Written by Jun Fukunaga
Photo: Photography by Skinny
*取材協力: H.Nakajima
現在、これまで関西のクラブシーンの中心的存在を担ってきた大阪は、シーンの変革の時期に直面している。そんな同地で活動するDJや、プロデューサー、オーガナイザーに、彼らが実際に考える「大阪のクラブシーンの今と未来」について聞いてみるこの企画。
今回は、第2弾として、前回までのベテラン勢に続く、現在まで活躍する大阪のテン年代のDJ、プロデューサー達であるAIDA、AVV、GiddlahSelecta、KEITA KAWAKAMI、Toru Ikemoto、YANMAHらの考えを紹介する。
- 1.現状の大阪のクラブシーンは、以前と比べてどのような状態だと考えていますか。
- AIDA:風営法の影響で厳しかった状況が落ち着き、オールナイトのパーティを開催できることや、海外アーティストがゲストとして登場するようになった点については、風営法の影響以前の状況に戻りつつあるのかなと感じます。ただし、絶対的なクラブ数やパーティ数は以前と比較して減っているように思います。AVV:特に変化はないです。若いトラックメーカーがあんまりいない。GiddlahSelecta:大阪に関しては朝まで営業できるクラブが去年の6月迄ほぼ無くて、クラバーが減り、、クラブ も減って、正直盛り上がってはなかったと僕は思います。2016年6月23日に風営法改定され朝まで営業可になってからは大阪クラブシーンは盛り上がろう としています。 正直、良い音楽を求め美味しいお酒をのみにクラブへ遊びに来ると言うのは、大阪は残念ながら一 般的ではないように感じますが、、 現状、一般的となると女性を「おもてなし」するエンタメ(俗に言うチャラ箱)というのが、大阪では流行ってます。そんな中、いくつかの音箱のスタッフがオーガナイザーになり、新しいDJやMCなどを招き、「音楽」をメインにパーティーを開催する最近の傾向です。 これのおかげで、あまり認知されていないDJ/MC/PRODUCERなどが多く増えたというか、出てきたというのが、現状ですね。 今後の大阪クラブシーンは、呪縛がとれたかのように盛り上がっていきますよ。KEITA KAWAKAMI:僕の周りだとここ何年かでレギュラーパーティーは減っていて、外国人アーティストの来日イベントや国内アーティストのリリースパーティーなど単発のイベントが多い印象で、少し飽和状態にあるかなと感じます。Toru Ikemoto:10年前はクラブに来る人がジャンルや、アーティストのことなど音楽に対しての興味が強く、とても詳しかった印象を受けます。そこから考えれば現在は音楽への興味が弱いため、積極的にクラブへ足を運ぼうという人が少なく、イベンター、DJとお客さんの間に温度差を感じます。これは情報化が進む現代ならではの必然的な状況と私は思っています。これまで知ることができなかったたくさんのサービスを今はインターネットで知ることができるため、皆さんの”遊び”というものが溢れクラブへの興味も薄れているのだと思います。YANMAH:まず昨年、改正風営法により特定遊興飲食店の許可を得た店舗は朝までのクラブ営業が可能となり、改正前の午前1時までの営業から、晴れて午前5時まで営業できるようになった事は以前と比べ良くなっている点です。ですがそれに伴い、面積、立地など許可を取りたくても取れないなど、深夜営業できない店舗もあったりとすべてがいい訳ではないです。客足は数年前、よかった時期と比べるとやはり少なくなったのが現状です。ですがもちろん各ジャンルで風営法前から変わらず活動しているアーティスト、オーガナイザーはたくさんいますし、若い新しい世代の子たちもどんどん出てきていて、世代関係なくクラブシーン、各音楽シーン、ファッションシーンなどつながっていっていると感じます。海外からゲスト呼んだり、東京や各地からゲスト呼んだり、ローカルなPARTYなどたくさん開催されていますし、大阪発のいけてるアーティストもたくさんいます。様々な世代、各ジャンルで盛り上げて、より良い大阪クラブシーンをつくっていっていると思います。一時の底の時期から考えると今はゆっくりですが、右肩上がりです。
- 2.その状況下でのご自分の活動は、これまでよりある意味制限されていると感じますか?
