毎週木曜日夜9時からblock.fmで放送中の『Morley Robertson Show』。国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんが語るのは、アメリカの"プレゼンス"の話、イギリス政府、EUに絡んでいくトランプについて、ドラムンベースと一緒に振り返ります。
前半:モーリー・ロバートソンが語る、トランプの方言(暴言?)の理由 from『Morley Robertson Show』
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モーリー:アメリカのプレゼンスが世界の舞台でディミヌエンド。そして戦後レジームがこういう形で終焉すると、それは日本にとって何を意味するのか? そんなことを悩みながらドラムを聞けるのは『Morley Robertson Show』だけですよ! 皆さん、よろしくお願いしまーす!
それでね、さっきそのトランプさんが結局NATOからプルアウトみたいなことをほのめかした時に、ロシアはもちろんそれで喜びますよね。そもそもNATOっていうのはソ連時代のロシアが西に進行してこないよう、共産主義が軍事的に西を乗っ取らないということのために作った防波堤で。そこにアメリカは多大な軍事プレゼンス及びお金を出していたんですけれども。それを「当初の約束通りアメリカにとって損にならないように各国はGDPの2%を払って債務を履行しなさい」みたいな風に、お金の問題にそれを還元してしまったということでEUの間から「アメリカって本当にReliableなのか? Trustできるのか? 信用できるのか?」っていうことが浮かび上がってくるんですね。
それがさらにアメリカのブランドというものをヨーロッパにおいて失墜させます。ですからロシアは大喜び。そしてもうひとつはEUの結束そのものがNATOと一体化しているということなんですよ。で、NATOが弱まるということは、EUの中でEU懐疑論が強まる。そしてEU懐疑論には、なんと言うか中央政府を作ってユナイテッド・ステイツ・オブ・ヨーロッパにしてるわけですよね。USEなわかですよ。あのEUという形は。これが、要はそれぞれの国の国家主権が侵害されて、自分たちが独自決定権を持たない。
たとえば債務超過に陥ったギリシャとか、あるいは経済が下を向いているスペインみたいなところは割が悪い。そしてフランスやドイツの言いなりになるのが嫌だ、みたいな。ということで反EUの機運が結構あるんですが、そういった主に極右の政治運動がとても強くなってEUを分解してしまおうという方向に進むんですね。で、「Brexit(ブレグジット)」というイギリスのEU離脱っていうの、いまテリーザ・メイ首相が懸命に何とかしてEUとの経済的な繋がりをとどめるために弱いブレグジットにしようとした。そしてそれをトランプが英国を訪問して……そのテリーザ・メイの内閣っていうのは崩壊寸前なんですよ。外務大臣とかいろんな大事な人たち、閣僚がどんどん抗議で抜けていてポスト・メイを狙っている。
そんな中でその前イギリスの新聞の「The SUN」……たぶんルパート・マードックの極右系の持ち主の新聞ですよね、そこでトランプがたしかね、「ボリス・ジョンソンが首相だったらいいのに……」みたいなことを言ったんですよ(笑)。これ、たとえばトランプが日本を訪問して「石破さん、いい首相になるよな」みたいなことを言ったらどうなるのっていうことなんですよ。それぐらい内政干渉というか、ヤバいことをやったんだけど。それは要は「イギリスはもっとEUからハード・ブレグジットしろ」っていうことを外野から野次をとばしていたわけですね。
世界最大の超大国のアメリカがイギリスの政治に対して野次を飛ばすって、それを大統領がやるのはやっぱりまずいというか。それで結局ハード・ブレグジットというのはもともとナイジェル・ファラージのような扇動家、アジテーターたち。ポピュリストが主張をしていたことがなんですけども。要は「EUを解体しよう」っていうことなんですね。で、これが本当に実現してしまうと、たとえば一応フランス、選挙では負けたんだけど、極右の国民戦線のマリーヌ・ル・ペンなんかがいたりして。こういう人たちの声がまた大きくなってくるというトリガーになると思います。あとはオランダのヘルト・ウィルダース、ドイツだったらAfD(ドイツのための選択肢)。
要は、どんどんどんどんEUが解体の方に向かっていく。そうすると、EUそのものがなくなってしまうというトリガーにトランプさんがなる危険性があるわけですね。そうすると、そのそれぞれの極右勢力があるじゃないですか。選挙で勝つとは限らないけど、まだいっぱい元気なわけですよ。そこにどうも、ことごとくロシアのプーチンさんのお金が入ってるらしいんですよね。国民戦線はロシアからお金を受け取ったっていうのはたしかもう、きっちり報道されていると思います。裏が取れてると思います。ですから、ロシアはトランプを操ってるのかどうか、そこは不明なんですが、まあロシア疑惑があるんでトランプさんはロシアに対して強いことは言えない。
