【レビュー】PETZ(YENTOWN)の1stアルバム『COSMOS』を聴く

銀河アジア系、惑星NEOTOKYOの最先端をパッケージ。PETZが満を持してリリースした『COSMOS』をレビュー。
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2019.09.30 03:00

YENTOWN所属のラッパーPETZ(ペッツ)が9月25日にアルバム『COSMOS』をリリース。ライター期待の1枚に胸躍る。





NEO TOKYO HIPPIE最新系。YENTOWNのPETZアルバム『COSMOS』を聴く


今年2月に「BRO」、8月にGab3とkZmを迎えた「CHROME HEARTS」間を置かずにDJ TAKU a.k.a.VLOTがトラックを手がけたソロ曲「All Night Long」と立て続けにリリースしてきたPETZ(ペッツ)。“YENTOWNの兄貴分”“渋谷のアイコン”とMARZYも敬愛する男が、ついにフルアルバム『COSMOS』をリリース。僕も首を長くして待っていたこのアルバムを聴いていこう。


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アートワークはGUCCIMAZE。豪華な客演と制作陣


「BRO」MVでもタイトルロゴを手がけたGUCCIMAZEが『COSMOS』のアートワークを担当。青のスケルトンケースにGUCCIMAZEの有機的でエッジの効いたタイポが映える。画像で見ると一昔前のMDを彷彿とさせ、スケルトンってやっぱり魅力的だなと思ってしまう。デザインだけで盤が欲しくなる。今フィジカルで欲しいと思わせるのって、こういった質感とか仕様、細部にこだわるってことが大事なんだろうなと。




裏面を見てみよう。アルバムのトータルプロデュースはYENTOWNのChaki Zuku、楽曲のプロデューサー陣にはイギリスのBaauer、killyの楽曲を手掛けるカナダのBluxz、アムステルダムのstar boy、French Montanaにも楽曲提供する1Mindと世界各国のイケてる連中が参加している。日本勢も負けてはいない。YENYOWNからはU-LEEがソロ曲「Come Clean」に参加。Chaki Zuluに次いで、3曲(1曲はChaki Zuluと共作)にVLOTが制作に携わる。




VLOTは僕と同じくらいの世代の人にはもしかしたら、DJ TAKUという名前の方がしっくりくるかもしれない。DJとして活動し、レアなヴィンテージTシャツを扱うPORTRATIONを運営。トラックメイカーとして、コンスタントにリミックス音源やオリジナル音源をサウンドクラウド上にアップしており、DJ TAKU名義の「It G ma」のJursey Clubリミックスは僕もダウンロードしてDJでかけたりとお世話になった。そのDJ TAKUのプロデューサー名義がこのVLOTなのである。yvyv、KENYA、Mariaの3人組次世代ヒップホップ、R&BユニットBleecker ChromeのライヴDJや楽曲プロデュースを手がけている。


アルバムと同日にMVが公開された「All Night Long」は楽曲をVLOTが、MVは所属するPORTRATIONクルーが手がけた。






もういらないNEW FRIEND。客演、全部仲間


「BRO」のMVには近未来SFの細かな設定が盛り込まれていたが、この『COSMOS』でもその世界観がさらに拡大しているような印象を受けた。アルバム中PETZのソロは12曲中、4曲。その他の8曲には全て客演を迎えている。YENTOWNのkZm、Awichを始め、OZworld a.k.a R'kuma、親交のあるGab3、記事執筆時点で4600万回以上再生されている「YOUNGGU」で共演したタイのYOUNGOHM、先述したBleecker ChromeのKENYA、HIBRID ENTERTAINMENTのJin Doggに、88rising所属、HIGHER BROTHERSのMaSiWeiと、日本のみならず世界中の友達、仲間が集まったという感じ。豪華すぎるよ。


1.Intro-COSMOS-(Prod.Baauer)


イントロはアルバムタイトルを冠し、Baauerがプロデュース。獣のうめき声にも聞こえるギターの歪んだようなサウンドが特徴的。雨の降る近未来のNEO TOKYOを闊歩するPETZと仲間たちの姿が浮かぶ。


