Chilly Sourceレーベルからシンガー/ラッパーのpinokoがEP『小悪魔』をリリース。収録曲「トーキョーブルース」のMVも公開された。
かのOLD NICK、DJ HASEBEも太鼓判を押すChilly Source所属のシンガー/ラッパーのpinokoが3曲入りのEP「小悪魔」をリリースした。
収録されているのはタイトルトラックである「koakuma」「black flame feat.Taku-t」「トーキョーブルース」の3曲。いずれもChilly Sourceらしいチルくて街の匂いがするトラックに、pinokoの歌唱が映える。
pinokoの魅力のひとつは歌による表現に加え、共感を呼ぶリアルな歌詞にあると個人的には思う。“リアル”というのは人によって定義や感覚が異なるけれど、pinokoの場合、日常のワンシーンを丁寧に緻密に切り取り、描写することによって「ああ。わかるー」と異性、同性問わずに“あるある”な心地良さを与えてくれる。
逆もまた然りで感情移入しすぎて胸が締め付けられるほどに辛くなるような歌詞もある。傷口を圧迫して膿や毒を出すように、それが心のデトックスになるのかもしれない。pinokoの少し鼻にかけたふくよかな声によって吐き出される言葉は、ポジティヴもネガティヴも含めて総じて気持ちがいい。
本作のタイトルトラック。好意を持つ相手、もしくはパートナーに素直になれない心情を描く。朝の出かける描写はかなりリアルで「あーね」と聴きながら頷いてしまう。正直、曲を聴き終わったあと、この物語に出てくるコはその実、天使じゃないかと小悪魔請負人(個人的嗜好です)の筆者は思ってしまった。心の中と振る舞いの“ギャップ”を見事に描き、小悪魔な魅力がたっぷり詰まった楽曲。
“black flame”ってなんだろう? きっと、歌詞から考えるに“目隠し”とか“サングラス”とか、そんな意味かな。と思ったけど、もしかしたら見たくないもの(またはそれらを見てネガティヴな感情になってしまう醜い自分)を“黒い炎”で全部焼き尽くしたいってことなのかもしれない。黒い炎と言えば、某有名漫画に出てくる邪眼師が操る地獄の炎である。目(SNS含む)に映る他人と比較して自分に対する嫌悪感、憎悪、嫉妬、というネガティヴな感情との葛藤が描かれる。AWAZARUKASのTaku-tを迎えているが、このリリックがとても刺さった。声もイケメン。おちゃらけもシリアスもイケるTaku-t、いい。なんとトラックもTaku-tのプロデュースだ。共感という点では3曲中、いちばんだった。ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・マス!
pinikoのスタンスを赤裸々に歌った曲でもあり、同じように街に生きる若者たちの声を歌った楽曲だ。トラックプロデュースはshin sakiura。今時期の夕暮れ時なんか聞いたらホロっときてしまうようなこの楽曲はEPリリースとともにMVが公開された。ディレクションはChilly Source代表のDJ KROが手がけた。出演者は1人。主演以外の人が出てこない。たくさんの人が行き交うはずの街の中にいても、満たされることのない孤独感。同時に、「1人でも平気」と語るかのような主演を務めたモデルmaoの眼差しを印象的に切り取る。美少女とヘッドフォンの組み合わせ、僕は好き。「せめて、せめて、僕の不幸で笑ってよ」のリリックにpinokoの強い覚悟と繊細さを見る。
今回ジャケットのアートワークを手がけたのは、 福岡在住のイラストレーターのリチャード君で、タイトルデザインを手がけたのは同じく福岡のイラストレーターBunjo。MV「トーキョー ブルース」のタイトルもBunjoが制作した。
リチャード君 Instagram:https://www.instagram.com/ri3939p/
Bunjo Instagram:https://www.instagram.com/bunjo__/
代表であるDJ KROに彼らとの繋がりについて聞いてみた。
DJ KRO:「僕が福岡でDJのイベントに出演した時にBunjoに声を掛けてもらって、その時から彼の絵のファンでした。その現在の彼女さんがリチャード君なのですが、お二人がコラボした絵を見た時に絶対2人に描いてもらいたいと思い、今回pinokoのアートワークデザインに参加してもらいました」
DJ KROが2人の魅力に惚れ込んだイラストがこちら
同じモデルを互いに描いた作品でマンガ的にデフォルメされ、カラフルでポップなイラストがリチャード君。リアルなタッチで描かれた淡い色合いが特徴的なイラストはBunjoによるもの。
pinokoは12月にアルバムリリースを予定しており、来月早くもEPをリリースするという。今回の『小悪魔』、『Sunday』2枚のEPを経て、アルバムでストーリーが完結する構成になっているそうだ。次作『Sunday』のアートワークはBunjoが担当するとのこと。
あれ、そういえば『koakuma』の曲終わり、彼氏と女の子が、“日曜日”に会う約束してたけど、ストーリー的に関係があるのだろうか。早くも次のEPの展開が気になってきた。
また、リリースが続いているChilly Sourceは所属のケンチンミン、15MUS、illmore、pinokoの合同リリースパーティをCreativemanとManhatan Recordsとともに10月に開催する。Chilly Sourceレーベルについては代表のDJ KRO、副代表DJ AKITOのインタビュー記事を参照してほしい。
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▶『小悪魔』EP
アーティスト:pinoko
レーベル:Chilly Source
発売日:2019年10月2日
Apple Music:https://music.apple.com/jp/album/%E5%B0%8F%E6%82%AA%E9%AD%94-ep/1479520659
Spotify:https://open.spotify.com/album/1Qyj2fTKopQSNWaE4N0Vt4?si=f_E3mMGPSZWjIBCUL_H5iQ
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
photo:Chilly Source