毎週木曜日夜9時、block.fmで生配信中される、国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんの番組『Morley Robertson Show』。今回の番組では高野政所さんをゲストに迎え、ピエール瀧さん逮捕、そして元号が「令和」に変わったことによって日本社会に生じた空気の変化について話していました。
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生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30
モーリー:こんばんは。モーリー・ロバートソンです。みなさん、令和あけましておめでとうございます。で、もう早速なんですけども、令和に入るとですね、ちょっと日本社会独特というか、元号が変わる時に少しお祭り気分になる部分がありまして。私も早速昨日、セレブお呼ばれパーティーっていうのに行ったんですね。会費が1万円という、そういうセレブのレベルです。で、「みんな、白いものを着てこよう」というので、本当に白い上下をあしらえて、靴も白いので行ったところ、ちゃんとそのパーティーのスピリットにうまくはまりまして。
で、行ったところが令和になって気が付いたんだけど、みんな元号をまたぐことで、ある種の記憶のロンダリングが進むんですよね。で、これをまたの名を「恩赦効果」って私は呼んでいるんですけども。自分のいろいろな過去のあった紆余曲折が恩赦されてしまってるようで。いまや、お年寄りとちびっこを中心に、自分が人気者だ。「あっ、人気者がパーティーに来た!」という認識で「おおう!」とかってみんなが迎えてくれるんですよ。で、挙句の果てには野球少年みたいな人がスケッチブックをバッと持ってきて「サインしてください」って言うので。じゃあ「令和」って書こうとして思わず「冷」って書いてしまって(笑)。
高野政所:フフフ、危ない!
モーリー:「冷」って書いて、「これは出回るとマズいな」っていうので「冫」を「令」を伸ばすことでごまかすみたいな、すごいことをやっちゃったんですね。で、今日はもう最初の笑い声でお分かりの通り、高野政所さんをとうとうblock.fmにお招きしました。イエーイ!
高野政所:どうも、こんばんは。高野政所でございます!
モーリー:今日はね、政所さんにとことんお話を聞き、そして政所さんがスペシャリストとして日本に紹介し続けているファンコット。これも聞いていきたいと思います。まずは私の営業。令和一発目でみなさん、聞いてください。モーリーの新曲です。ビートポート、iTunesなどなどで買えます。これを購入するという気持ちで聞いてください。『THE ONE FOR ME』、モーリーの新曲です。
Morley Robertson『THE ONE FOR ME』
モーリー:はい。モーリー・ロバートソンの新曲『THE ONE FOR ME』でした。この続き、全曲バージョンはですね、政所さんもオーガナイズしている今週末のパーティーでお聞かせしようと思います。さて、早速スタジオに高野政所さんをお呼びしてるんですが……どうっすか?
高野政所:「どうっすか?」(笑)。いろいろありますけど……(笑)。
モーリー:令和。恩赦ブーム!(笑)
高野政所:恩赦ブームですか? まあ、恩赦ブームなのか前科者需要なのか分からないですけど、ピエール瀧さん逮捕以降、ちょっとコメントを求められたりとか、記事を書いてくれとか、トークイベントでお話しする機会がありまして。やっぱり経験しといて悪いことはないんだなっていうか。
モーリー:あのね、『Morley Robertson Show』を聞いてる人は高野政所さんを好きだったりファンだったりっていう人も多いんですけど。実はモーリーの裾野の広がりとモーリー自身の漂白、ロンダリング、ホワイトウォッシュが進んだために、「高野政所さんって誰だ?」っていう人がいるんですよ。
高野政所:もちろんそうでしょうね。
モーリー:ちなみにこの番組、いまストリーミング、映像でも流していますので。よろしかったら「#blockfm」でリンクをご確認ください。それで政所さんの……僕にとっては「アシッドパンダカフェをやっていた人。ファンコットを日本にもたらした人」っていうイメージが強いんですけども。まったくの初心者にとっても短く自分を紹介するとしたら、なんだろう?
