12月13日(金)にSHIBUYA STREAM Hallにて、MUTEK.JP 2019 3日目のプログラムのうちのひとつ、Nocturne 3が行われた。この日、一番の輝きを放っていたアーティストといえば、日本が世界に誇る、フィールドレコーディングを駆使し、独創的な音楽をクリエイトする唯一無二のサウンドデザイナーであるYosi Horikawaだ。
Yosi Horikawaといえば、今年はRed Bull Music Festival Tokyo 2019のプログラムとして行われた東京・浜離宮恩賜庭園での「花紅柳緑」出演をはじめ、7月の自身が設計を手がけたスピーカーが設計された東京・八丁堀のSound & Bar HOWLの周年パーティ、そして、2013年の『Vapor』リリース以来のアルバム『Spaces』を引っさげ、8月に行った大阪、東京でのリリースツアーなど、例年に比べて、東京都内でも多くライヴパフォーマンスを披露してきたがこの日のセットは、それらを含めて今年ベストといえる、圧倒的なライヴパフォーマンスだったように思える。
そんなライヴでは最初、自身の代名詞といえるフィールドレコーディングによって作られた音素材のノンビート曲から始まり、2曲目はアップリフティングな未発表新曲を披露。今年、Yosi Horikawaが都内に披露したライヴをおそらく全て観ているであろう筆者からしても、序盤の段階で今日の構成はいつもとは一味違うと思わされる飛ばしたセットになっていたのが印象的だった。
その証拠に体感的にもいつもより、プレイする曲のテンポも速く感じられ、エナジーフルに進んでいくそのセットでは、最新アルバム『Spaces』の曲も数多く披露されていたが、序盤からの中盤にかけては本当にフェス仕様とでもいうのだろうか、音がスピーカーから発信されるたびに、会場に集まった観客たちの身体を激しく揺さぶっていく踊れるセットになっていた。
中盤以降では彼の独創的なテクスチャーで構成される曲も披露され、いつもの心地よい音、そしてフィールドレコーディングされた音素材によるオーガニックなテイストも思う存分発揮されており、従来のファンにとっても納得のいく”らしさ”を感じる内容になっていたことは間違いない。ただ、MUTEK.JPというフェス自体に魅力を感じ、これまでYosi Horikawaの存在を知らなかったという人が今回のライヴで初めてその音楽を聴いたとしても、やはりその独特の音世界の深遠さに触れることができたはずだろう。
また今回のライヴでも彼のライヴでは鉄板となっている先述の『Spaces』収録曲で、トライバルな歌サンプルが印象的なビート曲「Nubia」からYosi Horikawa流のテックハウスともいえるダンサブルな「Crossing」へと繋がるコンビネーションの流れは十分に機能しており、会場を歓喜させていた。その証拠にライヴ終了後にはどこからともなく彼のパフォーマンスを賞賛する大きな拍手がしばらく止むことはなかった。
これまでにカナダでの本家MUTEKをはじめ、イギリス最高峰のフェスである「Glastonbury Festival」やGilles Petersonが主宰する南仏最大級の音楽祭「Worldwide Festival」、バルセロナの「Sónar」といった世界的に知られる大型イベントでも出演のたびにその存在感を見せつけてきたYosi Horikawa。今回のMUTEK.JPの舞台でもその実績に違わぬワールドクラスのパフォーマンスを存分に披露していたことが強く記憶に残った。
またこの日は、先鋭的な映像とともにオーディオビジュアルライヴを行った人気プロデューサー/ビートメイカーのSeihoのパフォーマンスのインパクトも大きく会場の話題をさらった。
そして、当日のトリを飾ったKuniyuki x Soichi Terada x Sauce81の3組によるスペシャルユニットによるマシーンを駆使したパフォーマンスも観客たちを盛り上げた。特にそのセットでは海外での日本のクラシックハウス再評価のきっかけとなったSoichi Terada代表曲が何曲か披露されており、それに日本だけでなく海外のオーディエンスが反応している様子が印象的だった。
written by Jun Fukunaga
photo: MUTEK.JP