世界ナンバー1のDJを決める、Red Bull 3Styleという大会があるのをご存知だろうか。Red Bull 3Styleの歴史を振り返ってみると、ダンスミュージック界の傾向などが見えてくる。今回は、この大会を振り返ってダンスミュージックがどういった進化を遂げているのか見てみよう。
Red Bull 3Styleは、DJの登竜門とも言われている大会である。世界最大級のDJバトル大会で、2010年以降DJ文化を盛り上げてきた。大会の内容としては、制限時間15分以内で3つ以上のジャンルをプレイ。そのプレイの中空、創造性や選曲、スキル、フロアの盛り上がりの4つの項目を審査員が採点する。大手DJ機器メーカーも参加し、DJ機材の提供やワークショップ、特別イベントなどを開催している。
Red Bull 3Styleの2013年大会では、日本人が歴史的快挙を成し遂げた。「DJ SHINTARO」が見事世界チャンピオンに輝いたのである。優勝したDJ SHINTAROは、これを皮切りに世界で活躍するDJへと成長した。Red Bull 3Styleは、こういったDJの登竜門的な役割も果たしている。
2012年大会では、EDMトラックを多用するアーティストが多かった。Red Bull 3Styleに参加するDJは、普段はヒップホップをメインに活動している人も多い。しかし、大会では選曲力も大きく試されるという事もあり、ヒップホップだけでなくEDMなど誰でも知っているネタを使用するアーティストが多かった。
一方2013年の大会では、EDM系のトラックを使うアーティストが減少した。わずか1年でここまで変化するのはRed Bull 3Styleでも珍しい事で、クラブミュージックの歴史の中でも、特にジャンルの変動が激しい年だったと言えるだろう。なぜここまで変化したかというと、選曲を重視する考えから、コントローラーやパッドを使ったプレイを重視する傾向が見られるようになったからだ。この大会では、曲のフレーズを自分で演奏し、それを原曲に合わせるという手法を行うDJが多く見られた。大会の歴史の中でも、DJのプレイが大きく変わった大会だと言える。
Red Bull 3Styleの2014年大会は、大会の歴史の中でも特にレベルが高い年だった。この年はヒップホップをメインに取り入れるDJが多くなり、縦ノリではなくヒップホップ本来の横ノリのグルーヴが主体となった。また、PioneerやNovationのコントローラーを取り入れ、よりアグレッシブなプレイをするDJが多くなり、前年よりも非常にレベルの高いプレイが多く見られた。2013年大会と一番変化があったのがパフォーマンス面だ。2013年大会でDJ SHINTAROがDJブースに飛び乗るなど、アグレッシブなパフォーマンスを見せた事が影響しているのかもしれない。
ファイナリストに出場したDJともなると、曲のミックスポイントに工夫がされ、原曲を留めない程にオリジナリティを出した楽曲が目立った。また、細かな箇所にも拘り、ワンフレーズだけ変化させたり、数小節のみ原曲を使うようなDJもいた。どちらかというと、楽曲本来の良さを活かすというよりは、DJ自身のプレイの純度の高さを競う大会だったという印象を持った人が多いようだ。DJの技術が向上しているという意味では良いのだが、テクニックだけにとらわれているという印象を持った人も多いようだ。
テクノロジーが発達し、DJ機器も進化を遂げ様々なプレイが可能となった。こういったDJ機器の発達も、大会に大きな影響を及ぼしている。ダンスミュージックの歴史において、DJ機器の進化がプレイにも影響を与えているという事だろう。
photo: https://www.facebook.com/pg/RedBullMusic3Style/photos/?ref=page_internal
written by 編集部