国民的アニメ『ルパン三世』の人気楽曲を豪華リミキサー陣がリミックスする『LUPIN THE THIRD JAM』シリーズ。
日本のみならず世界中で愛されている『ルパン三世』の音楽は、これまでにも1998年から続く『PUNCH THE MONKEY!』シリーズ(日本コロムビアより発売)、2009年にリリースされた『Lupin The Third DANCE & DRIVE official covers & remixes』(VAPより発売)など、オリジナルマスター音源を使用した様々なリミックスコンピレーション作品という形で親しまれてきているが、2020年10月よりスタートした『LUPIN THE THIRD JAM』企画は、令和版の最新リミックスシリーズとして位置付けられている。
同シリーズでは、ルパンミュージックの生みの親である大野雄二が手がけた『ルパン三世』音楽オリジナルマスター原盤を元に、ルパンの人気曲を様々なアーティストがリミックスでコラボレーション。すでにAmPm、Kan Sano、banvox、Moe Shop、WONKによる名曲リミックスが発表されている。
そんな『LUPIN THE THIRD JAM』シリーズの最新作となる第6弾では、最新アルバム『Future Cake』がSpotifyバイラルチャートやiTunesエレクトロニックチャートで1位を獲得するなど、作詞、作曲、トラックメイキングから歌唱まで全てをひとりで手がける注目のトラックメイカー、YUC’eがリミックスを担当。「夢ならいいのに Remixed by YUC’e」が12月23日(水)にリリースされたばかりだ。
今回block.fmでは、YUC’eに『ルパン三世』作品やルパンシリーズの音楽の印象に加え、今回彼女が手掛けたリミックスの手法や使用した機材など制作の裏側についてリモートで話を聞いた。
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ー『ルパン三世』はテレビアニメシリーズ以外にも、例えば有名な『ルパン三世 カリオストロの城』など様々な作品があります。YUC’eさんはどの作品がお気に入りですか? またその魅力はどんなところにありますか?
YUC’e:昔のアニメシリーズは子供の頃にケーブルテレビの再放送で観ていたので、幼少期から『ルパン三世』シリーズ自体に親しんできました。特定の作品をどれかひとつ選ぶのは難しいんですが、もちろん『カリオストロの城』も好きですし、ルパン三世のキャラクターが持つロマンチックな部分がめちゃくちゃ好きです。ルパン三世は女たらしなんだけど、作品を観ていると彼のことを好きになる女性の気持ちがわかりますよね。
ー『ルパン三世』シリーズには主人公のルパン以外にも次元大助、石川五ェ門、峰不二子といった個性豊かなキャラクターが登場しますよね。YUC’eさんは誰が1番好きですか?
YUC’e:昔は石川五ェ門が大好きでしたね。クールな感じがカッコよかったので。自分が成長するにつれて次元やルパンの大人の魅力が理解できるようになって、今ではどのキャラクターも魅力的だと思っています。
ールパンの音楽に対してはどんなイメージをもっていましたか?
YUC’e:とてもお洒落でクール。ジャジーでカッコいいという印象がありました。
ー『ルパン三世』関連の音楽はリミックスやアレンジしたものも多いですよね。
YUC’e:そうですね、リミックス作品もよく聴いてきました。例えば「ルパン三世のテーマ」は、時代ごとに新しいアレンジの作品が発表されているし、1曲であれだけ多彩なものが生み出されているということは、やっぱり原曲の素晴らしさがあるからこそだと思いますね。
ーちなみに、YUC’eさんご自身の楽曲もほかのアーティストにリミックスやアレンジしてもらいながら、長く音楽ファンに親しまれるようになってほしいと思いますか?
YUC’e:そうですね。自分の曲をリミックスしてもらうことはあまりないのですが、「macaron moon」という曲をUjico*/Snail's Houseというトラックメイカーにリミックスしてもらった時に、海外でよく聴かれているようなサウンドに変わっていてびっくりしました。あとは以前、自主企画でリミックス企画をやったときに、ほかのアーティストの手が加わることで自分の楽曲の別の可能性が見られ、想像しなかったような形に変化していくことがすごく嬉しかったので、また機会があれば自分の曲のリミックス企画もやってみたいですね。
ーYUC’eさん自身もこれまでに多くのリミックスを手がけていますよね。YUC’eさんにとってリミックスを制作する上での醍醐味ってなんでしょうか?
