualiserを通じてtokyovitaminが提示したものは、先人たちの築いてきたロールモデルの焼き増しや単純な復刻ではないと感じる。多様なバックボーンを持ち、彼、彼女たちがその目で見て感じて育った、かつての憧れの渋谷・原宿を彷彿とさせながらも、日常のリアルにtokyovitamin持ち前のワールドワイドな感性をジョインさせ、音楽とともにそのイメージを再構築して見せたのだ。渋谷・原宿のストリートカルチャー・ナイトカルチャーの今を切り取り未来を示唆しているのではないか。当然ながらそれは僕ら世代が、ましてや“東京”の外から雑誌を通じて見てきた“東京”とは違った姿なのである。


遊び場から放たれるエネルギーを可視化する創造的メディア


DJやVJ、サウンドプロデューサー、ラッパーとナイトクラブカルチャーにも根ざしているtokyovitaminの先見性は、NEW SKOOLが運営するナイトクラブ・カルチャーシーンの研究をする団体「Night Design Lab」のコロナ禍における対談企画でのVick Okadaの視点が象徴的だ。『Vitamin Blue』がリリースされる前のインタビューであると推測されるがコロナ禍で、開催することができないパーティ以外の部分に注力したひとつの成果として『Vitamin Blue』と『RAZZLE DAZZLE』並びに『RAZZLE DAZZLE SUPREME』があったのではないだろうか。


彼らはフィジカルの現場を見限ることもしないだろう。ストリートやクラブという場所に接点を持ち続けながら、自分たちに今出来ることでクリエイトし続けているのだ。それは今に始まったことではない。4年前にアップされたストリートムービー「VITAMIN ゆ」シリーズ(EPISODE 01〜03)や、昨年公開されたIICHIKO BOYS名義の「ウーロンハイ」のMVを観れば、彼らの活動の文脈や交流が、今と地続きになっていることが分かるだろう。



また、tokyovitaminの代表的なグラフィックでお馴染み、SoundCloudで展開されるライフワーク的プロジェクト(tokyo vitamin+radio)では、「Vitamin Drop」と称して国内外のさまざまな友人たちのオリジナルミックスをコレクションする。このように、路上やクラブ、自分たちが遊んでいる人や物、場所から生まれるアイデアやエネルギーを記録・編集し可視化してきたtokyovitaminは、創造的な東京を世界へと発信するメディア的役割をオーガニックに担ってきたと言える。


tokyovitamin radio · Vitamin Drop 71: The Good Company (New York)



パーティではないが、2020年末にレアヴィンテージアイテムをセレクトする渋谷PORTRATIONでtokyovitaminのPOP UP が行われた。VERDYを始めとするYENTOWNやYouth Quakeといった彼らを取り巻く東京のストリートカルチャーを牽引し、代表する面々が集まっていた。そこに並ぶのはオリジナルのグラフィックが落とし込まれたスウェット、フーディ、Tシャツ、トートバッグ。『Vitamin Blue』のジャケットでも象徴的に描かれていたカプセル型のキーホルダーも人気だ。アイテムを求めるキッズたちがPORTRATIONに列をなしていた様子がInstagramにアップされていたが、筆者がPOP UPを訪れたクローズ間際になっても来客が途切れることはなかった。


純粋にアイテムを買いに来た者、tokyovitaminの面々と挨拶を交わしにきた者。過ごし方はさまざまだが、そこでリアルタイムに交わされるコミュニケーションから、また新しいアイデアやクリエイティブが生まれていくのだろうと期待を抱くような光景がそこにはあった。


東京を拠点とする他のコレクティヴとも繋がりながら、独自に海外のアーティスト・クリエイターともコネクションするtokyovitamin。世界基準の大きなムーブメントが刻々と新しい時を刻み、脈を打っているのをあらためて体感した次第だ。病んでいる世界における日本。その中核を担う東京のストリートに、今こそメンタルやクリエイティビティを活性化してくれるようなVitaminが必要なのだ。





▶『Vitamin Blue』


1.ANOTHER PLANET TO GO (feat. Disk Nagataki)

2.VOYAGER (feat. Mat Jr)

3.SHITTO (feat. Young Coco & kZm)

4.ICE CREAM (feat. Duke of Harajuku & LEX)

5.EXALT (feat. Disk Nagataki & NAPPYNAPPA)

6.ZOOM (feat. Disk Nagataki & YunB)

7.BREATH (feat. who28)

8.SLAMDUNK! (feat. Duke of Harajuku & Gab3)

9.I DON'T BEEF WIT U (feat. Young Coco)

10.KNIGHTS (feat. Loota & mojomossomen)

11.LITTLE DEMON (DISK NAGATAKI BOOTLEG) [feat. Jin Dogg]

12.Chambers (feat. Mat Jr)

13.BLAST OFF FREESTYLE (feat. Disk Nagataki & Duke of Harajuku)


STARRING

(in alphabetical order)

Disk Nagataki, Duke of Harajuku, Gab3, Jin Dogg, kZm, 
Laptopboyboy, LEX, Loota, Mat Jr, Mojomossomen, NAPPYNAPPA, Star Boy, who28, Young Coco, YunB

配信URL:https://linkco.re/CEMBzanZ






▶『RAZZLE DAZZLE SUPREME』

トラックリスト  ; 

01. 超HAYAI [RYOKO2000 REMIX]  

02. とんちゃん通りODORI [Mat Jr.+Steffen Yoshiki REMIX]  

03. HARAJUKU HEAVEN [VDIDVS REMIX]  

04. POKEMON NAKiD [Mat Jr. REMIX]  

05. 激RICHnFAMOUS [Fellsius REMIX]  

06. 花火 (ft. Kona Rose) [prod. Adro]  

07. FRONTIN [prod. Kkayo]  

08. THE BREAKS [prod. Kaizo]  

09. HYDROCITY [prod. LOESOE]  

10. NEVERFOLD [prod. starboy]  

11. WINGS  

12. HARAJUKU ANGELS  

13. RICHnFAMOUS  

14. WOHX2  

15. MELT  

16. SUMMER DREAM (ft. FEMM)  

17. TONY HAWK  

18. ドフラミンゴピンク  

19. I GOT (ft. who28)  

20. L!F3STYL3  

21. GO! (ft. Young Coco)  

22. POP★  

23. BA$ED HARAJUKU 3000 (ft. Lil B)  

24. NEVERSTOP  


配信URL:https://linkco.re/s0aQ0EF




▶Duke Of Harajuku

東京を拠点とするアメリカ・ジョージア州出身のアーティスト。日本の文化、ファッション、音楽、 アニメなどへの興味を追いかけ、18歳の時に東京へ移住。tokyovitamin records所属で活動を行なっている。 







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