「僕は流行りを意識してトラックを作ることはない」スティーヴ・アオキが語る、レーベルオーナーとしての意識

TJOがスティーヴ・アオキにインタビュー。楽曲制作とレーベルに対する想いを語ってくれた。
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2019.02.08 12:30

 昨年末、銀座PLUS TOKYOのオープニング・レセプションと 京都WORLDを熱狂の渦に巻き込んだスティーブ・アオキ。アルバム『ネオン・フューチャー』シリーズとしては3年ぶりとなる『ネオン・フューチャー3』をリリースし、  ワン・ダイレクションのLouis Tomlinson(ルイ・トムリンソン)、Blink 182(ブリンク182)、Daddy Yankee(ダディー・ヤンキー)、 そしてBTSと今まで以上に豪華なコラボレーターを揃えシーンに衝撃を与えた。またDJとしてもエンターテイナーの極致ともいえるパフォーマンスにもさらに磨きがかかり、その勢いを直接ここ日本で体感させてくれた彼が今回特別にインタビューに答えてくれた。パーティーで見せる激しさとは裏腹に、いちアーティスト、いちレーベルオーナーとして真摯に我々の質問に答える中、語ってくれたのは楽曲制作に対するビジョンと、レーベルと自分にまつわる歴史だった。



TJO:前作から比べて、今回のアルバムで意識したことや変化は?


STEVE AOKI:「Neon Future 1」と「Neon Future 2」はだいたい同じ時期にプロデュースして、同じようなテクニックと意識で制作をしたんだ。だから「Neon Future 3」はそこからレベルアップした感じ。来年出したいと思ってる「Neon Future 4」もさらにレベルアップしたものになると思う。


「Neon Future」のプロジェクトは2015年にスタートしてもう3年経つけど、この3年間トラックを作りまくって、どのトラックがどのプロジェクトにフィットするかを整理してた。アルバムを自分のプロダクションのタイムラインとして見て、当時何が僕をインスパイアしたのかを見ている。個人的な意見だけど、僕はもっと上手くなっていると思うよ。


そしてこのプロジェクトを結ぶひとつのポイントは、僕がコラボレーションをしたいという気持ち。あとは、化学やテクノロジー、ヒューマニティーがコンセプトであること。でも今回のアルバムでは、ジャンルを広げた感じがする。リル・ヨッティとAJRのコラボからアメリカン・カントリーシンガーのレディ・アンテベラム、BTS、ルイ・トムリンソン、ローレン・ハウレギ、ブリンク182、ジミー・イート・ワールド、マイク・ポズナー、ビル・ナイなどそうそうたるメンバーとコラボをした、自分にとってのレガシーな作品なのさ。





TJO: フューチャリスティックなコンセプトも好きですが、流行りを考えてプロデュースしていないトラックも好きです。何か意識していますか?


STEVE AOKI:そうなんだ。周りは、よく「次の流行り」について話すけど、僕は流行りを考えないでトラックを作る。そうすると逆にその曲が「今」にもっともフィットすると思うんだ。流行りを考えてプロデュースすると当たり前のようにその曲はいつか古くなるよね。作ったメロディーが1年後に聞いて好きだったらそれはそれでいいけど、2年後に聞いてまだ好きだったら、それはいつリリースしても良いメロディーなんだと思う。



TJO:今回のコラボで一番気に入っているのは?


STEVE AOKI:Jimmy Eat Worldのジミー・アトキンズとコラボした「Golden Days」。これBlink 182やファイヴ・セカンズ・オブ・サマーのプロデューサーのジョン・フェルドマンのスタジオから始まったんだ。ファイヴ・セカンズ・オブ・サマーのカラム・フッド、Blink 182のマーク・ホッパス、トラビス・バーカーとジョン・フェルドマンといて、カラムが歌いながらベースを引いてて、トラビスがドラムを叩いてた。その後そのセッションで録ったものを僕のスタジオで引き継いで、僕はギターとベースを追加したんだ。


普段はパソコンで制作してるから、ライブで楽器を弾いて収録できたのが楽しかった。そこからどんどんトラックが出来上がってきて、ジミー・アトキンズの声もトラックに欲しいとみんなで思ったんだよね。


Jimmy Eat Worldとの交流は結構深いんだ。1996年くらいにDim Makを始めた頃に、住んでた家のキッチンとリビングルームでコンサートをやってて。15から20人くらいの前でJimmy Eat Worldがプレイしてた。まさか20年後に電話で「Jimmy Eat Worldの最初の頃のショーをやってたの僕だけど、覚えてますか?」とジミー・アトキンズに聞くとは思ってなかったよ。「Golden Days」を聴いて、それを思い出せるのがすごく好きなんだ。





TJO:Dim Makは20年以上前から始まったレーベルですが、今ではとても大きなサクセスを達成し続けています。この数年間のDim Makの成長についてどう思いますか? そして、どういったポイントをプッシュしていますか?


STEVE AOKI:1996年からこの業界に入って、この22年の間に1000枚はリリースしてる。いろんなジャンルを出せてるけどやっぱりインディーレーベルでもあるから、始まった頃はみんなに音を受け入れてもらうのが難しかった。でも、インデペンデントレーベルの欠点は、流行ってるものを出して流行りが終わったら、一緒にその流行りといなくなってしまう。でもDim Makはどうにかしてこの数年間続けられてるよ。なんとかして次のビッグなことをみつけて出し続けてる。それがインディーレーベルを運営するために必要なスキルだと思う。僕のチームはそれができてるからすごく感謝してるんだ。


次に流行るものを見つけようとするより、小さなことでも好きなものや気になってるものを作る。一番やりがいがあるのは、小さいアイディアが大きくなること。例えばチェインスモーカーズはDim Makからデビューしてるんだけど、彼らがエレクトロニックミュージックのシーンだけでなく、音楽シーン全体で大成功を収めたのをこの目で見れたのは僕のひとつの自慢だ。Dim Makがカルチャーを変えてるんだ。


TJO:Dim Makで服のブランドもやっていますよね。


STEVE AOKI:そうそう。ファッションももう一つのポイントだね。初めてのショーに出演する時にTシャツを作ってたよ。お母さんに手伝ってもらってシルクスクリーンとインクを入手して、リサイクルショップで1ドルくらいのシャツを買って、あの時やってたバンド名を手作りでシャツにプリントしてたんだ。Dim Makのブランドは、その子供の頃の僕の進化した姿でもある。そして今はいろんなものを出したり、ブルース・リーとまでもコラボしたり。それもそれですごい話なんだよね。だって彼は僕にとってのヒーローだったからさ。約20年経ってるけど、まだまだ続けるよ。特に今年のリリースはすごく楽しみだ。


TJO:ありがとうございました! 


Dim Makのオフィシャルサイトはこちら


Written by TJO



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