2. CHROME HEARTS feat. Gab3 & kZm (Prod. star boy, OUTTATOWN & Chaki Zulu)


イントロのBring Back的なSEが新鮮な個人的に好きすぎる疾走感のあるエモトラップ。フックのギターサウンドが特徴。Gab3のフックにPETZとkZmがメロディアスにバースをキックしている。自分たちのスタンスをレペゼンした1曲。朝の通勤時、コレを聴きながらチャリにのるとスピードが1.5倍くらいになる(気分)。




3. RPG feat.OZworld a.k.a. R'kuma (Prod. VLOT)


ライフスタイルをRPGに例えた1曲。VLOTプロデュースのトラックはポップになりがちなファミコンサウンドを重厚感たっぷりに響かせている。PETZとOZworld a.k.a. R'kumaの組み合わせは声のコントラストも新鮮。食べるだけでレベルアップするポケモンのアイテム「ふしぎなアメ」。たしかに今考えるとかなり勘ぐる。


4. Come Clean (Prod. U-LEE)


YENTOWNのU-LEEビートに載せた、PETZらしいシリアスな1曲。クールな男にはシンプルで孤独なトラックが似合う。ちょっとハスキーで低音混じりの魅力的な声を静かに淡々と聴かせる。


5. Made Myself feat. MaSiWei & Awich (Prod. Chaki Zulu)


HIGHER BROTHERSのMaSiWeiとYENTOWNのクイーンAwichが参戦。プロデュースにはChaki Zuluと、クレジットだけでヤバすぎる。このMVはぜひ出してほしい。MaSiWeiのキャッチーな声とおしゃれなキャラもPETZと相性が良くて、納得の客演。Awichの存在感も抜群。


6. Bro (Prod. star boy & Chaki Zulu)


2019年初頭にドロップされたこの曲から、僕は今年のPETZの動きを楽しみにしていた。キャッチーなメロディのフックはつい口ずさんでしまい、周囲の人間をキョトンとさせる中毒性の高い曲。star boyとChaki Zuluによるギターリフの効いたトラックもカッコイイ。ライヴでシンガロンしたら気持ちイイだろうなこれ。




7. All Night Long (Prod. VLOT)


『COSMOS』で大きな存在感を放っているVLOTのムーンバートンビートに、PETZのメロディアスなラップがのっかって、PETZのクールな人生観が詰め込まれた1曲。「何度も失敗 後悔を しても君なら絶対 大丈夫 遅くない 今からでもRide'on」のラインは、仲間やパートナーに向けられたリリックだと思うが男前すぎる。この曲を聴きながら閉店間際にスロット台を選ぶと出る気がする。負けても「昨日よりもっと強くなろう 全部忘れて All Night Long」で泣く。


8. Never Stop feat. KENYA (Prod. VLOT & Chaki Zulu)


VLOT&Chaki Zuluによる強力タッグによるメロディアストラック。のっけからPETZが「今日1人じゃない なら ヘタな芝居 してもマジ意味ない から もうやめなさい」と、SNSメンヘラと、悲劇ぶってるSNSポエマーを優しく殺しにかかっているのがさすがだ。客演のKENYAもセクシーな声で心地いいメロディを展開している。


9. Fallin' feat. kZm (Prod. 1Mind)


こんな夜もあるよなあ、と思わせる大人な鬱曲。ハイトーンでシャウトするPETZがリアルな男の心情を歌い上げる。客演 のkZmは対照的にローキーなラップをキックする。2人のコントラストがイイ感じ。ダークで孤独な夜に、しっとりと聴きたい。今からの季節におすすめ。


10. Lost in Tokyo feat. YOUNGOHM (Prod. Chaki Zulu)


東京で迷子な夜遊びチューン。YOUNGOHMがオートチューンでシンガロンしていてキャッチー。クラブのフロア、ネオンに照らされる街並、目に浮かぶ、スレ違ったあのコを探して、今日も東京で迷子。


11. Moonlight (Prod. U-LEE)


月がタイトルにある曲は良い曲が多い。というか個人的に好き。深夜、部屋でゆったりチルしているときに聴きたい。U-LEEのビートとPETZの声が月の光の優しく響く。静かに響くシンセと、少し遠くでノイズがかったギターの反響音がイントロから泣かせにきていて切ない。


