【前編】今、注目のプロデューサーSweet Williamが☆Takuに語る、音楽キャリア、盟友Jinmenusagiとの邂逅

m-floのリミックスも手がける、今絶対知っておいた方がいいプロデューサーに☆Taku Takahashiがインタビュー。Jinmenusagiとの噂のコラボアルバムにも迫る。
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2018.09.05 10:10

7月30日に渋谷・MAGNET by SHIBUYA 109にて行われたblock.fmの特別放送「goody news」。その番組ナビゲーターを務めたのが人気ラッパーのJinmenusagiと愛知県出身のプロデューサーのSweet Williamの2人だ。2人は、2016年にSweet Williamが発表した「Sky Lady feat. Jinmenusagi, itto, kiki vivi lily」でコラボするなど、盟友とも言える関係を築いている。また番組では、そんな2人が今夏、ジョイントアルバムを制作していることを発表。初公開となる「energy equal」もオンエアされ、ファンからの注目を集めていた。


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今回、block.fmではその放送を通して、多くのリスナーを沸かしてくれたSweet Williamにインタビュー。インタビュアーを務めたのは、Sweet Williamとは、m-floのリミックス集「BACK2THEFUTURE」シリーズの「How You Like Me Now?」のリミキサーに彼を抜擢したことでも縁が深い☆Taku Takahashiだ。デビュー以来、常にトッププロデューサーであり続ける☆Takuと、今、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を拡大させている新進気鋭のプロデューサーであるSweet William。今回が初対面となった2人だが、インタビュー【前編】では、これまでの彼のキャリア、m-floのリミックス、Jinmenusagiとの出会いやアーティスト名の由来など貴重なエピソードが語られた。



出会いの時は僕も気ぃ遣いというか、人見知りなので。たどたどしかったですけど


☆Taku(以下T):いや〜、お会いしたかったんですよ! 前から。


Sweet William(以下S):ありがとうございます。


T:今唾奇くんと一緒にプロジェクトやってて。


S:はい。僕も聞きました。


T:すごい仲いいって話、唾奇くんも言ってて。じゃあジメサギ(Jinmenusagi)さんとの出会いは?


S:ジメサギとの出会いは、僕が3年前に関東きて、一緒に名古屋から上京して来た國枝という友達がいるんですけど、彼が今レーベルの映像作家と代表をやってて。同い年なんですけど。僕より2・3ヶ月前に関東に越して来て。その後に僕が引っ越した感じなんですけど。関東来る前に何度か遊びに行ってて。で、彼の家にジメサギが行ってて。で、彼がジメサギのPVを撮ってたんですよね。


T:だから共通の(知り合いが)…?


S:そうですね。繋がっていて。彼が関東に来て知り合った最初のラッパーでしたね。「すげぇかっこいいラッパーがいるなぁ」って思って。僕からアプローチして楽曲を作りました。2016年とか。


T:二人で喋る時は敬語なんですか?


S:ジメサギですか? いや、タメ語ですよ。彼は僕の一個下なんで、唾奇と同い年ですね。


T:なるほど。


S:出会いの時は僕も気ぃ遣いというか、人見知りなので。たどたどしかったですけど。




音作りのきっかけ… 日本のHIPHOPはずっと聴いてたんですよ



T:じゃあ、自分の作品を遡っていっていいですか? それこそSweet Williamさんの音が好きで、m-floでもお願いしましたって形だったんですけど。


S:ありがとうございます。


T:元々トラックを作るっていうのはどういうきっかけだったんでしょう?


S:音作りのきっかけ…日本のHIPHOPはずっと聴いてたんですよ。


T:どの辺のHIPHOP?


S:日本でHIPHOPって括られるあたりの音楽は昔からずっと聴いてて。


T:その、昔って何年ぐらい?


S:99年ぐらい。僕が小学校2年3年ぐらいの時から。当時はスペースシャワ−TVが情報源。それぐらいしかなかったので。で、HIPHOPはずっと聴いてて、MPCを知って。


T:要はHIPHOP作る人が…。


S:はい。「なんか触ってるな」みたいな。PVでも出てくるし。で、機材が欲しいってなったのが中学校3年生ぐらい。その時にMPCを買ったのが音作りのきっかけですかね。


T:元々HIPHOPが好きで、HIPHOPを聴いてて、人によってはラップを書き始める人もいれば、DJを先にやるって人もいるし、MPCが一番最初だった?


