モーリー・ロバートソン 日本の大麻取締法の矛盾を、カナダの大麻全面解禁から分析する

モーリー・ロバートソンがカナダの大麻全面解禁について徹底解説。全世界的な大麻非犯罪化、合法化の流れの背景には何があるのか?
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2018.12.07 10:00

毎週木曜日夜9時、block.fmで生配信中される、国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんの番組『Morley Robertson Show』。今回の番組ではカナダの大麻全面解禁について特集。90分間に渡って話したトークの第三弾はアメリカ国内の州単位での医療大麻、嗜好大麻解禁とウルグアイ、カナダの国単位での大麻解禁の流れ、そして今後予想される展開について解説していました。




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「Morley Robertson Show」


生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30



カリフォルニアのディスペンサリーでハラスメントはあったんですけど


モーリー:おもろーい! ASMRっぽいエンディングの『Ice Cold Tiigers Remix』。LAXXでした。


LAXX『Ice Cold ft. JUS (Tiigers Remix)』


阪神……ねえ。最下位で残念だったね。でも新しく二軍コーチの矢野さんが監督になったので期待できるかもしれません。1曲目から行く!っていう二軍のスタイルを貫いてくれたら、また新展開が望めるんじゃないかな? 毎週月曜日は関テレの『報道ランナー』に出演していて、皆さんとタイガースの運命に関して運命共同体で一喜一憂しております。


さて、まあこういう風にしてですね、ハームリダクションが元々のスピリッツだったのが、アメリカの場合は連邦法と州法っていうのが憲法を作った段階に非常にイコールの等価にあったためにですね、連邦法で州法をオーバーライドして、いわゆるアメリカの麻薬取締局であるDEA(Drug Enforcement Administration)が、たとえばカリフォルニアの薬局(ディスペンサリー)に行って、宅捜索で箱で持ち出すとか、ハラスメントはあったんですけども。あんまりやると、連邦政府自体の聞こえが悪くなって、州民が税金納めないぞ運動になるんですよね。


だからやっぱり連邦っていうのは州の決定を覆すことは極力しないようにする。たしか、隣の州が医療大麻だったかな? ああ、嗜好大麻が合法化されたある州の隣の州がまだ合法化してなくてですね、その結果「自分の州に迷惑がかかる」ということで最高裁に訴えを起こしたんですよ。ところが、最高裁がそれを、僕の記憶だと棄却しているんですね。というのは、州のいざこざを連邦に決めさせると、これはその州の州民が投票で決定した民主主義を連邦をオーバーライドして、これは連邦が独裁を敷いているっていうことになるという、その政治のバランスが崩れちゃうんですね。


連邦司法長官は取り締まりたいんですよ。だけど、トランプはですね...


ですから、最高裁もあまりタッチしない。で、まあちょっと小ネタなんですけども、ブレット・カバノーっていう超タカ派、保守派のトランプさんの腹心でもある50代前半の人が、過去の性暴力疑惑を押し切る形で、共和党の力で最高裁判事になったんですけども。これでアメリカの最高裁というのは9人いるうちの5対4で5人が保守になったわけですね。「4対4対毎回揺れ動く中立の人」っていうバランスで終身で勤めるですけども。1人が高齢もあって辞めた。それで5対4で保守になってしまったんですけれども。


目下懸念されているのは、たとえば女性の中絶する権利に関して、保守化した最高裁が70年代の決定で中絶を合憲ってしたものを違憲みたいにし始めるの怖いという。公民権とか女性の権利みたなものがどんどん後退するんじゃないか?っていうことを懸念されているんですけども、じゃあ大麻も禁止するのか?ってなった時に、もっぱら新しいカバノーという新しく最高裁判事になった人はですね、大麻に関してはあまり強い発言をしてないんですね。むしろ、アメリカの政府の中でいうと、ジェフ・セッションズっていう司法長官がいて、この人はもう大麻嫌い教なんですよ。大麻教の逆で。


