モーリー・ロバートソン、移民受け入れに怒る日本人とヒップホップの因果関係を語る

なぜTwitterやFacebookで移民問題になると、日本人は怒り出すのか?モーリー・ロバートソンが実態を探る
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2018.09.12 19:58

毎週木曜日夜9時、block.fmで生配信中される、国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんの番組の『Morley Robertson Show』。今回の番組では、大麻や移民問題に反論する最近の日本人について語ります。


毎週モーリー・ロバートソンのラジオが聴ける番組は、こちらをチェック。


「Morley Robertson Show」

生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30


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モーリー:まあ、「大麻を合法化させてどうするんだ?」っていう反論がネットのTwitterで来るためにエゴサをしなくても「大麻を合法化しろよ。したらいいんだよ!」ってちょっとチラつかせるんですね。すると、「ウオーッ!」って主に保守系の人たちがなんか「欧米の基準で!日本はどうのこうの……」って言うんで。その都度ですね「国連では……欧米では……」っていうツイートをするんですよ。



「欧米では……」って大きく書いておくと、「なんで『欧米では』って言うんだ!」って。それでその人にまたリプを飛ばして。「ちょっといい? もう1回言うからちゃんと読んだね。『欧米では』大麻はOKなんですよ」って。そうするとなんかね、真面目に怒ってくれるんですよ。


「国際主義者!」とか「グローバリスト!」とかって言って。そりゃあそうだよね。ヒラリー・クリントン押しの反トランプ、反日、外国人参政権、大麻、夫婦別姓、野田聖子、石破茂とかってキーワードをハッシュタグで並べておいて。


なぜ「移民が来る」って恐怖心を持つか?


あとは「安倍政権を許さない」って書いても反応してくれるし。あとは「自民党感じ悪いよね」って……実はこれ、石破茂さんの言葉だったらしいんですよね。これをこの前、スカパー!でインタビューしてはじめて知ったんだけど。しばらく左系のアカウントの間で何年か前に「自民党感じ悪いよね」っていうのがすごい流行っていたんですよ。



どっからきたんだろう?って思ったら、実は石破さんが内部で言った言葉をそのまま野党の人たちがキーワードにしてTwitterで広げていったんで、「そんなネタ元を出した石破さんはやっぱり裏切り者だ! 背中から首相を撃つ行為じゃないか!」みたいに、右系の人たちにはそういう風に映っているわけですよ。


そういう石破さんに関する面白半分もあるんだけど、やっぱり「大麻」に加えて「移民」って言うと、やっぱりこれもですね、日本で右ボタンをものすごい連打してくれるわけ。で、なんでこんなに「移民が来る」っていうことにそんなに恐怖心を持ってるのか? 


白人がマイノリティーになって黒人が支配した時が怖いだろう


昔、パブリック・エナミーっていうグループが出したヒットアルバムの中で『Fear of a Black Planet』っていうのがあったのね。




「黒人の惑星への恐怖」っていう面白い。間接的に「誰の”Fear”か?」って言ったら白人なんですよ。「黒人の方がそのうち数が増えていって、白人たちがマイノリティーになった時、黒人の支配になる。いままで自分たちが支配していた黒人と立場が逆になった時が怖いんだろう? 因果応報だぞ!」みたいな。


そういう含みのあるちょっと過激な黒人活動家っぽい『Fear of a Black Planet』っていうタイトルが、実は白人のちょっとワルなやつらが「イエーイ! 俺は黒人のワルだぜ! 顔は白いけどよ!」みたいな。


そのカルチャーから、エミネムみたいなスターも出てくるんだよね。だから非常に面白くて。ヒップホップってもともと黒人の白人に対する階層的な……下層階級に追い込まれて経済的なチャンスや社会的チャンスもなく、警察からも虐待される黒人の怒りの叫びだったラップっていうものが、いつしかファッションでキッチュなものになって。白人のファッションへと化けていくんですよ。商業主義を通じて。