- AIDA:僕がオーガナイザーの一人として携わっているパーティ「Factory」の運営においては、これといった制限はないように感じています。開催場所のクラブにも協力してもらい、比較的自由にやらせてもらっています。AVV:制限は感じたりしないです。GiddlahSelecta:全く制限されてるようには自分ではないです。逆に良い音楽を見つめ直して、国内はもちろんの こと、海外にも発信していく気持ちが更に高まりました。KEITA KAWAKAMI:特に制限されているとは感じませんが、2011〜2013年に僕が大阪で体感したinnit、idlemoments、dressdown、affection…など他にも数多くのイベントやアーティストが自然と同じ方向を向いていた時の事を思い出すと、その流れは完全にリセットされていて、ここ3年ぐらいはそれぞれ個人で動いていた印象です。去年自分で主催しているdressdownを2年ぶりに開催しましたが、また1から流れを作っていく必要があるなと感じました。Toru Ikemoto:クラブの摘発は以前より厳しくなっていること、シーン全体の勢いも落ち閉店するクラブが多く場所の選定はとても難しいですが、クラブの楽しみ方はたくさんあるため、その魅力をきちんと伝えうまくやっていくことができていると思います。このような状況だからこそ音楽がとても好きなメンバーたちと協力していく必要性を学ぶことができています!YANMAH:大阪でもキタ、ミナミとエリアがあり、ミナミは東心斎橋、西心斎橋(アメ村)とさらにクラブのエリアは分かれているのですが、ぼくは西心斎橋(アメ村)を中心に活動しています。十代の頃から遊びに来ていますが、やはり客足が少なくなったと思います。その中で大きく経費をかけてゲストを呼んだり、PARTYを打つ事に関してリスクも大きくなり、むずかしくなったなと感じます。
- 3.今後大阪のクラブシーンはどのように変化していくとお考えですか。またその過程で大阪のクラブシーンはどのようにそれと関わっていくべきとお考えですか。
- AIDA:先鋭的であったり、挑戦的なサウンドを提示するパーティや、よい意味で大阪でしかできないようなパーティが今後も続いていけばいいなあと思います。そのような環境下で、世界に通用するアーティストがどんどん登場してほしいとも。それが結果的に大阪のクラブカルチャーを次代に継承することにつながると思うので、とにかく今は自分ができること、良いと思うものを提示し続けたいです。AVV:若い子が少ないのでもっとカッコいいって思われるように活動したいです。GiddlahSelecta:今後のクラブシーンは、アイデア重視で、面白い!!とクラバーや色々な人が思うものが提案されていくと僕は思います。 音楽も国産なものが増え、国産レーベルからのリリースも増え、世界へ発信していく。 そこで、面白い!!と思ったアイデアをクラブも出演者もメディアも一緒になって盛り上げていく ということが、大阪に関しては、更に上にいく重要なカギになるのではないでしょうか?KEITA KAWAKAMI:昔から仲の良い友達と毎日飲んだり遊んだりパーティー企画したりしていただけなので、全然偉そうな事は言えませんが…(笑) 去年は個人で動く限界みたいなのは本当に感じたので、また好きな人達で集まって面白い事をしていけたら良いなと思います。Toru Ikemoto:トレンドにはサイクルがあると考えていますので、必ずまたあのたくさんの人でフロアを埋め尽くし皆で両手をあげて歓喜できる時がきます。その際に自分たちがやりたいことを最大限表現できるよう今が準備の時だと捉え、毎回のイベントを大切にやっていきたいと思っています。またたくさんのクラブ閉店が続く中、オープンの話も幾つかあるため、その歓喜できる日はそう遠くはないと考えています。良いものは必ず人を動かします!!その信念をもって今後も取り組んでいきたいと思います!YANMAH:一般層や若い世代、外国人や来た事ない方にもっとクラブに遊びに来てもらえるようになればと思います。また地域の方々とのコミュニケーションや、モラルのある行動など、町全体との関わりが大事だと思います。アーティストと箱との協力も重要です。様々な音楽、カルチャーを楽しめる、色んな人の社交場、遊び場としてクラブを継続して、その状況に応じた変化にも対応しながらシーンを若い世代につなげていきたいです。
- ▶︎今回のインタビューを振り返ってみて