とにかく大麻が目の敵なんですね。大麻を部分的にも州のレベル合法化したことが許せず、連邦司法長官としてはできるだけ取り締まりたいんですよ。DEAも司法省の中にあるから。FBIとかと同様に。だけど、トランプはですね、彼はポピュリストなので自分の支持層が福音派だったり白人至上主義だったり貧乏だったり、なんか反グローバリズムとかいろいろポピュリズムであるんですけど、トランプさんはそこはやっぱり非常に……多分ご自身も相当な量のドラッグをやってたんじゃないかと私は思うんですよ。ディスコ時代にね。


そういうクラブにいたんで。そういう、なんかロイ・コーンに紹介されたお金持ち専用の堕落した、もういつでもそこにいるかわいい女性とソファーの上でセックスできるよ、みたいなところにいたらしいんだけど。そこではたぶんね、大量のコカインが、ディスコの時代だったんで。ビージーズのディスコはコカインですから。やらないわけない、みたいに。「トランプさん、その鼻の軟骨、大丈夫?」みたいな、それぐらいの人だと思うんで。トランプさんはドラッグを結構よく知ってる気がするんですよ。だからあんまりDEAを使って国民をハラスメントせず、かえって大麻には寛容な振る舞いをする可能性もちょっとはあるとは私は見てるんですよね。


アメリカ人は運転免許証だけでカナダ国境を越えられるんですよ


まあ中間選挙、11月6日次第ですけども。だからアメリカで政府の中で大麻を目の敵にしているのは司法長官のセッションズ。ところが、ロシア疑惑っていうのがあって、司法長官のセッションズはそれでトランプさんにしたらすごく不満を持つような振る舞いをしているわけですよ。彼はロシアの大使と選挙中に会ってしまったために、「レキューズする」(Recuse)、つまり、この件から撤退するって言って司法長官としてロシア疑惑から手を引かなきゃいけないことになったんですね。当事者で利益相反なんで。


そうすると、彼の副司法長官マシュー・ウィタカーが取り仕切った。その人が選んだのがロバート・モラー特別捜査官なんですよ。だから、トランプさんはこの人事にすごい不満を持っているの。下手をすると、報復としてセッションズ司法長官を「You are fired!(お前はクビだ!)」ってするかもしれないんですよね。で、あの司法長官、ガチ大麻反対派が別の政治的な理由でトランプさんが気に入らないっていうことで解任されてしまうと、大麻が嫌いな人が政府の中にいなくなるというねじれ現象が起きてですね(笑)。「ああ、トランプでよかった!」みたいな、そういうアメリカの非常に微妙なバランス。


そして、このたび晴れてカナダ側、国境の向こう側で嗜好も医療も全部OKになっちゃって。しかも大麻株がカナダの株式市場でグングングーン!って上がったり下がったりして、どっちかっていうと全体に儲かる傾向にある。ということは、アメリカのノースダコタとかサウスダコタとかですね、ワシントン州はもう合法化しているんですけども。合法化していない……たとえばニューヨーク州とか。カナダに接している州のアメリカ人たちは自動車免許だけでもね、パスポートなくても運転免許証だけで国境を渡れるんですよ。それで、大麻を吸って帰るっていうことができるんですよね。


編集部注:ジェフ・セッションズは中間選挙直後の11月7日、辞表を提出。


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アメリカの州は税金でレベニューチャンス



大麻を吸って泊まって、ちょっと落ち着いて運転して帰って。帰りに大麻検出のなんか呼吸器官かなんかこう、テストをされても「大丈夫だよ」とか。「目が赤くないか?」とかやられたとしても、多分ね、ボーダーポリスはあまり真面目にやらないと思うんですよね。そんな大量の人が行ったり来たりしてるんで。だから結構のアメリカの州が、いわばレベニューチャンスですよね。州税。たばこ税みたいに税をかけている。その州税を得られるチャンスをみすみす、ニューヨーク州の住民とかコネティカットとか……まあ、そういうところがカルガリーとかそういうところからどんどんカナダに入っていって。モントリオールに行って、やって帰ってくるっていう風になってきちゃうんですよね。大麻のスターバックスが国境沿いにあったりすると。