まあ、それは「セルアウト」とか、いろんな言い方をされるんだけども。そこはヒップホップのビッグビジネス化で面白いところですよね。



だからヒップホップっていうのは結局、クロアチアでもクロアチア語のヒップホップがあり、中国でもそれがあって。今度、中国政府がラップを禁止とか、まあいろいろと面白い側面があるんですけども。


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移民を500万人入れろと言うと本気で起こる人がいる


『Fear of a Black Planet』の頃の白人たちが「こういうアルバムはいけない!」って。80年代に映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』が出た時に、「ああいう映画は白人を批判しすぎるからハリウッドは作っちゃダメなんだ!」みたいな。それをスパイク・リーは思いっきりやったんですよ。



それと同じぐらい今、「日本に移民を300万人入れろ!」「500万人入れろ!」って言うと、本気で怒る人がいて。ちょっと面白くてしょうがないっていうか。


想像できていないわけじゃん。日本って移民も難民もほとんど入れてないわけで。だから研修生(技能実習生)っていう適当なダブルスタンダードで入れているだけだから、本当の移民が定着したサンフランシスコのチャイナタウン状態だったり、ブラジリアンタウンとか、そういう経験がないんですよ。


しいて言うならば、朝鮮半島と満州を持っていた時期の大日本帝国だったらそれは多民族国家だったかもしれない。台湾も入れると。だけど、それはまあ侵略だったわけで、日本の中に西ドイツのガストアルバイターですよね。


ドイツにトルコ人がだんだんと住んでいったように、そういうゲストワーカーをお招きして。それで(働く期間が終わったら国に)帰ってくれるはずだったのが帰ってくれなくて親族もやってきて。


イギリスやドイツのようなパターンを想像して言っているんだけども。でも、ヨーロッパに旅行もしたことがない状態で「ドイツはうまくいっていない」とか「イギリスの移民政策は失敗した」っていう自明の結論から、多くの人は論を展開するわけですよ。それが面白くてしょうがなくて。「やっぱり移民、いいですよ。安倍さんだって移民を入れるって骨太方針で言ってますよ!」って言うと、その時は「うぐぐ……」「ぐぬぬ……」になるわけですよ。



自分が大好きな右派安倍政権が、なぜか自分がいちばん嫌いな外国人。特にアジアの移民を……結局、中国人が中心になると思うけれども、50万人単位で単純労働ありで入れようとしてるわけでしょう? 


じゃあどうするの? そこをプロテストしないのかよ、お前らは?っていうわけですよ。それで思ったことがあるんだけども、実はみんな右翼の人が中国人……要は漢族の中国人。中国共産党系の人が嫌い。


僕の世代ってところてんで押し出された世代なわけですよ


それとね、中国人や韓国人を嫌う心理っていうのにもまた闇を感じていて。本当に一言それを簡単に言うと、実は今度出るアエラの記事で俺、それを言ってるんだけど。



僕の世代って受験戦争真っ只中っで、東大・京大・一橋……みたいに入った大学の順位に応じて、自分の将来、幸せの安定と分配が与えられるっていう神話を親の世代から聞かされて育ったわけですよね。それに加えて、そのために自分の本当にやりたいことや本当にちょっとはっちゃけたい冒険心や遊び、クラブ活動も犠牲にして、子供の頃から塾に通ってずーっと応用問題をやり続けて。そういうその「解ける問題」ばっかりを解くウィザードになった世代なんですよ。ところが、その同じ経済成長が続いていかなくて、分配できるパイがちっちゃくなってるから、僕の世代の人がちょうどいま55なんですけども、45から60手前くらいの間の人たちがその約束が反故にされているわけですよ。


自分がそれなりの地位で、要は冒険と自分らしさ、自己実現とか本当の自分というものを捨てて、それを犠牲にして安定と地位っていうものを手に入れて親が喜ぶっていう、そういう幸せに流し込まれた。ところてんで押し出された世代なわけですよね。男の子たちは。


