サンプラーの名機「MPC」で知られるAKAI Professionalが、MPC One、MPC Live II、MPC XなどスタンドアローンMPCシリーズに搭載されるファームウェアをアップデートしたことを発表した。
今回のファームウェアアップデートでは、Air Music Tech社製ボーカル用インサートエフェクト・コレクションを新たに追加。現代的なボーカル制作のためのプラグイン「AIR Vocal Tuner」ほか、ボーカルトラックに立体感と厚みを与え、存在感のあるサウンドを実現する「AIR Vocal Doubler」、深みのあるレイヤード・ボーカル・ハーモニーを瞬時に作成できる「AIR Vocal Harmonizer」などのプラグインが搭載された。
MPC 2.10の盛りだくさんのアップデートの中でもまず注目すべきは、MPC単体で利用できる専用のボーカル用プラグインのセットAIR Vocal Suite。この中に含まれるAIR Vocal Tunerはボーカルトラックのピッチを強力に補正する、スタンドアローンMPC初のボーカルチューナーFXとなっており、音程の微妙な調整やオートチューンサウンド作成などが可能になる。
このほか、AIR Vocal Harmonizerプラグインは、メインのボーカルトラックにハーモニーを追加し、ハモったような音声を追加できる。
ボーカルやラップはMPC単体ではやらないという方も、ビート制作において声ネタにオートチューンをかけて使ったり、音声にHarmonizerをかけて作ったコードをサンプルとして利用するなど、ビート制作専用として使っている場合も使えるプラグインとなっている。
例えばTrap SoulやFuture Bassなどのジャンルではこう言った声ネタ加工は必須のテクニックなので、MPC単体でできるサウンドの幅がさらに広がりそうだ。
AIR Hypeプラグインは使い勝手のいいマルチ音源としてこれまでAKAI Forceでしか使用できなかったが、今回のアップデートでMPCシリーズに追加される。ピアノ、アナログ・シンセ、ウェーブテーブル・パッド、リード、FM音源など、1500以上のプリセットが搭載されており幅広いサウンドを利用できる。
AIR Mellotronはその名の通りテープを利用したローファイなキーボードMellotronを再現したシンセエンジンで、まさに今欲しいサウンドを提供してくれる。
AIR Solinaは有名なヴィンテージシンセSolinaの再現。ストリングス・シンセといえばこちらという方も多いだろう。
なおAIR MellotronとAIR Solinaには、新しいAIR Flavorエフェクトパネルが内蔵されており、ラジオや電話のシミュレーション、ディストーション、テープフラッターなど、すべてのシンセサウンドにさまざまなLo-Fiテクスチャを加えられる。
WayOutWare Odysseyはアナログシンセサイザーの名機Arp Odysseyを忠実に再現したシンセエンジンで、回路モデリングによるオシレーターとフィルターにより特徴的なサウンドが再現されている。
さらに7種類のAIR Music Tech製インサートエフェクト、10種類のドラムパッド・エフェクトが追加に。
追加されたエフェクトはハーフスピード、スタッター、ダイオードクリッパー、AIRディフューザー ディレイ、グラニュレーター、サンプルディレイ、AIRリミッター。サウンドクリエイションの即戦力として活躍してくれるだろう。
MPC v2.10へのアップデートに伴い、クラス・コンプライアントUSBオーディオ・インターフェースにも対応。スタンドアローンMPCと互換性のあるオーディオ・インターフェースを接続することでMPC Oneでより多くのトラックを録音したり、MPC Live IIやMPC Xの出力を拡張して外部アナログデバイスにオーディオをルーティングすることなどが、USBケーブル1本で可能になっている。
MPCがハードウェアとして完全なDAWに近づくような驚くべき進化だ。盛りだくさんのアップデート内容はこちらの動画でも詳しく解説されている。
スタンドアローンMPCでのよりパワフルでクリエイティブな音楽制作を実現させる最新のファームウェアのダウンロードは、AKAI Professionalの公式サイトにて。
written by Jun Fukunaga
Additional contributions Yui Tamura
source: https://www.dreamnews.jp/press/0000240782/
photo: AKAI Professional