高野政所:なんだろう? シール屋? 違うかな?(笑)。
モーリー:そうだね。いま、原宿のコンドマニアの前でシール屋やってますよね。
高野政所:シール屋をいま、シノギにしているですけども。一応僕はDJ、トラックメイカーっていうのが基本で。2011年から14年までTBSラジオでパーソナリティーをやって、おしゃべりをさせてもらったりとか。あとはインドネシアのローカルミュージック、ファンコットっていうとんでもない早い音楽があるんですけども。それを日本に持ってきたおじさん。それで10年間、渋谷の道玄坂でアシッドパンダカフェというクラブをやっていたんですけども……もうすでにこれで情報があふれて、よくわかんない人だと思いますけども。
モーリー:まあ「アシパン」と呼ばれていたアシッドパンダカフェは結構そういう通や文化人の間ではよく知られていた名前で。そこに行くと、やっぱりちょっと尖った人。キレッキレの人。最先端の人もいて。僕は映画評論家の高橋ヨシキさんに「絶対に行かなきゃダメだ」って言われていた矢先、ある事件が起きたんですよ。
高野政所:フフフ(笑)。それがね、2015年3月3日ですね。ひな祭りの日。渋谷区道玄坂の路上にてDJの高野勝己容疑者(38)が大麻所持容疑で逮捕されたというのがありまして。
モーリー:フハハハハハハッ!
高野政所:それでアシッドパンダカフェというお店はなくなり、1年間の活動自粛生活に……ああ、そうだ。俺は逮捕される前の2015年にメジャーデビューをしていたんですよ。ユニバーサル・ミュージックからアルバムを出していて。「これから売るぞ!」っていう時にパクられるっていう。
モーリー:それでその時のユニバーサルの対応は?
高野政所:対応は出荷停止でございます。
モーリー:ああーっ、ソニーミュージックと同じや!(笑)
高野政所:「作品に罪はあるのか?」問題みたいな。そこも来まして。
モーリー:だから『アベンジャーズ』の予告編みたいな。先の、プリクエルですよ。アナキンが小さい頃……みたいなシリーズですよね。そうか。そして今回、『帝国の逆襲』にあたるピエールさんの事件が起きて。そしてもうひとつ、高野さんがそういう本を書いたんだよね? 『前科おじさん』っていう。
高野政所:はい。獄中記じゃないですけども。一応僕、留置場というところに23日間いたんですけども。中では反省以外にすることがないので。中ではオレオレ詐欺のめちゃくちゃトップの人と、指が2本ない現役のおじさんと、あとはドン・キホーテで万引きしたベトナム人の4人で入っていたんですよね。
で、いろいろな人がいるから、いろんな話が聞けるし。それでまあ、お金を払っても泊まれない合宿所みたいなもんですから。毎日新しい体験をするから、それをずっとメモってたんですよね。それで出てきた時にそのメモを読んでもらったら「これ、すごい面白いから本にした方がいいよ」っていうことで。まあ、最初からネタにしようとは思っていなかったんですけど、それが功を奏したというか。『前科おじさん』という本になりました。
モーリー:だから『前科おじさん』というのはいろいろとそういう社会問題に興味を持っている人も含めて、ぜひ読んでほしい本なんですけども。そういう本が出ていて。僕も政所さんに紹介していただいた不動前のTRIOっていうDJバーで何回か一緒にイベントをさせてもらって。それでそういうことが続いている中、ごく最近のピエール瀧さんがコカインで捕まった。そしてそのピエール瀧さんが留置場でどうだったのか?っていうのは本人の口からは言わないから知るよしもないという、その流れ弾のように政所さんに対する需要が出てきたんですか?
高野政所:そうですね。もともと僕、音楽を始めるきっかけも電気グルーヴだったんで。もう超偉大なゴッドなわけですよ。僕にとっては。もう中学、高校時代、電気グルーヴが大好きで。それで僕はもともとテクノをやっていたわけですけども。そして電気グルーヴってラジオもやっていたじゃないですか。僕らの時代は『オールナイトニッポン』が本当にバイブルのようで本当に洗脳をされ続けていたということで。本当に崇めていた人で。僕もそうなりたい。「電気みたいになりたい!」って思ってずっと生きてきたんですよ。
モーリー:はー!
高野政所:で、一応DJもやって、音楽も作って、ラジオもやって……。
モーリー:接点、多いっすね。
高野政所:というか、僕のやっていること……日本にテクノが広まったのって電気グルーヴの功績がデカいと思うんですよ。いわゆるヨーロッパとかアメリカのダンスフロア向けのテクノっていうものを。で、そういう、言わば第一人者の1人じゃないですか。テクノのDJ的な。で、僕もそのファンコットというインドネシアのハウスミュージックっていうのを持ってきていて。やっていることをよく考えたら、本当に俺は電気グルーヴの縮小再生産しかやってきてないなって。
モーリー:マトリョーシカ人形だ!