S:あーそう言われると。ラップも好きだったんですけど、ラップも、歌詞カードないやつとか全部書き出してたし…。


T:聴きながら?


S:そうです。


T:例えばどの辺ですか? そういうの言うの恥ずかしいタイプですか?


S:いや、大丈夫ですよ。Buddha Brand、スチャダラパーは小学生の頃よく聞いてましたね。


T:スペシャで流れてるものが多かった?


S:多かったですね。あとランキングの番組とか。あと当時「ヒップホップロワイヤル」っていう深夜帯の番組があって。


T:うんうん。覚えてます僕も。


S:あれとか多分全部VHSで残ってます!


T:マジですか?



m-floからリミックスのお話をいただいた時もすごく嬉しくて



S:「How You Like Me Now/m-flo」って何年ですか?


T:それこそ2000年くらい?


S:ですよね? それももちろん記憶にあったし、「Dispatch」のPVとかめちゃめちゃ見てたし…。


T:アハハハハハ! 本当ですか?


S:もちろん。


T:俺的にはすごいシュール(笑)。




S:ちょっと余談になっちゃうんですけど、(m-floから)リミックスのお話をいただいた時もすごく嬉しくて。候補曲を聞いた時に、「How You ~」か「Dispatch」か、あと「Quantum Leap」ですごく悩みました。


T:どっちかっていうとVERBALが主人公的な曲ですよね。


S:たくさん楽曲あるんですけど、僕の中でこう、一番思い入が強かった楽曲というか。


T:で、それで「How You ~」になって。


S:そうですね。





HIPHOPって、サンプリングがメインでできてる音楽だなと思ってたし、それが一番喰らった部分だった



T:何でこんな質問をしたかというと、Sweet Williamさんのサウンドって、今のHIPHOPのトレンドにのっとってるものとは違うと思うんですよ。


S:はい。


T:最新に聴こえないっていうことではなくて、でもメインストリームって基本的に、ど直球に808を使ってベース作って、トラップ的なサウンドを、というよりも、Sweet Williamさんのサウンドって、やっぱりちょっと90sとか、当時ニュースクールと呼ばれてたもの、日本人はミドルスクールって呼ぶけど、その方向を向いていて、日本の中でも、それがメインストリームじゃなくなってきている中、独自の道を進んでったことの根源って、当時聴いてたものが関係してるのかな?って


S:多分おっしゃるとおりで、聴く音楽全部覚えるぐらいの勢いで吸収しまくってた時期があって。その時の衝撃が大きかったというか。で、聴き始めがギリギリ99年ぐらいなんで、2000年のノリになっていく移り変わりの時期からちょうど聴いてて。サンプリングの手法もメインであったし、その時の衝撃がすごく大きくて。


T:しかもだいたい2000年代初頭ぐらいから、サンプリングがガッと減ったじゃない?


S:減りましたよね。


T:2000年以降から、それこそファレルとかが出てきて、トライトーン使って、シンセの音どんどん使っていくってなって。サンプリング、チョップしたりする人が徐々に少なくなっていった中、Sweet Williamさんのサウンドって、そういうサンプリングのクランチーな音が活きてるサウンドが多いなって印象を持ってて。


S:ありがとうございます。そうですね、ビートを作る上で、僕はサンプリングがすごく好きなので、人によって捉え方は違うと思うんですけど、僕はやっぱりHIPHOPって、サンプリングがメインでできてる音楽だなと思ってたし、それが一番喰らった部分だったので、それを崩さずにやってきたら、今の音楽になったって感じだと思うんですけど。


T:それで、名古屋の方で音作ってた時期と、わりと今も音の方向性は近いんですか?


