“世界の坂本”こと、日本を代表する音楽家の坂本龍一が、レストランのためにプレイリストを作成していたことが明らかになった。
そのプレイリストは、坂本龍一が住むニューヨークにある人気精進料理レストラン嘉日(Kajitsu)のためのものなのだが、作成の理由はレストランでかかるBGMの内容が気に食わなかったから。
NY Timesによると、あまりにも酷いそのBGMは、ブラジリアンポップスと古いアメリカンフォークがごちゃまぜになったものだったそうで、それに我慢できなくなった彼は帰宅後、今年の3月まで同店で働いていたシェフに対して、料理は桂離宮のように美しく最高なのにBGMのチョイスは、トランプタワーくらい酷いとメールで訴え、自らBGM選曲役に名乗りを上げたとのこと。
その後、彼はニューヨーク在住の音楽プロデューサーRyu Takahashiとともにレストランの雰囲気にマッチしたBGMを選曲。現在、そのプレイリストはNY TimesによってSpotifyプレイリストと公開されているのだが、内容はさすが”世界の坂本”。これなら舌だけでなく、耳でも料理を楽しめそうといった感じだろうか? 美意識を感じるエレガントな選曲は聴いていて心地よい。
ちなみにプレイリストに収録されている曲は、John CageのアンビエントやBill Evans、Pat Methenyといった落ち着いた雰囲気のジャズが中心になっているが、その中にはAphex Twinのクラシックチューン「Nanou2」、「Avril 14th」、日本のSpotifyでは残念ながら再生することはできないが、9月に来日公演を行うOPNことOneohtrix Point Neverの「Replica」、「Cryo」、Nicolas Jaarの「Mistress」といった曲も収録されるというレストランのBGMとしては、斬新なものになっている点が見逃せない。
また、Daft PunkやBjörkも心酔する天才音楽家Chilly Gonzalesの曲も2曲含まれていたりもする。
しかしながら、そういった現代の電子音楽家の曲も不思議とこのプレイリストにはマッチしているので、そのあたりの坂本龍一のキュレーションセンスはやはり抜群だ。
なお、これきっかけに坂本龍一は今後、このレストランのBGMをシーズンごとに更新するだけでなく、先述のシェフが今秋新規オープンするレストランのBGM選曲も担当する予定とのこと。次は一体どんな選曲になるのだろうか? 今から気になって仕方がない…。
written by Jun Fukunaga
source:
http://www.factmag.com/2018/07/24/ryuichi-sakamoto-makes-a-stand-against-terrible-restaurant-music/
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