YUC’e:すでにある素晴らしい曲に自分のクリエイションを付け足す、ということを公式でやらせていただけるのはすごく光栄ですし、オファーをいただく度に嬉しく思います。リミックスを制作するときは原曲のステムをもらうことが多いんですが、ステムをそのまま使うというより、メロディーラインを耳コピして似た楽器で鳴らしてみたり、あるいは全く違う音色を打ち込んでみたりしています。だから、足し算のような感覚でリミックスを作ることが多いかもしれません。
ー今回リミックスされた「夢ならいいのに」、坂上伊織さんが歌うオリジナルはボサノヴァ調の楽曲ですが、リミックスするにあたり、どんなコンセプトで制作しようと考えましたか?
YUC’e:坂上伊織さんのバージョンは大人っぽい感じですが、今回私がリミックスしたのは佐々木詩織さんのバージョン(「夢ならいいのに feat.佐々木詩織」)なんですよ。とてもかわいらしい感じの楽曲なので、リミックスのイメージ的には湧きやすかったです。
「夢ならいいのに feat.佐々木詩織」配信リンク
▶https://vap.lnk.to/BuonoBuono
リミックスするときはBPMから考えることが多いんですが、今回の原曲はBPMが144で、そこをどう変化させたら面白いかを最初に考えました。シャッフルさせたら面白いかも、と思いついて、BPMを170まで上げてシャッフルを入れる形で作ってみたんです。あとは、佐々木詩織さんのバージョンを聴いてとても柔らかい印象を受けたので、リミックスも同じように柔らかい音色を足してみようと思って、曲を組み立てていきました。
ー『ルパン三世』の音楽というと、ジャジーなイメージ、ラウンジ系のイメージも強いと思います。YUC’eさんはエレクトロニック系のアーティストとして知られていますが、ルパンの音楽のジャジーさをエレクトロニックなものに置き換える上で苦労した点はありますか?
YUC’e:基本的に楽しく制作させていただきましたが、原曲がしっかり歌モノだったので、それをどうエレクトロニックなものに置き換えるのか、という点では悩みましたね。なのでドロップを入れてみたりとか、バランスを変えるようなことを結構考えて作りました。
ードロップを入れるなど、原曲にない部分を足していくアイデアは、制作中のどういったタイミングで頭に浮かぶんですか?
YUC’e:私の場合は、作っている最中に思いついたアイデアをどんどん試してみて、ハマったものを採用していくという感じですね。
ー今回のリミックスでは、どの部分が最もYUC’eさんらしいリミックスになっている部分だと思いますか?
YUC’e:まず、原曲の聴き心地がとても良かったので、それを活かしたいというイメージがあって。底なしに強い音色で作ってしまうこともできたと思うんですが、それよりも原曲と同じように聴き心地が良く、それでいてエレクトロニックな楽曲に仕上がるように組み立てていきました。曲の途中にあるドロップはグリッチホップのイメージで作っているのですが、これほどゆっくりとしたグリッチホップを作るアーティストはほかにあまりいないと思うし、そういう意味でジャンル分けできない、“よくわからないジャンル”の楽曲になった部分に自分らしさが出せたかなと思っています。
歌唱の部分でも自分の世界観を組み込んで歌いました。もうひとつ自分らしさが出た部分を挙げるとすれば、ドラム音源の部分ですね。私はよく生ドラム音源とエレクトロニックなドラム音源をひとつの曲で一緒に使うんですが、今回のリミックスでも特に強調したい部分にはエレクトロニックなドラム音源を使っています。パートに合わせたドラム音源の使い分けも自分らしさが出た部分ですね。
ー今回のリミックスで活躍した制作機材を教えてください。
YUC’e:音楽制作ソフトはCubase、ソフトシンセのSERUMをメインのシンセとして使いました。Massive、Nexusも使いましたし、そういうシンセの音をエフェクトで加工しながら使ったりもしています。オーディオサンプルは気に入ったものが見つかるまでめちゃくちゃ探しましたね。ヒット音など音階がついているものはシンセみたいにしてメロディーを作るのに使ったりもしています。
あと、制作中に飼っている猫がすごく鳴いていたので、その声をリミックスで使ってみたら面白いんじゃないかなと思って、愛猫の鳴き声をサンプリングしてドロップの中で使ってるんです。今回、生でちゃんと録音した唯一の音はその猫の鳴き声ですね。
ーそんな秘密があったんですね! 今後、その猫の鳴き声サンプルをYUC’eのプロデューサータグ(サウンドタグ)にしてみるのも面白そうですね。
YUC’e:確かに、そういった使い方もありかもしれませんね(笑)。
鳴き声がサンプリングされた、YUC'e愛猫(画像提供:YUC'e)
ー今回のリミックスを一言で表すとどのようなものになりますか? また、どんな人に特に聴いてもらいたいですか?
