菊地成孔さんがblock.fm『TOKYO BUG STORY』に出演。Dos Monosの3人と山里亮太さんと蒼井優さんの結婚を題材にして恋愛結婚と見合い結婚、そして結婚制度そのものについて話していました。
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▶「TOKYO BUG STORY」
放送日:毎月第1月曜日 21:00 - 22:00 O.A.
番組URL : https://block.fm/radios/728
荘子it:あと、もうひとつどうしても言いたかったんですけども。前書きに書いてあった見合い結婚の話がすごく面白くて。これもつながっているなと思って。要は「人々は恋愛結婚に疲れているのだ」っていう。これ、すごい大変な話なんですけども。山里亮太さんと蒼井優さんの結婚を……。
菊地成孔:ああ、あれは恋愛結婚じゃないよね。
荘子it:フフフ、「あれは恋愛結婚じゃなくて見合い結婚だ」っていう風に堂々と書いているんですよ(笑)。
菊地成孔:見合い結婚と政略結婚の複合系。
荘子it:サラッとすごいことを言っていますよね(笑)。人の結婚に対して「あれは政略結婚だ」って言っているんですよね?
菊地成孔:いや、たぶんね、これを言っても炎上しないと思う。恋愛結婚っていう概念は……。
荘子it:人はあれを「すごい幸せな恋愛結婚だ」と思いたがってますよ?
菊地成孔:思いたがっていると思いますよ。でも、恋愛結婚っていうのは僕らの……そろそろ還暦よね? 「Dos Monosのゲストです」とか言っているけどさ、もう還暦ですよ。そうすると、その我々の前の世代っていうのはお見合いによって、親が決めたよく知らない人とするのが結婚なんだと。
荘子it:要は自由恋愛じゃなくて上から決められた相手と結婚をするという。
菊地成孔:それをね、「自由恋愛によって結婚するのです」という風になって、恋愛結婚がとても素晴らしい価値観として、何かうっすらとしたヒッピーイズムの先取りみたいなところもあり、恋愛結婚っていう言葉はなんというか完全な定着語としてさ。で、今や恋愛結婚がスタンダードだよね? だけど「恋愛結婚」って改めて言った時にね、「恋愛」と「結婚」はどのぐらい違うか?っていうことは誰もが知ってるね。で、恋愛結婚っていうのは何かひとつの発達段階みたいな感じで。「恋愛で始まった関係が結婚に収まった」ということ以外、もう解釈のしようがないでしょう?
荘子it:そうですね。いや、本当になんか今の結婚はなんか制度的に意味があるのか、みたいなレベルになってきますよね。恋愛結婚って徹底すると。
菊地成孔:そうですね。で、逆に「恋はしない」っていう人もいるし。結婚を割り切ってしてしまう人もいるし。
荘子it:で、その恋愛はさっき言ったアン・リーの愛とはちょっと違うんだってことが書いてありますよね。前書きで。アン・リーのはそれを見破ったところで、それで欺かれないぞっていうスタンスを取ってもしょうがないから、そこを分かった上で演技する愛みたいなことをアン・リーが言ってるんだけども。恋愛結婚の恋愛っていうのはいわゆるもっと1周目の段階というか。
菊地成孔:うん。もうちゃんとした恋愛……まあ恋愛と結婚っていうのは水と油というか、エネルギーの水位が全然違うものでしょう? 垂直的なものと水平的なもとっていうのがあるけれども。で、恋愛が結婚にこう、きれいに移行した人々もいっぱいいると思うから。20世紀は。だからそれはそれでいいんだけど、もうそろそろ無理なんですよね。恋愛結婚っていうのは。で、その時にダメな未来主義として、別にそれを否定しているわけじゃないんだけど。「制度を突破する」という意味において、その効力としてダメな未来型の思考として同性婚とか。あるいはフランス型の事実婚とか。ああいうのがどんどんどんどん法律上通っていくわけね。
そうすると、なんていうかチャラい、先進的な人々がちょっと喜ぶんだけど、あんま成功例がないでしょう? 残念ながら渋谷区がどれだけリベラルなのか?っていうことを押し出すためにアイコンにしようとしたレズビアンの方々。あのお二人も別れちゃったし。なかなか上手く行かない。で、批判をしているわけじゃないけど、あんまり有用価値が高くない、まだまだわからない……レーシックみたいな。
まだ、どうなるかわからないよね。そういうものを持ってくるより、昔にブイブイいわせていた制度がルネサンスした方がいいんじゃないか?っていう。で、それは見合い結婚と政略結婚で。要するに「この2人が結婚をすると両家ともに利益がある。そして間の仲立ちの人がいて。どっちも特に知り合いだということから恋愛のドープな時間を経なくても結婚に至れるっていうことの方が前近代は使っていたわけだし。廃れただけで。だからそれが復権してきたのが山里さんと蒼井優さんの場合だったので。
