エモいシティーポップ、AOR系のトラックを作りたい。でもDTM初心者だから難しいだろうなと思って諦めている初心者トラックメイカーにおすすめしたいのが、「SAMPULATOR」というDAW。
DAWというと普通、Ableton LiveやLogic、FL Studioのような市販されている音楽制作ソフトが思い浮かぶと思う。これらのソフトウエアベースの音楽制作ツールは、ハードウエア機材に比べて、比較的に価格の面では購入しやすいが、それでも例えば、Ableton Liveの最新版 Live 10ならスタンダードモデルでも5万以上となかなか高額だ。
確かにずっと使い続けるなら一念発起して購入するのも良いが、「初心者で今後音楽制作にハマるかなんてわからない」と考えている人にとっては、試しに購入してみるにはかなり勇気が必要だと思う。まあ、その問題を解決するのが初心者向けの安価なエントリーモデルだったりするのだが、それでも価格は1万円以上のため、ちょっとばかり購入をためらってしまうDTM入門希望者は少なからずいることだろう。
しかし、今回ご紹介する「SAMPULATOR」は、デスクトップで使える無料のブラウザタイプのDAW。しかもサンプルベースになっているので、誰でも簡単に音楽制作を無料で体験できるだけでなく、誰でも簡単にエモいシティーポップ風のトラックから、コズミックファンクやフューチャーブギーと呼ばれるようなトラック、さらにはディープハウスまでを制作することが可能だ。
使い方は非常にシンプルで、PCのキーボードにあらかじめ割り当てられたサンプルを自分が設定したBPM(テンポ)で鳴るクリック音に、合わせて、自分が所定した小節分だけ好きなように打ち込んでいくだけいうシンプルさ。そしてサンプルベースなので、音楽制作に必要なコード、スケールの知識がなくてもエモいフレーズを作れることは大きなポイントだ。
使用できるのは、まずビートメイクのセクションではドラム音のキック、スネア、ハイハット、ハンドクラップ、シェイカーなど一般的なDAWにもプリセットとして搭載されているようなサンプル音源を単発で使用することが可能。
またローランドのTR-808のようなファットなキックも使用できるため、流行りの低音の効いたトラップ系のベースラインだって打ち込んで作ることができる。
次にメロディーを作るサンプルのセクションでは、シティーポップ風の泣きメロ系のキーボードコードとギターのサンプルを使用することができる。コードは実際に使ってみたところ、ディープハウスのふわっとしたシンセから細かく打ち込むことでテクノのStabのように鳴らすこともできる。またコードとギターのサンプルをうまく組みわせることができたら、シティーポップ/AORやNu Disco系まで制作することが可能だ。
さらにトラックにスパイスを加える声ネタも使用可能。「YEAUH」、「UGH」のような合いの手的声ネタがインストのトラックをもう1ランク上のエモいトラックへと変身させてくれるので非常にありがたい。
ちなみに筆者が実際に試してみたところ、BPMを85~90くらいに設定すると、コズミックファンク、フューチャーブギー系の代表的アーティストDam-Funkの激エモなシンセが印象的な「Come On Outside」のような曲を作ることができた。
「SAMPULATOR」では基本的にはトラックのフレーズ、パートを作るのは打ち込みが主体になるが、打ち込んだフレーズは、後から画面下にあるシーケンサーでグリッドにあわせて編集も可能。そのため、リアルタイムで打ち込むと拍がズレてしまいがちな初心者も安心。このあたりは市販されているDAWと同じなので、これに慣れたら次のステップとしてDAWを購入してみるのも良いだろう。
「SAMPULATOR」には、有料と無料の追加サンプルパックも用意されている。無料サンプルパックはMP3フォーマットだが、有料版は高音質なWavとMP3の両フォーマットで用意されているものもあり。
また「Smooth」、「Malibu Forever」などデモ曲も数曲あり。初心者はそれもチェックして打ち込みの方法を学ぶこともできる。また自分のTwitterアカウントと連動させることで、ブラウザで作った曲を保存することもできる。
そして、ここからはDTM初心者向けではなく、中級者以上向けにこのブラウザDAWの使い方の発展版をご提案したい。「SAMPULATOR」では、先述のとおり、トラックのソングプロジェクトを保存することは可能だが、市販のDAWのようにデータとして書き出すことは不可能だ。
そのため、もし、試しに使ってみた際にこのシーケンサー内にこれはと思うフレーズができた場合は、音声をオーディオインタフェース経由で直接DAWに取り込んで、そちらで仕上げてみるのもおもしろそう。その際はシーケンサー部分にある各トラックを「ミュート」や「ソロ」機能を使って個別に音源化、またはパートごとに音源化すると良いだろう。
さらに追加サンプルパックを購入、または無料ダウンロードして、例えばAbleton Liveのサンプラーブラグイン「Drum Rack」や「Simpler」などに割り当てることで、「SAMPULATOR」と同じことができるだけでなく、DAWに内蔵されているエフェクトを加えるなどして、さらにトラックのクオリティーを上げることも可能だ。
ちょっと実践的な話をすると無料ダウンロードできる声ネタ、そして有料でダウンロードできるコードのキーボードサンプルは、本格的なDAWでもかなり使えるサンプル音源だと思う。この辺りの使い方については個人的な経験から中級者以上というよりは、ようやくDAWの基本的な使い方をマスターしたくらいの初心者を卒業したてのトラックメイカーにとっては楽曲制作の参考になるのではないだろうか?
そんなわけで、非常にオススメなこの無料かつデスクトップでサクッと動作するサンプルベースのDAW「SAMPULATOR」。是非、本記事を参考に一度試してみてほしい。
なお、使用は下記のURLで可能だ。
written by Jun Fukunaga
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Photo: SAMPULATOR