8月9日(木)にMAGNET by SHIBUYA109にて公開放送されたblock.fmの特別番組「スーパーオーガナイザートーク」。同番組は、泡パ®、Slide the City、マグロハウスなど、新しい体験をつくり続けるパーティークリエイターのアフロマンスをホストに「Re:animation」、「煩悩 #BornNow」、「沈黙ダンス」といった話題のイベントやパーティーのオーガナイザーたちが迎えられ、自らのイベントに対するこだわりなど、イベント運営にまつわるここでしか聞くことができないトークが繰り広げられた。
番組では、まずRe:animationオーガナイザーのちへが登場。初回から1000人を集め、今では1万人規模のビッグイベントになったRe:animationについて、その成り立ちなどが話されたのだが、ここで気になったのは「場所」にこだわるということだ。そのあたりはこれまでに開催場所を変えながら開催してきた経緯を持つ同イベントならではのものだと感じた。”場所”についてちへは、「イベントを作る上では場所というものは絶対にコピーできない」、「そこにしかないものを意識してやっている」と語る。またサマーソニックに対抗して、超都市型フェスという形を打ち出し、今では山梨県で開催していることについてもフジロックにすり寄っていく状態だとの説明もあった。
またアニメのイベントという性質上、聖地である秋葉原で開催することについて、「秋葉原のイベント」になることは避けたい、新宿で開催することについては、当時クラブがなくなり、クラブイベントを開催することについては、無色透明の状態で始められることを意識して行ったという”場所”についてのこだわりが語られた。さらに新宿歌舞伎町で1000人集まった理由については、オタクの性質をあらかじめ掴んでいたこと、イメージはあまりないが新宿はオタクにとって行きやすい街であることが大人数が集まった理由だという自己分析も行った。そして、クラウドファンディングで資金を募り入場無料でイベントを開催することについては、あまりオススメしないと前置きしつつも、シーンの成熟具合の段階によっては、無料で開催した方が絶対に良い時があると語ったことは非常に印象的だった。
次に登場したのが煩悩 #BornNowオーガーナイザーのyossi 2 the future。お寺で開かれるHIPHOPフェスについて、イベント開催のきっかけは遊ぶこと、女の人のことなど煩悩しかないという仲間内での話からだったことが明かされた。また初年度はその煩悩をお寺でテキーラを飲むことによって洗い流そうとしていたこともあったが、何度か開催するうちにコンセプトが変わってきたという。そして、お寺でイベントを開催するうちに、テクノレイヴのように無心で踊ることがキーワードになり、元々、自分たちにヒップホップの文脈があったことからチルなヒップホップのイベントに方向転換していったとのこと。
またアッパーなEDMではなくチルなヒップホップを取り入れたことについては、時代の流れとかは関係なく、かつて自分がクラブ店員で激しいダンスミュージックばかりを聴いていて「単純に耳が死ぬと思った」という自身の経験が活かされているとも語った。そして、お寺でフェスを開催するということの大変さについては、「200回以上頭を下げている」と語り、お寺の周りの地域住人に理解を求めるために開催1ヶ月ほど前から町内会長、檀家の総代さんに根回しを行なっているというお客さんには見えない影の努力があることも明かしていた。このことは今回語られなければ、決して知られることがなかったことだろう…。そのほかには、遊びに来た人がフラットにダンスフロアで踊るということを大事にしているからこそ、昨今のクラブのVIP文化とは違い、VIPエリアは作らないことを信条としていることもなるほどなと思わされたが、逆にオタク文化発だからこそ、Re:animationでは遊びの部分でのパリピ文化の導入としてVIPエリアを導入。年々エスカレートし、今では10万円越えになってきているんだとか。
そして、3人目に登場したのが誰も喋ってはいけないという沈黙ダンスオーガナイザーのDJ SHINDYだ。今年の3月からスタートしたという同イベントは、これまでのクラブイベントでは日常的に見られた遊びに来た人がお酒を飲んだり、しゃべったりするといういわば、クラブの概念を覆しているため、実際にはどうなの? という質問があったが、のっけから「結構地獄」と答えていたことが印象的で、聴いていたリスナーの笑いを誘ったことだろう。ただ体験としてクラブに遊びに行って自分の行動に制約がかけられることは彼が語るように確かになかなかない。しかし、そのもどかしさがクラバーにとっては新鮮だとも語る。そのため、1度でも体験すると病みつきになる人も多いようだ。