そうすると、やっぱりレベニューチャンスが失われるっていう、ナイアガラの滝のあっちではストーンド、こっちではダメみたいな。そういうようなことがあったりするので、たぶん何よりもお金を大事にしている、収入を大事にしているトランプさんとしては……人道問題もクソくらえ、倫理クソくらえで大麻のお金のメリットを謳って。「雇用になる!」とかって言って合法化してしまう可能性があるんですね。それを暗示する出来事が全く別の場所で起きていて。サウジの例のジャーナリスト殺害なんですけども。


アメリカに何兆円単位でお金が入るんだったら、トランプはそれはいいことだと


トルコの国内において、サウジの総領事館におびき出されたサウジ国籍のジャーナリストの人が、特殊部隊に暗殺されて。生きたまま切断されて、バラバラのボックスに詰められて回収されたという一件がいま、だんだん明るみに出ていて。それがトルコとアメリカとサウジの腹黒い駆け引きになっているんですけれども。要はアメリカはサウジをここで人道的に非難すると、どんなにクロだっていうのがバレても、「いや、あれは末端の人間が事故で尋問中に間違って殺してしまったんだ」っていうシナリオを共有すれば、サウジの国王とか皇太子は自分たちが流した血が手に汚れない。


そうすると何が起きるかというと、アメリカは非難決議をしなくてよくなって、サウジに経済制裁をしない。ということは、10何兆円クラスでアメリカから武器を購入することを明言しているサウジ。もうトランプさんはキャッシュフローがほしくてしょうがないわけですよ。しかも11月6日の前に、短期で。しかもポンペオ国務長官をサウジに派遣して、「この件を話し合う」と言ったその日に、以前夏から約束されていた100億円相当……1億ドル相当のお金(シリア再建資金という名目で拠出)をアメリカの国務省の口座にスコーン!って入っていたらしいのね。


「はい、約束したお金ですっ!」みたいに。トランプさん、そういう即金をもらえると、「よっしゃー!」になるわけですよ。つまり、トランプさんは人道だろうが民主主義じゃなかろうが独裁だろうが、どんなひどいことをやっていても、アメリカに何兆円単位でお金が入る。何百億、何千億って入るんだったら、それはいいことだと。「白い猫も黒い猫も汚れた猫も綺麗な猫もネズミを捕るが猫がいい猫だ」っていう論理があるわけですよ。それをトランプの支持層っていうのは結構飲んじゃう傾向があるんですよね。


つまり、トランプさんのその資質としての汚れ方とか、「言ってることが矛盾してるじゃないか!」っていうイデオロギーの問題は全くなくって。要はお金がアメリカに入ってくる。貿易赤字が解消するするっていうことが大好きな支持層がいるので、その支持層に向かうパフォーマンスとして彼はですね、サウジの件でも人道を無視してるわけ。アメリカの威信が国際社会で失墜しようが何をしようが、知ったことか。アメリカファースト! アメリカファーストを適用した結果、「カナダで大麻が合法化して、やつらは儲かっている。うちも儲けの分け前を……それは得べかりし利益だろ!」っていうことで、いきなり国境沿いの州をダダダダッ!って行っちゃうかもしれないですよね。


だからこれは非常に「Exciting times to be alive」なんですよ。それで、じゃあ最後に「日本とアメリカ」っていう風に見た時に、日本とアメリカはどのぐらいの距離なのか?っていうと、これは私の意識の中ではメキシコとアメリカぐらい日本とアメリカっていうのは接している。ワイハに数時間後に飛行機で降りることができるし、ロサンゼルスには激安のチケットがいっぱいある。あるいはそのカナダに飛ぶこともできるわけだ。バンクーバーとかね、アラスカもそうだし。でね、普通に大麻の修学旅行ができるような状態になって、大学生のね、最初の合コン。「じゃあカナダでやろうよ!」ってみんなで「わっはっはっ!」っていうのはあり得るわけですよ。