- まず、シーンの現状だが、この世代はクラブに行きだしたころには、すでに海外の有名DJが、毎週有名「音箱」でプレイするというのが、普通だった世代だけに、やはり2010年代初頭の風営法の取り締まり強化時は、底であったシーンを体感しており、それに比べると法改正が行われた現在は、状況は良くなっていると認識はしているものの、例えばGiddlahSelectaが指摘するように、現在の大阪のトレンドは、アンダーグラウンドな「音箱」ではないということ、そしてToru Ikemotoが指摘するインターネットを通してクラブ以外の遊びの選択肢が増えたことで、客足が以前より衰えたということ、さらにKEITA KAWAKAMIが指摘する海外の有名DJ来日イベントやリリースパーティー以外でのローカル陣によるレギュラーパーティーの減少、そして、AIDAが指摘するクラブの減少が、現実問題としてあるとしている。しかし、GiddlahSelecta、YANMAHがいうように、音箱のスタッフと連携しての新規イベントの立ち上げや、新しい世代も出現しているという現状を打破するような動きもあるという点は興味深い。また、現状での自身の活動に対しての制限を感じるかという点では、制限はないとするものと、多少なりとも制限を感じるという意見に分かれている。そしてそれは、例えば、Toru Ikemotoの、イベントを行うためのクラブを選定することが以前より難しくなっているという意見や、YANMAHの以前よりも客足が衰えたことによって大きく経費をかけてゲストを呼んだり、イベントを行うことに対するリスクが大きくなっているという意見、また、制限は感じないがと前置きをしながらも、KEITA KAWAKAMIの、2011〜2013年頃に、Seihoを中心としたDay Tripper Records周辺や、Metomeら、現在、国内外にもその名を轟かせる大阪のプロデューサー達を輩出したinnit、idlemoments、dressdown、affectionといったイベントのように、世代として”同じ方向を向いていた”ものがなくなり、集団としての結束なくして、個人で動くことが難しくなってきたという意見からも少なからず窺い知れる。また、InnitのオーガナイザーであったAVVが、大阪の現状に関して、若いトラックメイカーがいないと指摘した部分もこことリンクする部分だと思われる。しかし、その答えのひとつとして、先述の音箱スタッフによる新たな動きが起こりつつあるのも、大阪のアンダーグラウンドなクラブシーンにおけるポジティブな面の現状と言えるのではないだろうか?最後に、今後の大阪のシーンについては、イベントに遊びにくるクラバーが、面白いと思えるイベントを企画し、開催することが、重要で、そこから、次の世代の世界に通じるアーティストらを輩出していくという気概をもって、活動していくという考えなど、今の活動を大事にしながら、コンテンツの力を高めて、再びシーンに活況をもたらすことが大切だという意見が多かったのが印象的だった。これは、前回ベテラン勢としてその意見を紹介した沖野好洋(Kyoto Jazz Massive)の意見とも通じるところがあると思える。今回、その声を紹介したのは、DJ、プロデューサーとしてだけでなく、中規模の音箱でのイベントのオーガナイザーとしても現在活動するものが多く、今の大阪の「音箱」の現実を見続けてきている彼らだからこその意見ではないだろうか?次回は、ポスト風営法改正時代に、これまでとは違った独自の動きを見せるノマド型パーティーのオーガナイザーや、アンダーグラウンドの音箱でもさらにコアなジャンルに特化したイベントのオーガナイザー、そして、ネット時代の現地のプロデューサー達の意見を紹介するので、そちらも是非、楽しみにしていただきたい。▶︎大阪のクラブシーンの今と未来 -Pt.1・前編- はこちら。▶︎大阪のクラブシーンの今と未来 -Pt.1・後編- はこちら。
- 【DJ/プロデューサー・プロフィール紹介】(*A→Z順)
- AIDA(Factory)思春期の頃にテクノと出会って以来、電子音楽の奥深さに魅せられた一人。自身の根底にあるダークな世界観の下ストイックな地下テクノ、さらに一般的にはセットに入れにくい偏執的な曲をごく自然に選択することから、一部よりカルトな支持を得ている。自らが本当に見たいアーティストを厳選し、且つ、意外性のある組み合わせで新鮮な一夜を創る実験場“Copernicus”主宰。さらに、関西各地で活躍す る同年代のTechno/House DJ7人よりなるプロジェクト“Factory”の一員として、アクの強いパーティに積極的に出演中。http://factory-osaka.net/AVV大阪在住の宅録ミュージシャン、ビートメイカーであるクボマサユキのソロプロジェクト。Bass musicをベースに、Hiphop、Techno/HouseやIndie rockなど様々なジャンルを横断しつつも、メランコリックなコードワークやヴォーカルサンプルをブレンドした音世界が特徴。