映像だけでなく音楽センスも抜群のドラマ「Mr. Robot(ミスター・ロボット)」

「Mr. Robot(ミスター・ロボット)」はこんなドラマ
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2018.06.30 14:03

「Mr. Robot(ミスター・ロボット)」はこんなドラマ


ミスター・ロボットは貧富の格差が拡大した不公平な世の中を、その構造から破壊しようとする天才ハッカー、エリオット・オルダーソンを主人公としたドラマだ。リアルなハッキングの様子を描いた映像とハイセンスな音楽が注目を集めている、ゴールデン・グローブ賞テレビ部門作品賞受賞作品である。


ドラマを盛り上げる心地よいサウンドトラック


ミスター・ロボットが人気のドラマとなったのは、現代のネット社会にとっての脅威であるハッキングという世界を舞台にしたことに大きな要因がある。主人公たちが企業や警察のネットワークに侵入する際には、SNSやネットバンキングなど我々の身近にあるネットのアイテムも登場し、その描写はとてもリアルだ。その独特の舞台設定と共に、ミスター・ロボットの人気を高めたものに、劇中に流れる音楽がある。エリオットがパソコンを使って天才的な手口で政府や巨大企業のシステムに侵入するシーンなど、ドラマが最高潮に盛り上がる時に流れるサウンドトラック「1.0_8-whatsyourask.m4p」は、この作品のタイトルテーマといっても良いくらいシンボリックで印象的な音楽だ。


この他にもマック・クエイルが手がけたこのドラマのサウンドトラックには、各シーンに合った様々な雰囲気の曲がおさめられている。主人公のエリオットは社会不安障害を患っていて社交性に乏しく、自分の周囲にいる黒スーツの男たちをFBIの職員と決めつけるなど、現実を自分の妄想で塗り替えてしまうという癖がある。主に、そんな彼の一人語りで展開されるこのドラマには、現実と幻想が複雑に混合された映像が間断なく流れていく。それを違和感なく魅力的に見せ続ける役割も、マック・クエイルの繊細で独創的なサウンドが果たしている。



ストーリーに違和感なく融合する挿入曲たち


オリジナルのサウンドトラックの他に、ポピュラーなヒット曲たちが効果的に使われているのもミスター・ロボットというドラマの人気を高めている理由だ。これが、その音楽を使うべきシーンとタイミングをよく計算して使われているところがファンの間でも高評価を得ている。エリオットが刑務所に入れられた自分の生活を「自分は規則正しい生活をしている」という妄想で現実逃避しているシーンでは、I Monster(アイ・モンスター)の「Daydream in Blue」が流れる。皿洗い、バスケットボールの観戦、日記をつけるといった規則正しい生活を送る主人公の描写を、テンポよく見せることに成功している。



エリオットの妹ダーリーンがFBIをハッキングするシーンでは、ホテルのカードキーをスキミングしたり、監視カメラのネットワークを乗っ取ったりという大胆な彼女の行動のバックに、The Suffers(ザ・サーファーズ)の「Gwan」が流れる。アップテンポでパンチのきいたこの曲が、ハッキングという反社会的な行為をクールに楽しんでいる彼女の気持ちを強く表現している。



アップテンボな曲ばかりではなく、しっとりと静かにシーンを演出するためにスローなナンバーが使われていることもある。エリオットの幼馴染アンジェラがカラオケで歌うTears for Fears(ティアーズ・フォー・フィアーズ)の「Everybody Wants To Rule The World」などがそれだ。常に社会的弱者の立場に置かれているアンジェラだったが、本当は自分も世界を支配できるくらい強くなりたいと思うこともある。そんな彼女の心の奥底にある秘かな想いが静かに伝わって来る良い演出である。



また、海外ドラマが好きなファンすべてに向けた遊び心あふれる演出として音楽が使われているのもミスター・ロボットの魅力だ。エリオットと刑務所で一緒に服役していたレオンは、ふだんは海外ドラマ好きで、見終わった作品の感想ばかり話している陽気な男だが、実はナイフの名人という危険人物だ。このレオンが、「自分の頭の中ですぐに流れ出す曲」と話しながら車を運転するオープニングに、タイトルテーマのように使われているのが往年の名作ドラマ「ナイトライダー」のテーマだ。流すタイミングもオリジナルの「ナイトライダー」と同様にミスター・ロボットのタイトルが表示されるところで使用している。


こうした幅広いファン層に向けて、映像だけではなくいろいろな音楽でも楽しませてくれるのがドラマ、ミスター・ロボットだ。


photo: https://www.facebook.com/pg/WhoIsMrRobot/photos/?ref=page_internal


written by 編集部

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