YUC’e:一言で表すとすれば、先程も少しお話しした“言い表せないジャンル”になると思います。私自身、何かのジャンルの曲を作ろうと思って曲を作っているわけではないので、ジャンルという部分に捉われずに今回のリミックスを聴いていただけたらありがたいですね。
あとはやっぱりたくさんの人に聴いてもらいたいです。特にルパン三世の“ジャジーでお洒落な音楽”というイメージを持っている人にも、エレクトロニックな音楽を聴いていただける良い機会になればと思っています。
ーもし、またリミックスする機会があれば、どんな『ルパン三世』の音楽をリミックスしたいですか? また、その時はどんな感じに仕上げてみたいですか?
YUC’e:また機会をいただけるならぜひやってみたいです。今回は聴き心地の良さを意識したものになりましたが、次はギラギラしたシンセだったり、ガンガンにウォブルベースが鳴るような、ものすごく強い感じがする曲調のものも作ってみたいですね。
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なお、『ルパン三世』は2021年にアニメ化50周年を迎える。今回の『LUPIN THE THIRD JAM』シリーズインタビューでYUC’eが語ったように、リミックスを手掛けたアーティストの音楽性にも注目して、新しい音楽に触れる機会にしてみてはいかがだろうか?
written by Jun Fukunaga
ルパン三世JAM CREW
Spotify https://open.spotify.com/artist/456hbu6d4Jcfdo1xWH5iJc?si=8gox69gWTY2j_SOif1AIRw
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCyWp32WwR4iJUAOGKN8Eheg
Twitter https://twitter.com/lupin3rd_jam
Instagram https://instagram.com/lupin3rd_jam
第1弾
THEME FROM LUPIN Ⅲ 2019 - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by AmPm
配信リンク: https://vap.lnk.to/LUPIN_AmPm
オーディオビデオ: https://youtu.be/-r8hOfAG1Ek
第2弾
ラブ・スコール feat. 石川さゆり - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by Kan Sano
配信リンク: https://vap.lnk.to/LUPIN_KanSano
オーディオビデオ: https://youtu.be/GR9-mttiw0o
第3弾
THEME FROM LUPIN III 2015 - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by banvox
配信リンク: https://vap.lnk.to/LUPIN_banvox
Audio Video: https://youtu.be/hCaFviJaT8o
第4弾
CHASING THE HUSTLER 2015 - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by Moe Shop
配信リンク: https://vap.lnk.to/LUPIN_MoeShop
Audio Video: https://youtu.be/9i3e19fFVJM
第5弾
LOVE IS EVERYTHING - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by WONK
配信リンク: https://VAP.lnk.to/LUPIN_WONK
Audio Video: https://youtu.be/qs8VwIdVJ_A
第6弾
夢ならいいのに - LUPIN THE THIRD JAM Remixed by YUC'e
配信リンク:https://VAP.lnk.to/LUPIN_YUCe
Audio Video: https://youtu.be/CWuXMjwYc-M
<YUC'e Profile>
Twitter https://twitter.com/yuce_e
YouTube https://www.youtube.com/c/YUCe_ch
最新アルバム『Future Cαke』がSpotifyバイラルチャートやiTunesエレクトロニックチャートで1位を獲得するなど、作詞・作曲、トラックメイキングから歌唱まで全てをひとりで手がける注目の女性トラックメイカー。高校時代に海外に留学し音楽の授業を専攻した経歴を持つ。2015年にYUC'eとしての活動を開始。2017年5月にはアメリカのシカゴ、また同年7月にロサンゼルスのAnime Expoに出演。2018年にもLAで開催されたOTAQUEST LIVE、ANIME WEEKEND ATLANTA 2018、マレーシアの Comic Fiesta 2018に出演する等、海外からも注目が集まっている。2020年5月にはデジタルアルバム「Romantic Jam」をリリースした。自身の楽曲以外にもディーンフジオカの「Let it snow!」のリミックス、m-flo loves BoAの「the Love Bug」のリミックス、バーチャルシンガーのYuNiへの楽曲提供等、徐々にその世界観を広げている。