30年続く“Lil”ブーム。 “Lil”から始まるアーティストは8,000人以上いる

いちばんストリーミングで再生されている“Lil”アーティストはだれ?
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2018.08.30 03:00

Lil Pump(リルパンプ)、Lil Yachty(リルヨッティ)、Lil Peep(リルピープ)、Lil Skies(リルスキーズ)、Lil Xan(リルザン)、Lil Baby(リルベイビー)。昨今のHIP HOPチャートは右を見ても左を見ても“Lil”だらけ。もはや記号化した“Lil”という名前が付くアーティストを見てみよう。



ビルボード新記録を達成したLil Nas X


2019年の“Lil”アーティスト代表といえば、Lil Nas X(リル・ナズ・X)だ。カントリーチャートから始まった彼の「Old Town Road」の快進撃は2019年7月末に17週連続1位というビルボードチャート始まって以来の新記録を樹立し、その後2週間記録を更新し続けた! “Lil”アーティストといえばラッパー。といったイメージだが彼はジャンルの壁を越えてこれからも活躍し続けるだろう。

    




Spotifyの“Lil”アーティスト8,000人越え! いちばん再生されている“Lil”アーティストは誰だ!? 


Spotifyに正式に登録されている“Lil”から始まる名前のアーティストは8,000人を越えるという。古くから“Lil”から始まる名前のアーティストは存在していた。しかし、音楽ストリーミングプラットフォームSound Cloud(サウンドクラウド)の普及によって、“Lil”アーティストは爆発的に増加。チャートには何人もの“Lil”アーティストが並び、インターネット時代を象徴する記号となっている。


ネタにされるほどポピュラーになった“Lil”は現代HIP HOPシーンの中心を担う存在であることは間違いない。そんな“Lil”アーティストのなかで、もっともストリーミング再生されているのはLil Wayne(リルウェイン)とのこと。確執が噂されていたBirdman(バードマン)のCash Money(キャッシュ・マネー)レーベルの稼ぎ頭で、その子会社となる自身のYoung Money(ヤング・マネー)のリーダーが、群雄割拠の“Lil”アーティストのトップに君臨している。





Spotifyの“Lil”ストリーミング再生ランキングTop20


2018年でもっとも再生された1000曲のうち、33曲が“Lil”アーティストによるもの。この33曲は2017年から2018年にかけ、“Lil”アーティストの楽曲再生を106%増加させ、2016年からの比較では725%増加させたのだという。SpotifyではLilのつくアーティストをリストアップしていて、トップ200にまとめている。上位20名の再生ランキングは以下の通り。


1. Lil Wayne


2. Lil Uzi Vert


3. Lil Yachty


4. Lil Pump


5. Lil' Kleine


6. Lil Dicky


7. Lil Jon


8. Lil Peep


9. Lil Xan


10. Lil Skies


11. Lil' Kim


12. Lil Durk


13. Lil Baby


14. LiL Ronnie


15. Lil' Mo


16. Lil' Troy


17. Lil' Flip


18. Lil Wyte


19. Lil Rob


20. Lil' Will








ランキングを見ると、記事冒頭に列挙した今をときめくフレッシュLil'sの活躍に加え、Lil Wayne、Lil Kim(リルキム)、Lil Jon(リルジョン)などレジェンドLil'sたちの影響も大きいことが分かる。





“Lil”はHIP HOPに欠かせないファクター


“Lil”アーティストが目立つのはここ数年だが、“Lil”が登場した歴史は古く、「Grandmaster」「MC」、「Young」と並んでクラシックなネーミングである。もともとは“小柄”とか“かわいらしい”を意味する“Little”の省略形として普及したスラングだ。逆にシニカルな意味でも用いられる。


過去にblock.fmではこのHIP HOPカルチャーにおいてポピュラーな名前である“Lil”や“Young”について分かりやすく解説し、さらにはLil Young(リルヤング)という「頭痛が痛い」みたいな名前のアーティストもピックアップしているので参照してほしい。


参照記事:ラッパーの名前に多いLil、Youngってどういう意味? どういう人がつけるの?