荘子it:その好例として挙げられているのをその2人は知らないわけですよね(笑)。まあでも、言わんとしていることはすごくよくわかります。
菊地成孔:僕は見合いと政略結婚の復権はとてもいいことだと思っていて。それよりも恋愛結婚っていう、この100年ぐらいはうまく作用した詐術がもうダメになってきたから。もうなんかで足さないと結婚制度っていうのはみんなにとっていいものにならないから。だからああいう有名な人がさ、あああいう形で……結局、しずちゃんが世話焼きじゃない? 仲立ちで。完全にあれ、そうでしょう? だからまあ見合い……すごい短いスパンで行っているわけなんで。何年間か恋愛した結果ね、「そろそろ俺たちも将来のことを考えようか。金も貯まってきたし……」とかってわけじゃないわけよ。で、お互いにあれ、たぶんすごいいいよね? だから見合い結婚と政略結婚の合成型としてすごくいいケースだと思います。
荘子it:うんうん。
没:いま、ペアーズがめっちゃ、たぶん流行っていて。
荘子it:まあまあ、そうですね。いまは出会い系のアプリがすごい流行っていて。
没:で、その中でも最近はお見合いのサービスが出てきたんですよ。
荘子it:没が最初に口を開いたと思ったら、見合いアプリの話を……(笑)。
没:でもまさに本当になんか先週とか先々週ぐらいにめっちゃ出てきたっすね。「お見合い」っていうのを隠さずに出してきていて。
菊地成孔:俺もね、なんか舎弟とは言わないけどね、生徒さんとかバンドのメンバーとか、みんなやっているから。「こんななんすよ、菊地さん」とかって言って。「ああ、なるほどね」って。あれはでも、「Omiai(お見合い)」ってはっきりと言い出しているしね。
荘子it:そうですね。たしかにそうだ。それは慧眼ですね。
菊地成孔:とてもいいことだと思いますよ。(Dos Monosは)誰も結婚していないよね?
荘子it:していないですね。
TAITAN MAN:スペックを両方が開示した上で、もう出会うっていうのがお見合い結婚っぽいですよね。最近の出会い系アプリは。
荘子it:まあ条件を吟味して……みたいな話になってくるんですかね。でも、それは3枚目のスライドに書いてあったことを先取りしたんだけど。まあ、前近代性にちょっと傾いていますよねって。だから恋愛結婚じゃなくて見合い結婚っていう……本当はね、公平を期すために言うと、恋愛結婚をさらに押し進めた形で結婚じゃなくて「パートナー」みたいなことを言い出す感じの前近代、近代、ポスト近代みたいな形もあって。ポスト近代はもうパートナーみたいな。結婚制度によらないっていう。そっちの方向性もありだとは思うんですけどね。
菊地成孔:もちろん、もちろん。
荘子it:まあ菊地さんはどちらかと言うとその前近代の方のやり方を再び採用するみたいな。その『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』とたぶんかぶってると思うんですけど。あれもそういう話じゃないですか。この近代の自由主義の時代にその運命を……みたいな話だから。なのでそこに触れているのが面白かったなと思って。
菊地成孔:まあね(笑)。まあ、とにかく「結婚っていう制度にまだしがみつきたいならば……」って話だよね。別にしがみつく必要はないけども。「しがみつきたいならば……」ですよ。
荘子it:そうですね。
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書籍情報
菊地成孔の映画関税撤廃
https://www.amazon.co.jp/dp/4909852069/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_dW1lEbXFMQZS3
番組情報
▶「TOKYO BUG STORY」
放送日:毎月第1月曜日 21:00 - 22:00 O.A.
番組URL : https://block.fm/radios/728
荘子it(MC/トラックメーカー)、TAITAN MAN(MC)、没 a.k.a NGS(MC/DJ)からなる3人組HIP HOPユニット”DOS MONOS”による番組『TOKYO BUG STORY』。圧倒的な音楽性の高さと、独自に作り上げた世界観を是非ラジオで体感してほしい。
written by みやーんZZ