block.fm DJのミックスシリーズ「MIX BLOCK」。今週は東京のUKベースミュージックシーンのベテランプロデューサー、PART2STYLEが登場! ミックスの放送に向けて、10年以上の音楽活動や海外の音楽シーンの魅力、そして日本の音楽シーンの未来について、PART2STYLEのMaLとnisi-pにインタビューした。
ーそもそも、PART2STYLEの活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
MaL:だいたい10年くらい前にPART2STYLEとして活動し始めたのかな。音楽はもっとその前からやってたんだけど。
ーユニットの前に個人としても活動していた?
MaL:そうだね。もともとは90年代のレゲエ、ジャマイカのサウンドスタイルで活動してて。でもその頃はまだ若かったから遊び半分というのはアレだけど、その時に自分が楽しいと思うものをやってきた。続けるうちにどんどんスタイルも変わってきたかな。
ーお二人は何がきっかけで知り合ったんですか?
MaL:知り合ったのは友達の先輩から紹介されて。その頃東京で夜遊んでいる人は、割とみんなすぐ仲良くなる感じだったよね。
nisi-p:まだ遊んでる人が少なかったもんね。
MaL:クラブもまだ少なかったし、同じくらいの世代の人がみんな友達になっていく感じもあって。
ー以前からずっと東京のクラブ・ナイトライフを見てきているお二人は、昔と今でどういった変化を感じていますか?
nisi-p:個人的な感覚だけど、90年代の半ばに東京のナイトライフが急激に変わったな、と感じてて。それまではディスコカルチャーだったものが、急激にアンダーグランドなクラブカルチャーが入ってきたんだよね。ちょうど日本語ラップ、日本のヒップホップが台頭してきたあたりと同じ頃だと思う。クラブもすごく増えたし。
クラブがいっぱいあって、イベントもたくさんあって、ちゃんとDJやアーティストの名前で人が集まる、今に繋がる感じ。昔のほうがよかった部分もあるとは思う。90年代前半くらいまではDJやってる側がすごく少なかったから、ジャンルが違っても同世代でDJってだけでだいたいみんな友達になってた。今はDJやプレイヤーが圧倒的に増えたよね。DJやってる人も増えたし、歌う人も増えたし。それによって面白くなった部分もあれば、カジュアルになった分モヤっとした部分もある。
MaL:あと、風営法が改正されてリーガルになったから。前はイケナイことをやってる感とかその楽しさ。「俺クラブなんて来ちゃった」みたいなのもあって。怖いところだったっていうのもあったよね。フロアで肩をぶつけたら殴られるし。バイオレンスが当たり前だったから。
ー東京のクラブでもそんな感じだったんですか?
MaL:ケンカがない週末はなかったね。ケンカで音が止まっちゃうとか。それはもちろん怖いけど、だからこそ被害者にも加害者にもならないように、「やべぇ」って言いながら楽しむスリルはあったね。今はカジュアルになりすぎてて、そんなに気張ってかなくても…(笑)。
nisi-p:どんな人でもクラブカルチャーを楽しめるようになって、クラブに行く人が増えてきてるのはいいことでもあり、ちょっと寂しい部分もある(笑)。今はクラブのスタッフも増えたり、大きい箱はセキュリティーもいるし。昔はそんなのなかったから、自分のイベントに変なやつが来たら、自分のイベントを守るためにDJがブースから出て止めるとか、そういう時もあったからね。
MaL:今の子が見たらびっくりするくらい色んなことが変わったと思うよ。今だと「オールバイナルセット」が特別な感じで書かれてるけど、昔はCDJがなかったから、プレイするためにレコードを買うのが当然で。DJになるのも今より大変だった。一晩お客さんの流れをしっかり見て、普通にプレイできるようにレコードを持つのに、何十万、何百万もかかるから。経験と知識とお金をかけて、ようやく週末にDJができる。ときどき殴られたりもしながら(笑)。俺はうまく楽しくやってこれたけど、苦労した人もいっぱいいると思うし。
nisi-p:ラッキーなことに楽しんでこれたよね。
ー今だと踊ってる人より、スマホでずっとSNSみたいな人たちも多いですよね。
nisi-p:俺たちが10代後半〜20歳くらいの頃にようやく携帯電話が出て来たのかな。今のようにみんなが当たり前に持ってたわけでもないけど。毎週クラブにいてすごく仲良いけど、名前知らなきゃ普段何してるかわからない、幻みたいな世界の良さは、今のような時代じゃ絶対にできないな。インスタで繋がろうというのはなかったね。
ー10年間UKベースミュージックを中心にプレイして、海外にもよく行かれてると思うんですが、日本と海外のシーンでどんな違いを感じていますか?