「できない男子」が「できる若い女子」に追い上げられるんです


それが結局、割り当てが少ないまんま。約束が破られて。本当にできる人や、本当にズルくて手練手管を持って、上の親父のコックサッカーの人たちだけがどんどんと上に行くけれども、そうじゃない人は蹴落とされるわけですよ。すると、話が違うわけですよ。もう大学入試の段階で自分が選抜を頑張ったのに、一生与えられるはずの恩恵……大蔵省とか、そういうのが全然ないわけだよ。社会もグローバリズムで変わっちゃって。


結局、製造業は中国やインドに流れていってしまうし。そうすると、そこに多様性って言って3、40代の一世代若い女性たちが覚醒して追っかけてくるわけ。で、能力給っていうかメリットで彼女たちが本当にやる気を出してやってくると、結局その僕の世代の下の方にいて、それまでは女子が仕事に行かず専業主婦になることで競争相手がいなかった、あるいは女子の組織内における昇進を不当に抑えていて下駄を履かされていた「できない男子」の下半分がですね、「できる若い女子」に追い上げられようとしているわけですよ。


で、これを本当にフェアにしてしまうと、僕の世代のできない方の人たちから先に沈んでいくわけですよね。それでその蹴落としが怖くて、まあさんざんに意地悪になって。真左だったり真右だったり。「フェミニズム、#MeTooは嘘っぱちだ!」とか。


「うおおーっ!」ってなっているあのTwitterとかFacebookに表現されてる「怒り」。掲示板に書き込まれている「恨み」。それってどこに向けられているのか?それは自分のお母さんに向けられているんじゃないのか?って思うんだよね。


だから自分の「失われた僕を返せ!」って言ってるけど、もっと若い人たちは結局社会が多様化してるから。そもそもゆとりだったりして。そんなに一生懸命、自分を捨ててまで勉強してきてない人たちが海外への留学経験で英語をしゃべれたりとか。ところが、僕の世代の人たちって英語をしゃべれないからね、結局。受験英語しかやっていないから。


だから、そこなんですよね。そこのルサンチマンが見え見えすぎて、その人たちが「移民反対!」って言っているのは結局女性にも追い上げられるし、今度はやる気のある若い移民が……「不法外国人が来る! 日本で犯罪を犯す! マナーが悪い!」とかっていうのは、本当はそれは包み紙で。本当に怖いのは、その中の本当にやる気があって、しかも日本を愛して、日本の文化を理解し、日本語もちゃんと仕事ができて、自分を蹴落としていくインド、東南アジア、東アジアの人たちが何百万人と日本に入ってくる『ブレードランナー』の社会がただ怖いだけなんでしょ?っていうことを思うよね。


もう簡単に言うとね、(南アフリカの)アパルトヘイトの時代の白人が上で黒人が下だった時代。その白人の中の、白人マイノリティー、アパルトヘイトの差別の下駄を履かされていた中の下の方にいた人たち、あんまりできない子たちはみんな公務員として雇ってもらえた。ところが、アパルトヘイトが終わった瞬間、黒人と白人が競争させられて。いちばん上の人たちは別に黒人と競争してもガチで強いからいいんですよ。その下の方にいた公務員の仕事を割り当てられていた、あんまりやる気のない白人たちがやる気のある黒人たちに一気に仕事を取られて。


もう一部はホームレス、テント住まいになって。それで家族でクスリ漬けになっちゃった、みたいなのもあるわけですよね。ホワイトトラッシュに転落した人たちがいるんですよ。それがね、これから私の世代の男子たちに起きるような気がしてならないということで、ちょっとそれに向かって幸先よく乾杯するためにExcision & Dion Timmer『Hoods Up』を聞いてください。イエーイ! 要するに、あらゆる差別的な言説は負け犬の遠吠えだ!

Excision & Dion Timmer - Hoods Up (ft. Messinian)



番組情報

 「Morley Robertson Show」

https://block.fm/radios/28

生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30


モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。


written by みやーんZZ


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