で、EUがとにかくこれで解体に向かうプレッシャーがかかっている。そうすると国際秩序はすごく変わってしまって。アメリカのプレゼンスがなくなったその空白にロシアはもちろん政治的に入ってくるけども、さらに経済で入ってくるのは一帯一路構想をユーラシア全体に伸ばさんとしている中国なわけですよ。我らが中国。尖閣諸島で悪さするとか南シナ海に出ていって変な島をコンクリート流し込んで作って滑走路付きっていう、それだけじゃない。ヨーロッパ全体に触手を、ロングアームをパワープロジェクションするわけですよ。
ですから、ジオポリティクス(地政学)っていうのはパワープロジェクション同士のせめぎあいで成り立ってるので、トランプがアメリカの手足を引っ込めてしまってですね、アメリカ・オンリーの内向きになっていった場合、その国際社会の空白。アメリカが作った、維持してきた秩序。それがなし崩し的になくなってしまうわけですよ。そうすると、そこでEUの様々なアジェンダっていうのは、党利党略とも言えるんだけど。要は国よりも、国を弱めても自分の政党を強くしたい勢力っていうのが……まあトランプさんが実はそういう人なんだけど。そういうベビー・トランプみたいなものがEUのそれぞれの国にいるわけですね。
で、この人たちが勢いづいて、EUは解体の方向に向かう。で、それぞれの国がかならずしもお互いに結束をしないので、誰と誰が仲がいいのかっていうことが定かではなくなるんですね。EUという枠組みがあると共通のルールとか共通の経済ルールで。あと、集団的自衛権で成り立ってるから、そこ一枚岩でふるまえるんですけども、お互いに不信感が強まる。そこに当然ながら、漁夫の利を得ようとして、あるいは最初から分断を目標にして、プーチンさんとか習近平さんがやってくるわけですよ。だからどんどんどんどん春秋戦国、五胡十六国の乱という中国の戦国時代がありますが。だんだん乱世になっていってしまうということがあるんですね。
で、国際秩序が西側で崩れていくということ。同時進行でですね、東アジアも同様なんですよ。(ゴクッ!)。うーん、喋りたいのか、レッドブルを飲みたいのか、むせているのかよくわからない。曲をかけたいのか喋りたいのか……やっぱり、もっと喋ろう!
それでね、たとえば「EUなんてワシらには関係ない」みたいな……だからEUの話とか、その後にプーチンと会談したトランプさんが、もう完全にプーチンさんの側に寄り添って、自分の国のロシア疑惑を払拭したいもんだから「自分の国の情報機関が出したロシアの大統領選への干渉、これが全く嘘だ。プーチンが言ってるんだから間違いないじゃないか!」みたいなことを記者会見でプーチンの横に立って言っちゃったんですよ。
これまで世界最大の超大国だったアメリカの大統領が、かつての冷戦時の敵であったソ連のなれの果てのロシアとでも言えばいいかな? そこの独裁者ですよ。プレスフリーダム(報道の自由)を何も認めないプーチンを横にして、彼に花を持たせ、プーチンは威厳があるけれども、トランプさんは何かもうちょっと付和雷同で頭が悪そう。しかも、自分がそのロシア疑惑逃れをしたいがために、彼を立ててしまった。たとえば、これによって自分の国の情報機関はあまり……信用してるけども、でもプーチンさんの方をもっと信用してるっていうことを結局は言ったわけですよ。
それをやっちゃうと何が起きるかというとですね、たとえばトランプさんの発言を受けて、国防長官であるジェームズ・マティスであるとか、国家情報長官であるダン・コーツっていう人がいるんですけども。この人たちは、つまり「ロシアがアメリカに対してある種侵略行為をしてるんだ大統領選に対してある種の心理戦、サイバー攻撃のようにして、大統領選に干渉した。これからもやるだろうから、これに対してはロシアに制裁を加えなくてはいけない」みたいなことを言っていてトランプはその見解を否定しているわけですよね。ということは、この2人が辞めちゃう可能性出てくる。それで、あのジェームズ・マティス国防長官っていうのは、北朝鮮の問題に関してもとにかく一枚岩で、彼がいれば米朝戦争はないだろうと言われていた、そういう人なんですよ。
だからこういう人たちが仮に「トランプさんはもうダメだ。これはもう糸の切れた凧だ」ってことになって抜けちゃうと、それは朝鮮半島情勢にも影響してくる。で、朝鮮半島情勢なんですけど、これがまたひとひねり、ひと絞りあるんで、ちょっと面白いのでまた1曲、間に挟もうと思いまーす! Excision & Dion Timmer『Hoods Up (ft. Messinian)』!どうぞ!
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EVERY THURSDAY 21:00 - 22:30
モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。
written by みやーんZZ