またトーク中、注目が集まったのは来場者は喋ってはいけないイベントでどうやってお酒を注文するかということだ。そのことについては、ドリンクメニューを指差してオーダーするという体験が語られたが、それはそれでもどかしいさを感じるそう。そして、出演DJにとっては、フロアからの声がないため、つられて盛り上がるというような光景は起こり得ない。そのためストイックに音だけで勝負するしかない、DJにとっては修行のようなイベントだそう。そんなイベントをオーガナイズするDJ SHINDYがこだわりとして語ったのは、お客さんはもちろん、会場となる場所、出演者の3者が満足できる「三方よし」という概念だ。それは彼自身の良いイベントとは、全員が楽しいという考えから来ているとのこと。
さらにトークは、辛そうなDJ、オーガナイザーの話から、クラブイベントを行う上ではある意味アンタッチャブルなDJのノルマへの話にまで広がり、沈黙ダンスではDJにノルマを課さないことを信条としていることも明かされた。そのことについてDJ SHINDYは、集客面では誰かが責任を持たなければいけないが、本当に良いイベントなら人は集まるという自分のイベントに対する自信も覗かせており、「力任せに営業して集客するより、お客さんが遊びに行きたいと思ってやってきたイベントでないと意味がない」と力強く語っていたことは非常に印象的だった。
ただ、そういったスタンスだともちろんイベント運営を失敗することも過去にはあったらしく、会場に自分を含めて数人しかいない地獄のような体験もしたことがあるとも。しかし、ほかのオーガナイザーもそういった経験は少なからずあり、「オーガナイザーが地獄自慢を始めればキリがない」という声も。そして、沈黙ダンスを思いついたのは、音楽が好きでそれに集中できるものをと思ったがクラブはチャラいという声を聞いたことがあり、それならいっそ喋れなかったらナンパできないのでは? と考えたことがきっかけだったそうだ。また今後は、視覚を奪う暗闇ダンスを開催予定で、イベントでどういったことを達成したいかということを考え、ちょっと変化を加えて最終的に自分が落とし込みたいものをイメージして企画立案することを心がけているとのこと。
イベントをオーガナイズする上で、エッジの効いたものを作るコツに話が移った際には、ちへは「”おもしろいことを!”と考えているうちはおもしろいことは生まれてこない」と語り、意外と悩みこんだ先にその答えがあったりすることも明かした。一方、アフロマンスは泡パ®を始めたきっかけについては、クラブイベントに飽きたという不満があり、お決まりの時間に始まり、終わることに対してもうちょっと何かやりようがないのか? と考えたことだと明かした。またyossi 2 the futureは、ちへの意見に同意し、「おもしろいことは人と話しているうちに小さな種が育ち、そのうち爆発するようにして生まれる」と語った。
そして、最後のリスナーからの質疑応答タイムでは、「自分や仲間のモチベーションの上げ方」、「オーガナイズでの失敗談」などに話が及んだが、その中でもオーガナイザーたちは、イベントを行う上では天候の問題に悩まされた経験があることも語り、それについては今、日本にいる100人くらいのオーガーナイザーが同意したはずだという発言もあった。
このように「スーパーオーガナイザートーク」では、多くのクラバーたちを沸かせる話題のイベントには、その裏にオーガナイザーたちの並々ならぬ想いや努力、そして地獄体験が礎になって運営されていることが赤裸々に語られた。番組では1時間の間、特濃な業界裏話が盛り盛り語られていたため、本稿では一部抜粋という形となったが、それ以外にも興味深い内容のトークが行われているので、気になった人は現在公開中のアーカイヴでその全貌をチェックしてみてはいかがだろうか?
本日は #スーパーオーガナイザートーク ありがとうございました🙏
— アフロマンス (@afromance) 2018年8月9日
クラブもフェスもイベントも、誰かやろうって言い出しっぺがいて、色んな試行錯誤の上で形になってる。
オーガナイザーならではな面白さを感じてもらえれば幸いです😊
聞き逃したって方はこちらをどうぞ👉 https://t.co/4epHO6AAUV pic.twitter.com/aPDK2ozXHX
▶︎スーパーオーガナイザートーク
8月17日(金)〜19日(日)の3日間、バスタブに浸かって映画を楽しむ「BATHTUB CINEMA(バスタブシネマ)」が、MAGNET by SHIBUYA109にて開催決定!泡パ®、Slide the City、マグロハウスなど、新しい体験をつくり続けるパーティークリエイター「アフロマンス」をホストに、話題のイベントやパーティーの仕掛け人に直接質問する「スーパーオーガナイザートーク」がblock.fmの特別番組として登場!話題のイベントの誕生秘話や、コンセプト・アイデアの作り方などについて深堀していきます。
アーカイヴ音源はこちら→ https://block.fm/radios/612
written by Jun Fukunga
photo: アフロマンス Twitter