“Lil”が“MC”や“Young”と一線を画す点は、時代に左右されず過去30年以上にわたってHIP HOPカルチャーに存在しつづけていること。そしてその数が圧倒的に多いということである。





最初の“Lil”アーティストと各年代の“Lil”アーティスト


“Lil”というスラングを最初に使用し、全米にその名を轟かせたのは1988年のLil'Troy(リルトロイ)だと言われている。「Wanna Be Baller」で有名なヒューストンのラッパーだ。




その後、1990年代初頭にLil Bruce(Little Bruce/リトルブルース)がカリフォルニアのベイエリアから、ニューオーリンズからはLil Mac(リルマック/現在はMAC。当時13歳でManny Freshがプロデュースしていた)、M.O.PのLil Fame(リルフェイム)がニューヨークから登場する。場所は関係なく大きなくくりで同時多発的に、全米規模のLil'sが出現していった。現在Netfrixでアニメシリーズが展開されている板垣恵介氏の著作漫画『刃牙-BAKI-』にて、「液体だったニトログリセリンが同時期に世界中で凝固した」と“シンクロニシティ現象”が語られていたがそんな感じだ。





最初で最大の成功を収めた“Lils“としては1995年のLil Kimが外せない。そしてLil WayneやLil Flip(リルフリップ)に続いていく。2010年代に登場するシカゴドリルシーン(シカゴ版ギャングスタラップでLo-Fiなサウンドと過激な暴力、性表現が特徴)の若手はLilだらけ。Lil Durk(リルダーク)、Lil Bibby(リルビビー)、Lil Herb(リルハーブ)、Lil Mouse(リルマウス)らが産声をあげ、ペンシルベニアからはドリルミュージックとは正反対のポップ色強めなLil Dicky(リルディッキー)が現れた。







Lil Bow Wow(リルバウワウ)のように成長とともに、“Lil”を削除したアーティストも存在する。先述したLil MouseやLil Macも同様だ。正直、何が“Lil”なのかわからないようなやつら(Lil Dickyはつまり、わかるだろ? )が“Lil”を乱用している昨今、Bow Wowらは適切に“Lil”を使用していた希有な存在だ。


日本ではKOHH(コー)の弟が名前に“Lil”を冠しLIL KOHH(リルコー)を名乗っている。KOHHの弟なのでLIL KOHH。実に単純明快で、意味としても適切な“Lil”の使用を行っている例である。







音楽メディア、DJ BOOTHの2015年の記事では、各年代を代表するLilアーティストをまとめている。


Lil Troy (1988) Houston


Lil Bruce (1989) Bay Area


Lil Louis (1989) Chicago


Lil Mac (1990) New Orleans


Lil Fame of M.O.P. (1992) NYC


Lil 1/2 Dead (1992) Los Angeles


Lil Vicious (1993) NYC


Lil Keke (1993)Houston


Lil Italy (1993) Bay Area


Lil Cease/Lil Kim (1995) NYC


Lil Wayne (1995) New Orleans


Lil Flip (1997) Houston


Lil Wyte (2000) Memphis


Lil Scrappy (2002)Atlanta


Lil B (2004) California


Lil Mama (2004) NYC


Lil Reese (2010) Chicago


Lil Durk (2010) Chicago


Lil Bibby (2012) Chicago


Lil Dicky (2013) Pennsylvania


あなたのお気に入りのLilアーティストはいただろうか。個人的にはLil Flip。2000年代、MTVで良く流れていた「Sunshine」はそのころ好きだったコからの着信音にしていたっけ。Lilアーティストのヒストリーをさかのぼっていたら思い出した次第だ。今後もLilアーティストは増えていくだろう。そしてLilではないBigな功績とメモリーをこれからも残していってほしい。




block.fmでは過去に“Lil”のつくアーティストをフィーチャーした記事を配信している。


参考記事:【この人がヤバイ】ラッパーであり、スケーター。そしてデザイナー。アトランタの新星Lil Gnar


block.fmきってのHIP HOPライター、Yoshito Takahashiが推すのはLil Baby。


参考記事:Drakeらも認める新たなアトランタのスターLil Baby、ストリートに固執した彼の人生とは?


アトランタは高品質な“Lil”の名産地なのだ。

 

written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


source:https://www.hotnewhiphop.com/here-are-the-top-200-lil-rappers-on-currently-on-spotify-news.51490.html

https://newsroom.spotify.com/2018-05-29/meet-the-lil-artists-holding-it-down-on-spotify/

https://djbooth.net/features/2015-12-07-the-history-of-lils-in-hip-hop

https://www.vladtv.com/article/245936/spotify-now-has-over-8000-artists-with-lil-at-beginning-of-their-name?page=2


photo:YouTube Lil Pump



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