S:そうですね。基本的に作り方とか好きなものは大きくは変わってないんですけど、やっぱり、昔と今と比べると、トラップとか出てきたじゃないですか、そういうノリも面白いなと思って、自分のビートに落とし込むことも最近はやり始めたので、当時と比べるとちょこっとは変わったのかなと。


T:まぁでもSweet Williamさんの解釈になって作ってますよね。


S:そうですもちろん。


T:まんまそれが再現されてるわけじゃなくて。


S:そうですね。



ずっと仲間を唸らせられればいいなと思ってビートを作っていた



T:でもそうやって時代のタイミングで、Sweet Williamさんのサウンドって、決してメインストリームじゃない中、90年代の手法とか、サンプリングをやってる時に、結構周りにすんなりと受け入れられる感じだったんですか? それとも今のサウンドじゃないよね、っていう反応は?


S:うーんどうですかね、さっき話に出た一緒に上京してきた國枝って奴が一番の理解者っていうか。もともとラッパーだったんですけど、僕のビートでずっと歌ってた人間で。ずっと仲間を唸らせられればいいなと思ってビートを作っていたので、周りの意見はあんまり気にしてなかったかもしれないですね。


T:それこそ名古屋って、今はめちゃくちゃ平和ですけど、クラブシーンとか結構強くなかったですか?


S:僕は実はそんなに、名古屋のHIPHOPを肌で経験してなくて。要は名古屋に暮らしてたのが4年間…大学で名古屋に行ってたので。


T:その時も音は作ってたりしてましたよね?


S:作ってましたね。


T:クラブも行ったりもしますよね。


S:そうですね。クラブでもいろんな経験をしました。


T:ちょっと自分が作ってるサウンドって、ハーコーではないじゃないですか。


S:ハーコーではないですね(笑)。


T:メンタリティとか音に重厚感とか、そういったものは感じるんですけど、どっちかっていうと悪い顔をしてるっていう感じよりは、もうちょっとインテリジェンスを感じるっていうか。これ僕の印象なんですけど。


S:ありがとうございます。


T:で、僕の好みなんですよ。


S:ありがとうございます(笑)。





自分で好きな音楽作れればいいなって感じでしたね



T:で、当時の名古屋のクラブでかかってるHIPHOPとは音が絶対違うじゃないですか。


S:そうですね。もちろん聴いてなかったわけではないし、名古屋の音楽も聴いてた時期はあったし…。HIPHOPってレペゼンの文化があるじゃないですか、僕はそれが全然なくて。場所どこでもいいっていうか。


T:075でしたっけ?


S:052ですね。


T:あんま052な感じじゃなかった?


S:そうですね。名古屋の色が強い音楽をやってるひとたちがいるなっていうのは知ってたんですけど、僕は自分で好きな音楽作れればいいなって感じでしたね。ずっとスタンス的には。


T:その時DJとかは?


S:DJもちょこっとやってましたけど、それより制作側にまわりたいっていうか。DTMとか、パソコンで部屋でちょこちょこやってるようなのに凄く憧れてたので、それやりたいなぁと思って。


T:なるほど。自分の音楽ってどうやって知られていったんですか? インターネットのちょうど切り替わりのタイミングですよね。それこそスペースシャワーが情報源だったって。今ではインターネットが情報源になったりとか。


S:フリーダウンロードアルバムを出すのがすごく流行った時期があって。僕も一番最初に出した作品がそれなんですけど。2014年?とか2015年ぐらいだった気がするんですけど。そのあとに「Arte Frasco」っていう初めてフィジカルで出した自分の作品があって。Sweet Williamっていう音楽の位置付けだと、そのアルバムが一番大きかったのかなって思います。あとラッパーへの提供も大きかったのかな。



T:ラッパーとかってどうやって知り合ってたんですか?


S:いや〜、なんかそれもタイミング、偶然ばっかりで。


T:バーですか(笑)?


S:(笑)。唾奇とは彼が当時働いていたバーで出会っているし、最初話したように、國枝の家でJinmenusagiと会ったりとか。


T:そこで僕こういうのやってるんだけど、って話になったりとか?


S:そうですね。そういう話もして、どういう音楽をやってる人なのかとか。僕ももちろんチェックしたりとか。基本的に制作は僕が好きな人とか、なにか惹かれるものをもっている人としかやってなくって。周りには恵まれてたなぁって思いますね。今考えると。





兄貴が「Sweet Williamにしよう」って言って、Sweet Williamになったんです



T:なるほどね。Sweet Williamって名前の(由来は)、お花?