日本の大麻取締法とか決壊する日が近いんじゃないか


それで、そのうちいま、日本側が大麻取締法とか「ダメ。ゼッタイ。」で敷いている迷信のような壁がですね、ダムのようにいままでせき止めていたとすると、それがやっぱりもう水圧によって決壊する日が近いんじゃないかと思うんですね。実際に大麻を経験して、それを文章にする人もいるだろうし、そのうちもっと危機管理をしてないっていうか脇の甘い、大麻で取り調べを受けることがいかに日本で過酷で人道違反なのか?っていうのをわかんないような馬鹿な若いやつらのおかげで、彼らが鉄砲玉になって「ウエーイ!」っつって大麻インスタやらかすんですよ。ペリスコープとか、ストリーミングで「うおーっ! ぶっ飛んでるぜーっ!」とかって。


そういうそのパンツ、ズボンを半分おろした國母さんが「カントリーマアム」って。「スノボで日本の威厳が……」みたいな、ああいう潔癖な。10年ぐらい前かな? それが今度は、そういうウェイ系がみんなで、意識低い系のおかげで、そういうそのバカッターたちのおかげで、もう大麻取締法っていうのは決壊して無化してしまうんじゃないかと私は思うんですよ。だから一部、バカの壁を上手に使ってバカを鉄砲玉にして、その迷信の壁を突き破れっていうのと、あとはやっぱりきちんと表に出て議論をすること。理論化すること。そして私のようにメディアの中で勤めている人たちが勇気を持って一歩前に出て、自分のポケットの中を24時間サーチ可能。「いつでも職質してください。身体検査OKです!」という前提で、しっかりと語ってしまうということなんですね。


あの地上波テレビ、いまのところは「ああ、どうしよう、どうしよう……アメリカ、カナダ、カナダ……うーん、日本で報道しない方がいいのかな? ああ、でも厚労省の見解を先につけておけばいいか?」みたいになってるんだけども、これをやっぱり議論の俎上に乗せていくと、先ほど申しましたように大麻取締法そのものが非常に矛盾に満ちていて、少なくともこれをチューニングし直して微罪にする、非犯罪化する。及び、医療大麻は合法化の方向で、国民医療保険の負担にもこれは関わっていくので。それが、いまから1年、2年後にたとえば大塚製薬のような大手製薬会社、日本勢も含めて。ファイザーとかね。いろいろなところが臨床を晴れてできるようなるわけですから。


そこで得られた知見をもとに「新薬を開発しました」とか、「カンナビス由来」とかって出てくるかもしれないわけですよ。だから徐々に徐々に公的に大麻っていうものはそ悪魔化されず、昔のクリスチャン道徳だったりザ・ウォー・オン・ドラッグズの別件逮捕のための言いがかりの抑圧のツールでもなくなって、まあ本来の大麻のバランスや麻薬についての知見が若い人も含めて広がっていくといいなと思います。そこにマスコミも本来なら、責任を持つべきなんだけども。いままでは萎縮して放棄していたわけですよ。忖度をして。忖度の時代は終わった。これからはやっぱりそういう風にきちんと、あるがままを見つめていって。大麻ももちろん万能ではありませんし、本当にね、たとえば若い人がやっちゃうと脳にダメージがいくっていうことも観測されています。


ですけども、それはお酒だってタバコだってそうなんで、お酒やタバコと付き合える節度ある日本なんだから、逆に大麻も上手につきあえるよ。しかも江戸時代までは普通に麻を吸ってたじゃんっていうことで、グルッと話が回ってくるわけですね。こういう対話を建設的に賛否両論がお互いを尊重しながら、感情……激情や罵倒に頼るのではなく、きちんと合理的な議論や結論を出していければいいなと思っております。今日はとってもお利口ちゃんのボクでちょっと不満が残るので、最後に悪い曲をかけます。Night Shift feat. Dread MCの『War』!


Night Shift feat. Dread MC『War』




番組情報


 「Morley Robertson Show」

https://block.fm/radios/28

生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30



モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。



written by みやーんZZ

image: iljoja via Flickr


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