nisi-p:一番衝撃的に感じたのは、すごくドープな音楽がかかってるパーティーでも、基本お客さんは…なんて言えばいいかな、良い意味でバカ(笑)。 UKって特にラジオカルチャーが広いから、基本お客さんのノリは今の六本木のクラブだったり、ライトに音楽を楽しんでいる人のノリが近い。いくらドープな音楽をかけていても小難しいことがなくって、お客さんはすっごく盛り上がっていた。
日本て、メインストリームとアンダーグラウンドの音楽の楽しみ方が違うじゃない?分けてとらえないといけないな、という気持ちになることもあるから、そこを崩したいなって感じた。それがきっかけの一つになって「Outlook Festival」を日本で開催することになって、ちょっとずつ変えて行きたいなっていう。
MaL:仕組みもしっかりできてる。DJというポジションがちゃんと職業として成り立ってるというのと、エージェントもちゃんとあって。block.fmみたいなインターネットラジオが盛んで、2010〜11年の頃のRinse FMがすごく指標にされてて、レーベルというのがすごく強かった。日本と違うのは、ほとんどのDJはプロデューサーでもあること。だからレーベル周辺のアンセムもあるし、お客さんもそれをすごい望んでる。パーティーでアンセムがかかると、何回もリワインド求める仕組みがちゃんとしてたね。
遊んでいる側も、プレイしてる側もバカだけど、日本でもできればやりたいなと思ったりする。その意味だとblock.fmがあって、レーベルやってる人たちもいて、僕らの周りにはUKとすごく近い動きがあるから。それをもう少しまとめられたらいいなと思うね。
nisi-p:海外回ってて、もう一つすごいと思うことがあって。英語は日本語と比べるとそこまで会話の中できっちりとした敬語がなくて、肩苦しくなくて。その差がすごいでかいかなと思った。海外のフェスティバルですごいベテランの人とフレッシュな20代のDJが普通の友達みたいに「Hi!」とか言ってて。もちろん心の中のリスペクトはあるけど、やっぱり日本で知り合うとまず年上なのか年下なのか、敬語で喋ったほうがいいのかなとかどうしても考えないといけないから。向こうではそれがなくて、同じ態度で「Yo!」って会話が弾むのがすごくよくって。
それは日本では絶対に変えられないけど、でもそれによって世代とか年齢、キャリアで区切られない。バランスよく、フェスの同じステージでプレイヤー同士同じように仲良く楽しめる。それはすごく羨ましいなと思った。僕らもキャリアが長くなってベテランとも言われる位置にいる。でも新しいことが好きだし、今の子たちの楽しみ方を見てて面白いと思うから、そういう若いアーティストたちともっともっと気軽に仲良く、友達みたいに付き合いたい。やっぱりアーティストって年齢は関係ないと思うから、キャリアが長いからこそ、短いキャリアではわからないことも伝えてあげたいよね。
ーありがとうございます!
PART2STYLEのMIX BLOCKは3月01日(金)23:30~24:30 ON AIR
➡︎ https://block.fm/radios/682
【PART2STYLE Radio】
毎月第4水曜日 21:00~22:00 ON AIR
Written by Amy