高野政所:そう。しかし! それがですよ、逮捕だけは俺の方が早かったっていう。そこだけは!
モーリー:おっ、逮捕先輩。やった!
高野政所:そこだけ、先輩になれたっていう(笑)。
モーリー:そこで、ピエールさんにまつわる報道がまあ、いまだもってスポーツ新聞はまだ食いついていて。「ちゃんと反省をしているのかどうか?」問題みたいな。まあ、だんだんネット上では「笑止千万!」ということで、完全に軍配は――ネットに世論は反映されているのか?っていう問題もあるんですけども――ネットを見る限りはもう、ちょっといわゆる旧態然としたバイキングであるとか、いろんなテレビのワイドショーおよびスポーツ新聞、芸能メディアがもう完全に時代遅れになっていて。
「なにを言っているんだ? 『反省の色を見せる』ということではなくて、いかにリハビリをして、いかに表現活動に復帰をして、収入を得ることの方が社会的信頼ではないのか?」っていう風に。ファンの人だけじゃなくて、多くのが人がそっちにいま傾きつつあり。そのやじろべえが傾くのは、実は何を隠そう私も応援をしているわけですよ。
高野政所:はいはいはい。
モーリー:だからそういう状態の2人がいま、出ています。どうです? これから先、どうなっていきそうですか?
高野政所:どうなっていくんでしょうね? 本当、瀧さんの逮捕以降からいわゆる薬物、大麻周りとかもそうですけども。まあグワーッと動き出して、ドミノが倒れるようにいろんなことが起きているじゃないですか。でもやっぱり、逮捕されたから大麻のことってすごい僕も気になって。ずっとまあ、追っているんですよ。もちろんモーリーさんも……。
モーリー:そうですね。私も追っているわけですけども。
高野政所:それで僕も調べたりするんですけども。ここのところ、本当に昔は「大麻」ってTwitterとかで言っただけで叩かれていたのに。僕、逆に大麻のことを世間を慮ってちょっと言わないようにしていた時期すらあったんですけど。それで今回、瀧さんの逮捕も最初はコカインが報じられて、「コカインか……」って思ったんですが、「大麻も吸っていた」っていうのを。なぜか「20代から大麻を吸っていた」っていうのを、言う必要もないのに警察に言っていて(笑)。
モーリー:フフフ、ネタを提供したんでしょうね? エンターテイメント精神。
高野政所:ネタを提供したのかなんだかわかんないですけど。そこがちょっと理解不可能だったんですけども。なぜか僕はそこに触発されてしまいまして。僕、逮捕された時も本にも「大麻をいつから吸っていたのか?」っていうのは一切書いていなかったんですよ。それは心証が悪くなるっていうのもあるじゃないですか。検察官とかの。だけど、もう瀧さんが言ったからには、俺はもう執行猶予期間も終わって別に警察もあれなのに、なにを世間の目にビビっているんだ?っていう風に自分に喝を入れ直して、WEB SPA!に「俺も20代から吸ってました」っていうのを正直に書いてしまって(笑)。
モーリー:強者!(笑)。
高野政所:言ってよかったのかどうかわからなかったですけど。それから、それなりにそれが話題になって。「政所の野郎! あいつ20代からやってたのか!」というので、めちゃくちゃに叩かれるのかと思っていたら、フォロワーが2000人ぐらいそれ以降に増えまして。なんだよ……っていう。
モーリー:だから令和だよ、令和! やっぱり、これからワイドショーは辛くなっていくと思う。ワイドショーを作っている現場の人って本当に見失っている傾向にあって。僕もワイドショーじゃないんですけど、バラエティー系の番組で最近、テレビの露出を増やしているとわかるのは、制作側が世の中の流れや意識の変化というものを読み取れておらず、これまでのテレビのツボだけでやろうとしているんですよ。なんで、やればやるほど乖離をしていくわけですよね。だから世の中が変わっていることをテレビを流している側は理解をせず、そのテレビが形骸化していることをなお、ヒリヒリとテレビ以外のところで生活している人、ネットを見ている人とかはわかるようになっていくという。
高野政所:はいはい。
モーリー:で、最新情報をひとつ、私が突っ込んでおきますと、アメリカの地方ではもう大麻の合法化がほぼ既定路線になりつつあるんですね。で、それに対してやれ、「大麻を吸って車を運転したらどうなるんだ?」とか、そういう日本でいくらでも百通りぐらい出てくるような反論というものが、すでに出尽くしてしまったの。
で、(すでに合法化している)コロラド州とかカリフォルニア州、ワシントン州、みんなまずまずの成功例なわけですよ。そしてなによりも税収があるということで、どこの州もむしろやらないといけない。そんな中でいま、争点になっているのはある州のニュースでその大麻の合法化は当たり前にするんだけども、さかのぼって4、5年分の前科。いわゆる逮捕歴を抹消するかどうかをその州議会の法案に盛り込むかどうかでモメていて。
保守的な政治家は「いや、だからと言って一昨日まで法律で禁じられていたことが原因で留置場体験がある人の記録を抹消するというのは、そんなにその人の前科を簡単に消してしまっていいのか?」というような人と、「いや、法律が悪法だったんだからさかのぼって5年分は『ご迷惑をかけました』と謝るぐらいすべきなんじゃないか?」っていう進歩派がいまモメていて。それをいま、揉んでいるんですよ。その結論、落とし所が決まればもう法律はスルッと通るだろうって。
高野政所:なるほど。反対しているやつはたぶん大麻吸ったことがないやつですよね?