12. Blue feat. Jin Dogg (Prod. Bluxz)


アルバムの最後を飾るのは曲の客演はJin Dogg。大阪のみならず、日本全国、海外へとその名を轟かす存在となったHIBRID ENTERTAINMENTの鬼才が合流。メロディアスなシンガロンを披露していて、やはり才能ある人間は何をしても様になる。PETZとの相性も最高で、PETZバース終わりからのJin Doggバースへの展開は鳥肌モノ。3バース目にXXXTENTACIONやLil Peepが入ってきても何ら遜色ない。


ASIAの中のTOKYO。PETZが形成する『COSMOS』


『COSMOS』というタイトルは宇宙を指す言葉である。とりわけ、宇宙という膨大な存在を、秩序あるシステムとしてとらえた宇宙観のことを「COSMOS」と呼ぶそうだ。


多くの客演を招き、世界中から仲間たちが集まった今作には、PETZの交遊関係や動きがコンパイルされている。アートワークを見てみると、円盤(CD)の上にはシンメトリーな惑星の軌道が載せられている。アジア、ひいては世界の中の東京という都市を代表するコレクティヴ、YENTOWNという惑星を中心とし、多くの仲間たちがPETZを取り巻く。それらは規則正しい軌道を描き、調和する宇宙そのもの、といえるのかもしれない。


近未来のSFを感じさせる広大なタイトルやコンセプトながら、PETZがラップする事柄は極めて狭い範囲に限られる。仲間、家族、恋人、といった身内への愛や感情の変化が綴られた『COSMOS』にはPETZが形成する最小単位の宇宙が詰まっているのだ。


PETZとともにユニットを組む、JNKMN(ジャンクマン/Junkman)はシングル「Jailbird」のMVを公開。同じくMonyHorse も「Oinukasu」をリリースしアルバムもリリース予定。海外のファンも多いYENTOWNの動きは今後さらに活発になりそうだ。


YENTOWNの特攻一番機、宣伝部長MARZYもGIGに広報活動に大忙しである。(MARZYが宣伝部の人員を募集中だ! )





▶PETZ『COSMOS』


1. Intro -COSMOS- (Prod. Baauer)

2. CHROME HEARTS feat. Gab3 & kZm (Prod. star boy, outtatown & Chaki Zulu)

3. RPG feat.OZworld a.k.a. R’ kuma (Prod. VLOT)

4. Come Clean (Prod. U-Lee)

5. Made Myself feat. Masiwei & Awich (Prod. Chaki Zulu)

6. Bro (Prod. star boy & Chaki Zulu)

7. All Night Long (Prod. VLOT)

8. Never Stop feat. KENYA (Prod. VLOT & Chaki Zulu)

9. Fallin' feat. kZm (Prod. 1Mind)

10. Lost in Tokyo feat. YOUNGOHM (Prod. Chaki Zulu)

11. Moonlight (Prod. U-Lee)

12. Blue feat. Jin Dogg (Prod. Bluxz)


ダウンロード/ストリーミング:https://smarturl.it/PETZ_COSMOS

CD:https://www.amazon.co.jp/COSMOS-PETZ/dp/B07VYJR18K





▶PETZ

AwichやkZm等が在籍し今や日本のHIP HOPシーンを語る上で外すことが出来ないクルー、YENTOWN所属のラッパー「PETZ」。同じくYENTOWNに所属するMonyHorse、JNKMNと共にユニットMONYPETZJNKMNの一員として活動し、2016年にはミニアルバム『上』、『下』、『轟』を立て続けに発表。2017年にはグループ初のフルアルバム『磊』をYENTOWN の首領Chaki Zulu全面監修のもとリリースし大きな話題を呼ぶ。グループ/ソロを問わず国内に止まらず中国や台湾、タイなどでのイベント出演も成功させるなどグローバルな動きが目立つPETZだが、なかでも客演として参加したタイの人気ラッパーYOUNGGUの楽曲「SHIBUYA FT. FIIXD,YOUNGOHM, DIAMOND, & PETZ」 がYouTube公開から僅か半年で3,000 万回を超える再生回数を記録。また2019年1月には日本でも絶大な人気を誇るアメリカの兄弟HIP HOPユニットRae Sremmurdの初来日公演のオープニングアクトに抜擢されるなど国内基準を遥かに超えた活動を展開。9月25日には1stアルバム『COSMOS』をリリース。


Instagram:@petz_6

Twitter:@petz_666


written by Tomohsa Tomy Mochizuki


photo:bpm tokyo




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