フリースタイルラップバトルが好きな方なら一度はLick-G(リック・ジー)の名前を聞いたことがあるだろう。若手として最強のフリースタイルバトラーとして評価が高く、最近ではフリースタイルダンジョン制覇を達成するなど、名実共に最強の座を手にした彼だが、バトルを引退するのではないかとの噂がラップ界で広まっている。
噂の話をする前にLick-Gが最強と呼ばれるまでに至った経歴を紹介しよう。そもそもLick-Gがラップを始めたきっかけというのが、2012年頃に動画共有サイトで日本語ラップの動画を見てその魅力に取りつかれ、更に父親の仕事の影響で自宅に洋楽HIPHOPのCDが大量にあり、それらも手伝ってラップにのめり込んだというのだ。そしてラップをする中でフリースタイルラップも我流での練習を始めるが、彼の周りには誰もフリースタイルをする人がおらず、フリースタイルを始めてから1年近くはネット上でのサイファーやバトルで腕を磨いている。だがやはり実際のバトルを味わってみたいと思い始め、中学2年生の頃には横浜や横須賀のサイファーに通うようになったという。
そうして着実に実力を身に着け、同じく中学二年生の頃からバトルMCの大会に参加するようになったと言うのだから驚きだ。やがて高校生になってもLick-Gは躍進を続け、第8回高校生ラップ選手権やKOKには最年少で参戦するなど、常に話題をその身にまといながら活動を続けてきている。
日本語ラップ界の若手として台風の目のように話題を呼んでいた彼だが、ある時ツイッターに投稿されたツイートが注目されている。その内容は2017年1月に行われたKOKという大会後にされたのだが、今後大きな大会には参加しないという実質のバトル引退宣言のような内容である。この宣言は大きく話題になり、とりわけ当時まだ高校生という若さやバトルでの卓越した唯一無二のスキルを惜しむ声が多く挙がった。
しかしLick-Gはもとより音源制作に力を入れており、高校生当時から音源のリリースを精力的に行っている。もちろんその音源も高校生とは思えないほどのクオリティで非常に高い評価を受けているのだ。そしてフリースタイルバトルに関しては名前を売るための手段であったり大会の賞金のためにしているという、ある意味フリースタイルバトルは2の次といった旨の発言を雑誌のインタビューで行っている。そのことから引退宣言のツイートはいまや知名度も賞金も十分に稼いだことから、今後はバトルMCとしてではなくHIPHOPアーティストとして活動を大きくしていくという彼なりの宣言なのであろう。
2017年には人気ラッパー・KEN THE 390(ケン・ザ・390)のレーベル「DREAM BOY」より1stアルバム『Trainspotting』もリリースしている。
Lick-Gの過去の発言や今の知名度を見るに、確かにフリースタイルバトルを引退し、これからさらに音源制作に力を入れるという話は有力だ。だが引退宣言をした後も前述のフリースタイルダンジョンへの参加、そしてダンジョン制覇の偉業を成し遂げてもいる。あくまで引退するのは「大きな大会」への参加であり、彼の中ではフリースタイルバトル自体から引退する気は毛頭ないのであろう。
だが彼がフリースタイルバトルをする理由は前述のとおりであり音源制作に集中したいと思えばフリースタイルバトルでの露出は減ることになる。その感性で日本語フリースタイルバトル、もっといえば日本語ラップ界に大きな激震を起こしたLick-Gがフリースタイルバトルの世界から姿を消すのは非常に惜しいが、その分更に洗練された音源が聞けると思えばファンにとっては嬉しいことなのかも知れない。
Lick-Gが今後フリースタイルバトルとどのように付き合っていくのか、少なくともまだまだLick-Gがヒップホップ界の話題をさらっていくことは確実だろう。
photo: youtube
written by 編集部