2010年7月には米、カリフォルニアのレーベルSomething Americaにて Magical MistakesとのスプリットEPをリリース、同年9月にはRefrain Recordsより1stフルアルバム[still beautiful]をリリースしている。2012年4月に、Seiho主宰の「Day Tripper Records」より、アルバム「E.Tender」をリリースし、「Sense Of Wonder 2011」、「Saturn」、「Sonar Sound Tokyo 2013」など大型イベントにも出演している。2016年には、And Vice Varsa改めAVVとして、16'til EPをリリース。https://twitter.com/AVV_musicGiddlahSelectaニュージーランド、日本(大阪)発ベースミュージックのプロデューサー兼DJ&MC。2015年に「BlackBird」をリリース、ロックバンドのリミックスや、DJ BAKU&DJ YO-HE¥ ”BACK BORN”のリミックス、メジャーアーティストのリミックス、アレンジなど手掛ける。ヒップホップ, レゲエ, ファンク&ソウルの要素をサイバーに詰め込んだ、独自のベースミュージックスタイルで、FUJI ROCKやWILD BUNCH Fest. 2016など野外フェスティバルにも出演。http://www.giddlahselecta.com/KEITA KAWAKAMI自身の主催イベント"DressDown"を始め、bootytuneとの共同主催juke/footworkイベント"SOMETHINN"など関西のレギュラーパーティーを中心に活動。レーベル"KOOL SWITCH WORKS"も運営しておりPicnicwomen , Azupubschool等のリリースも行っている。https://twitter.com/DDpharakamiToru Ikemoto2004年よりyotogiのdotaroとして活動を開始し、Techno名門レーベル Monoid RecordingsよりStart EPと002をリリースし、Hardtechno、Minimalhouseというジャンルにて可能性を発揮。 2009年6月よりToru Ikemotoとしてソロ活動を開始後、各国のレーベルよりリリースを重ねる中、”#CADFDF”においては、Richie Hawtinも数々のclubでPLAY。 また、2010年にはPlus Recordsのコンペティションにて入賞、2011年にはSven VathによるCocoon Recordings主催の、日独交流150周年記念コンペティションにおいても入賞。同年、オランダのミュージックオンラインマガジンにて期待の新星としてインタビューを受ける。2013年12月スペインのBlum Recordingsよりリリースされた”InariEP”については、Marco Carolaからもサポートされ、2015年にはEnterレジデントのAlex UnderのレーベルであるCMYKmusikよりオリジナルトラックのリリース。2014年には気鋭のJapanes Artistのみで構成されたLabel ”SPECTRA”を始動し、First ReleaseはRichie Hawtin、Paco Osuna、Marco Carolaなどのサポートを受ける。その後もリリース活動を行うなか、Richie Hawtin, Joseph Capriati, Bryan Brack, Alex Bau, Moonbeamなど世界中のトップアーティストが彼の曲をPLAY。http://toruikemoto.com/https://www.beatport.com/artist/toru-ikemoto/136445https://soundcloud.com/toruikemotoYANMAH (T.F.C) DRUM&BASS DJ。JUMP UP、RAGGA JUNGLEメインにアッパーな選曲とMIX、ガンジャチューンを好む、現場主義のVINYL PLAYER!!!!!大阪を中心にCLUB、LIVE HOUSE、野外など様々なPARTYに出演し、国内外問わず数々のアーティストと共演、リンクしている。自身でもアメ村TRIANGLEにて、『TRIPPIN FACTORY』を主宰、DRUM&BASSを中心に様々なアーティストをゲストに迎え隔月で開催している!!!!!音楽、ARTなどストリートなカルチャーと関連して日々おもろい事を探求し、大阪CLUBシーンにおいては中核を担う1人。https://www.facebook.com/messages/t/1316204938https://twitter.com/YANMAH_http://www.trippin-factory.com