モーリー:でもたぶん議論をしている両側で大麻吸ったことのあるやつがいるっていう。
高野政所:ああ、いるんだ? それでも「犯罪歴は消すな!」って言っているやつがいるんですか?
モーリー:あとはね、ちょっとこれはアメリカの政治の複雑さになっていて。共和党っていうのは公序良俗を言いたてることで組織票が期待できるんですね。だから、州の民意としては大麻の合法化を得たいからそっちにも媚びたい。だけど自分の支持層にはキリスト教右派みたいにやたら道徳系の宗教団体がいたりするから。その人たちにもちゃんと目配せをして。「ウチら、譲ってませんよ」みたいな。そういう本当にね、大人の取引でしかないんですよ。つまり「大麻がいいか悪いか」っていう議論はほぼ終了してしまったということなんですよね。
高野政所:ああ、もう終わっているんですね。なるほど。
モーリー:そう。それで令和になってね、別に「令和」っていうのは僕にとっては何の意味もない……あ、こんなこと言っていいのかな? 今朝、即位された天皇・皇后両陛下について結構冷静ながらもヨイショ発言をしてて。というか、ヨイショしないとマズいって。そういう求められていることはやっているし、キャラ設定にも違わずにやってるんですけども。ただ、やっぱり見ていると「だから、なに?」って。それは、それによってね、いままで大麻が全くダメだったのが、コカインですら議論ができるんだから、大麻ぐらい合法化しても……医療大麻ぐらいだったらいいだろうとかっていまなら言えそうな気配、ありますよね?
高野政所:気配はありますよね(笑)。
モーリー:これが日本社会の恐ろしいところ。忍法手のひら返しですよ。
高野政所:フフフ、元号が変わるだけで、なんかいいような気がするっていう。
モーリー:それ、シャーマニズムだから。卑弥呼だよ、それ。卑弥呼がなんか、三種の神器の八咫鏡(やたのかがみ)。あれを卑弥呼がピカッと見せただけでみんなが「うおおおーっ!」って急に戦争をやめたみたいな。なんかそれぐらいアニミスティックなんですよ。元号が変わっても何も変わっていないよ? 変わっていないんだけど、みんな「変わった」と思っている。
高野政所:気持ちが(笑)。
モーリー:お正月に全部下着も何もかも古いのを捨てて買い替えたりとか。
高野政所:はいはい。だって年越しそばみたいなのを食っているやつとかいましたもんね。急にやっぱり……俺も自分を「日本人だな」って思ったのは、なんか昼間とか「ちょっと贅沢しちゃおう!」って焼き肉を食ったりしましたよ。俺も。
モーリー:うわっ、恐ろしい……。まあ、こんな感じで今日はやっていきたんですけども。とにかくこの政所さんの饒舌さとお話のつなぎのDJ並の上手さ。あのね、TBSの番組を持つべき。これが最初の印象。政所アワーをやるべき。それで俺が休みの時はもう代わりにこの番組、やって!
高野政所:フハハハハハハッ!
モーリー:という気がします。それぐらい素晴らしい人材です。
トークの続きはこちら。
▶モーリーと高野政所、日本社会の「反省の色」問題を語る。罪を犯した人は笑顔を見せてはいけないのか?
番組情報
「Morley Robertson Show」
生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30
モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。
written by みやーんZZ