グラミー賞を受賞したアーティストであるCommon(コモン)は、ヒップホップ界では超が付くほど尊敬されているアメリカ人ラッパーの1人だ。すでにアーティストとしてその地位を確立していたコモンではあるが、2006年から黒人俳優として映画デビューを果たしている。
活躍の場はラッパーに留まらず、黒人俳優としてもその名を轟かしているコモンは、今までのラッパーのイメージを覆した逸材だ。以前のラッパーといえば、女やドラック、酒など、悪いイメージを持たれることが多かった。しかし、コモンは違った。コモンは、言葉というものを大切にし、紳士的な歌詞でアメリカを越え世界を魅了したのだ。魅了したのは、リスナーだけではない。多くのアーティストをも魅了し、彼の才能に恋をした。2005年には、『Be』というアルバムをリリースし、その中に収められた「Go」という曲は、グラミー賞受賞の常連であるKanye West(カニエ・ウェスト)がプロデュースをして話題になった。その後も、最強タッグと呼ばれるほど息がぴったりと合ったNas(ナズ)と「Ghetto Dreams」をリリースし、現在に至るまでその人気は衰えることを知らない。
その勢いは、アルバムをリリースするごとに熱を帯び、クラシックとしても人気がある「Resurrection」、R&B界では知らない人はいないほどの著名人Mary J. Blige(メアリー・J・ブライジ)とフューチャリングした「Come Close」など、数々の名曲が生まれた。その中でも、印象深く人々の記憶に刻み込まれている曲を上げるなら、John Legend(ジョン・レジェンド)との「Glory」は外せない。この曲は、アフリカ系アメリカ人であったキング牧師の半生を描いた「グローリー/明日への行進」というアメリカ映画のサントラ曲として使われている。コモンは、常に黒人リリシストとしてヒップホップ界で注目の的であったのだ。
コモンが、黒人俳優として映画界にデビューしたのは2006年のドキュメンタリー映画「ブロック・パーティ」という作品だ。「ウォンテッド」や「ターミネーター4」などに出演し、ラッパーとしての顔を持つ傍らで、黒人俳優としての地位を確立してきた。そんなコモンは、「音楽も映画もインスピレーションを得るためにやっている」と語っている。また、「音楽と映画を繋げられるような形で作品をしたい」とも語っている。
「ラン・オールナイト」を手掛けた監督は、俳優としてのコモンの才能をすごさを絶賛した。普段のコモンにはない残忍な悪役を完璧に演じたコモンの演技力は、周囲を驚かせた。撮影後、本人ですら役から抜け出すことが難しかったと語るほど役にのめり込み、徹底した役作りで作品に挑むことができるのが彼のすごさと言えるだろう。
グラミー賞を受賞するほどの音楽的才能と、監督を唸らせるほどの演技力を兼ね備えたコモンは、ある信念を持っている。コモンは、ただ単にお客さんを喜ばせるだけのエンターテインメントを作りたいと思っているわけではない。音楽からインスピレーションを伝え、そのインスピレーションによって人々が繋がったり、愛情や絆が深まるようなものを感じ取ってほしいという想いを込めて、音楽作りを続けているのである。コモンの音楽には、ブレを知らない軸があるのだ。彼の求める音楽を追及してこそ、彼の音楽であり、人に影響を与えることのできる音楽を生むことができるのだ。
そんな彼に大きな影響を与えたのが、「グローリー」という映画だ。この作品では、サントラ曲制作だけではなく、黒人俳優としても出演している。自分を犠牲にしてまでも、アメリカや世界を変えるために尽くしたジェームズ・べヴェル役を演じたコモンは、この役を通して、困難な状況下であっても耐え忍ことを学んだと言う。熱い思いを持ちラッパーとして、アメリカ人俳優として活躍の幅を広げているコモンに今後も目が離せない。
written by 編集部
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