S:そうなんです。Sweet Williamって花があるんですけど、もともと兄貴につけられた名前で。


T:自分の作品を作る中で、名前が必要だと。本名で行くのも違った...。


S:そのSweet Williamって名前自体はめっちゃ前からあって、中学生のときぐらいにつけられてたんですよ。


T:えっ、なんでなんですか?


S:中学時代に、MPCを買う前に、めっちゃ簡単なDAWみたいな、Windowsの、素材を並べ替えるだけで音楽つくれるみたいなソフトを触ってて。


T:アシッドみたいなやつ?


S:本当にもっと簡単なやつです。それでトラックを5、6曲作って。アーティスト名は何にしようってなった時に、兄貴が「Sweet Williamにしよう」って言って、Sweet Williamになったんだと思います。


T:なんでお兄ちゃんがSweet Williamって言ってきたんですか?


S:後々聞くと、僕の叔父さんがすごく音楽好きで、その人にもいろいろ音楽を教えてもらってたんですけど、Sweet Williamって名前がついてるタイトルの楽曲があるんですよね。


T:へぇ~。


S:「Big Bad Bill Is Sweet William Now 」という曲があって、叔父がその曲を兄貴に教えて、兄貴がそこから名前をとった感じだった気がします。


T:Sweetって言葉って甘い感じじゃない? で、やってるものはどっちかっていうとSweetなサウンドっていうよりはとんがったサウンドじゃないですか? Sweet Williamって言われて、それでいいじゃんってなったんですか?「いいじゃん兄ちゃん!」みたいなさ。


S:うーん、そんな軽いノリでしたね(笑)。


T:アハハハハ(笑)。


S:昔からわかりやすいのが好きで。ぱっと聞いてすぐ耳に残る音楽というか。なかなか忘れられない音楽、リフとかが好きで。


T:自分の作品とそこが繋がって…。


S:そうですね。


T:まぁ日本人ってSweet Williamが花だってわかる人あんまりいないもんね。


S:そうですね。僕も花の名前だって気づいたのは名前が決まったちょっと後だった気がします。


T:まぁでもそのノリで名前が決まって活動して行ったっていう。そこで、東京に移った理由は? それこそ比較されちゃうかもしれないけど、唾奇くんとか沖縄に住んでるじゃないですか。


S:そうですね、住んでますね。名古屋で音楽活動をやろうとは最初からあんまり思ってなくって。やっぱり東京と名古屋って全然人の量が違うし、ってなると集まってくる情報量とかも全然違うわけで。関東に行ったことなかったんで、行ってみないとわかんないなって感じで、当時やってた仕事をやめて、ぱっとこっちに来ました。


T:今でこそいろいろインターネットで繋がれる可能性もあるじゃないですか。東京に移ったタイミングも、わりとインターネットが盛んになってるタイミングだったんじゃないですか。


S:そうですね。なってました。


T:やっぱフィジカルを大事にするってことなんですかね?


S:そうですね、関東は本気で何かに取り組んでる人に会いやすいです。それ一本で俺はやってる、みたいな。それを生きがいにして生きてる人たちに会う機会がすごく多くてたくさん刺激をもらいました。こっちにきたタイミングですぐそういうのも感じたし。僕も音楽で生きていきたかったから、そういう環境に身を置きたかったっていうのもあるし。どうせ仕事辞めるんならガラッと環境変えたいなっていうのも頭の中にはありましたね。


T:で、東京移ってきました、メインストリームとは違うサウンドで、なおかつキャッチー、そういうSweet Williamさんのサウンドを評価する人たちが、インターネットですごく多いなと思ってて。Spotifyとか、インターネットのプラットフォームで評価されてるとこも含めて、ネクストジェネレーション感をもろに感じるんですよ。


S:ありがとうございます。


〜〜この後に続く、インタビュー【後編】では、彼のサウンドに関する哲学、そしてファンが最も気になっているMC・Jinmenusagiとのコラボアルバムの制作プロセスなどを明かしてくれる。〜〜


インタビュー【後編】に続く






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Sweet William

Twitter:https://twitter.com/LO_FRASCO

SoundCloud:https://soundcloud.com/sweet-william-eb


written by block.fm編集部




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