【使ってみた】DJ向けトラック制作ソフト『Serato Studio』レビュー

Serato DJ Pro でDJをするような感覚でトラックを作ったり、曲をエディットしたり。
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2019.12.16 06:00

以前にblock.fmでも紹介していた『Serato Studio』が国内代理店よりパッケージ版で国内発売開始となり、これまで以上に入手しやすくなった。本記事では実際に製品を使用し、トラック制作したうえでその特徴をレビューしている。




サンプルやループをベースとしての制作に最適化されている


Serato StudioはDJ的なサンプリングやドラムビートとシンセによるループを中心とした楽曲を高速に作業ができるサンプリングやループによるトラック制作特化型のDAWだ。DJソフトウェアのスタンダードとして知られるSerato DJ Pro と共通のユーザーインターフェースを採用し、DJ をするような感覚でトラックの制作ができるので、DJから制作に入るには最適なソフトだ。


最初にトラック制作か、既存楽曲のリエディットを行うのかの選択があり、どちらかを選択した時点ですぐさま作業を開始できるような感覚のワークフローになっている。トラック制作とリエディットではデフォルトの画面配置などが異なるが、機能自体は共通なのでリエディット作業もトラック制作も同じ感覚で作業ができる。今回はトラック制作のモードで使用。


起動してパソコンのキーボードたたくととりあえず音が鳴る


「まずどうやったら音が鳴るのかわかりません」というDAW初めてあるあるはSerato Studioには無縁だ。起動すると最初から808のプリセットの入ったドラムが鳴る仕様になっており、キーボードを適当にたたけばドラムの音が鳴るのでそのまま録音してもいいし、ドラムグリッドにマウスで打ち込んでもいい。いくつものドラムパターンが音楽ジャンルごとに内蔵されているので、「なんとなくシンセのフレーズが浮かんだ!」というような場合はとりあえず適当なドラムパターンを鳴らしてシンセフレーズを録音し、アイディアを忘れる前にスケッチできる。


インストール後は最初からマニュアルを読んだり設定にはいって変更をしないと出来ないようなことはほとんどなく、インストールしたらそのままストレスフリーで音が鳴り始めるのは好感度が高い。Random Beatというランダムなドラムパターンが入力される機能も搭載しており、ランダムといっても音楽的にセンスのあるランダムなので、破綻したビートが鳴ることはなく、手癖で似たパターンを作ってしまうときや、曲を作り始めるにもアイディアの出ないときなどに使ってみるとよさそう。




素材の自動BPM 同期、スライス、タイムストレッチ、さらにキー検出、キーのシンクも


サンプル素材を放り込めば自動で音楽的なタイミングでスライスが入り、これもパソコンの鍵盤でたたけばスライスしたサンプルがすぐに鳴り始める。しかも自動でループ、テンポシンクするのはもちろん、素材のキーも検出しマスターで設定したキーに合わせてくれる。メジャーかマイナーかも判別するので、例えばCメジャーキーの楽曲にBマイナーキーの素材を入れた場合は自動でCメジャーの平行調であるAマイナーになるよう、素材にマイナス2のピッチシフトが入る。理論の話が苦手な方でも、何も考えずに素材を突っ込んめば音楽理論的には合うであろう音に勝手に合わせてくれるのだ。


通常は曲のキーと違うサンプル素材を合わせる場合、キーを判別し、チューニングするという面倒な作業があり、時間がとられるうえクリエイティブな気持ちも止められる。そのあたりが全自動なのでクリエイティブな気分に水を差さずに直感的に作業をガシガシと進められるのは快適。またサンプル素材をインポートすると自動でスライスは入っているものの、そのままループ素材としても扱えるようになっている。逆にまるまるループで使っているサンプル素材を、アドリブ的にいわゆるチョップ・フリップして弾きなおしたループに切り替えるといったことも簡単に1つのトラック内でできる。




ブロックを並べるような感覚で曲の構成を作れる


例えばHip Hopならイントロ、バース1、バース2、ブリッジ、フックなど、各パートのループをそれぞれ作り、それらをブロックを並べるような感じで構成するだけで曲を完成できる。シーケンサーソフトの中では群を抜くシンプルな操作方法になっている。




DJからDAW上級者まで


通常のDAWは汎用的に何でもできるように進化しており、そのため設定やメニューは年々複雑になっている。こういった複雑なDAWはシンプルなワークフローで事足りるDJ・トラックメイカーにとっては無駄が多くなってしまうし、最初の使い方を覚えるところのハードルが高い。


Serato StudioはそういったDJによる音楽制作に完全に特化することで、無駄をそぎ落としたミニマルな制作環境となっており、しかもSerato DJ Proの使い勝手をそのまま受け継いでいるので、DJから曲作りを始めるなら非常に入りやすい。また、DJからの入門用だけでなくトラック制作での無駄な時間や迷いを減らしたい中・上級者でも使いどころがありそうなDAWだ。Serato Studio自体がVSTプラグインとしても使えるので、Spliceなどのサンプル素材をざっくりとSerato Studioで調理し、Pro ToolsやCubaseなどメインDAWに移動させてから仕上げるといったワークフローも非常に効率的だと思う。オーディオ素材に書き出す場合はドラムパッドもパラアウトできるオプションがあるので、ドラム各パートばらばらの素材として書き出せる。


これだけ出来てお値段は買い切り価格で23,000 円(税別)。気になったらまずは無料のデモ版を試してみよう!


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written by Yui Tamura


source:

https://dirigent.jp/release/91294/

photo:

https://serato.com/studio





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