インタビュー|Lido アルバム『Peder』を通して伝える、自分が少年だったころの物語

本名をアルバムタイトルに使った理由、制作時に新たに発見したことなどを語ってもらった。
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2020.10.12 13:00

以前block.fmでは、マルチプレイヤー、シンガー、ソングライター、プロデューサーのLido(リド)に、今まで聴いてきた音楽、友達でもあるコラボレーターとの関係性、ノルウェーの小さな町からロサンゼルスに引っ越した経験についてインタビューを行った。


「LIDO 直撃インタビュー 才能あふれる歌手、作曲家、プロデューサーが、日本への愛を真摯に語る」


そのインタビューから約3年が経ち、ニューアルバム『Peder』をリリースしたばかりのLidoに再び話を聞くことができた。本名をアルバムタイトルに使った理由、ビジュアルで繰り返される提示される砂漠と宇宙のテーマ、収録された曲をどんな時に聴くのがオススメかなど話してもらった。



ーこんにちは!3年前のインタビューぶりになりますね。お元気ですか?LAはどうですか?


Lido:久しぶりだね!LAはちょっと変わったけど、大丈夫だよ。今一番変わってるのはカリフォルニアの山火事からの煙かな。今日は久しぶりに青空が少し見えるけど、空はまだかなりスモーキー。あんまり外に出れないけど、コロナで家にいるのには慣れてる。


ーロックダウン中はどう過ごしていますか?以前は、常に制作してると言ってましたが。


Lido:なんとか頑張って制作してるけど、やっぱりインスピレーションになるものを見つけるのがかなり難しくなったね。ポジティブなことを受け入れるのが難しくなっているけど、あんまり文句も言えないかな。しばらくショーやツアーができないから、スタジオの機材を全部家に持ってきて制作してる。ガーデニングを始めたり、以前はあんまりできなかった家のことをする時間も出来た。楽曲制作は、ラフなアイデアはたくさん作れてるけど、歌詞を書くのに苦労してるよ。気持ちをストーリー(歌詞)にするのに、他の人とのインタラクションやインプットがないと進まないタイプだから、未完成の作品が多くなってきた。自分でリリースする作品か、他のアーティストのために使う作品かも決まってない。でも制作はノンストップでやってる。


ーコラボレーションで制作が活発になるのは、今でも変わってないんですね。


Lido:そう。やっぱりコラボレーションするといい意味でアクシデントが起こる可能性があるし、一人じゃできない作品ができあがるから。


ー今回のアルバムのフィーチャーリングアーティストとフェスを開催したら、最強なラインナップだと思いました。オンラインという形でもフェスを開催する予定などはありますか?


Lido:それができたらヤバいね!今は、みんなをひとつの場所に集めるのが難しいけど、オンラインでも、みんなの自宅セットを流してデイフェスとしてできたら最高だね。今はライブストリーミングで使われてる新しいテクノロジーがたくさんあるから、配信のクオリティーも上がってきてるし。この前Lollapaloozaのオンラインフェスで初めて自分のセットを収録したんけど、とても楽しかったし、ポテンシャルはあると思う。



ー完成したアルバムを初めて聴いた時のリアクションを教えてください。


Lido:かなりクレイジーな気持ちだった。制作中は細かいところを意識してるから、完成したものを聞くとすごい不思議な気持ちになるんだよね。今回のアルバムはレジェンドのTony Mazerati(トニー・マセラティ)にミキシングしてもらった。自分以外の人にミキシングを頼むのは初めてなんだ。彼はBeyoncé(ビヨンセ)やDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)のようなアーティストのミキシングをしてるから、前から憧れてるし尊敬してるアーティスト。彼の感覚を通して自分の作品を聴くのが素晴らしい体験だったし、スタジオで一緒にミキシングした部分を聴けて嬉しかった。


ーこのアルバムを制作していて、自分の中で新しい発見はありましたか? 


Lido:やっぱりTonyと一緒に制作していて、自分がプロデューサーとしてどういうところに不安を感じているかが明確になった。今までは同じ制作プロセスで音楽を作ってきたけど、Tonyと一緒に作ることでいらない部分が明確になったり、いい意味で制作に対する考え方が変わったと思う。あとは、不安な部分だけじゃなく、どういったところに自信を持ってるかも明確になったし、今後どこを強化していくべきかも明確になった。Tonyだけじゃなく、アルバムにフィーチャリングしてるアーティストたちとも一緒に制作していて新しいことをたくさん学んだよ。Brandon Arreaga(ブランドン・アレアガ)と一緒にスタジオに入ったことで、よりハーモニーについて学んだし、Jojoからはボーカルテクニック、Mulherin(ムルハーレン)からはリリックについて学べた。彼らから得たことは、次の作品を制作するときにきっと役に立つと思う。


ーアルバムタイトルを本名にした理由を教えてください。


Lido:これは、自分が育ってきた過去のメタファーでもあるんだ。前回のインタビューでも話したと思うけど、僕はノルウェーにあるとても小さな町で育って、世界から孤立してると感じていた。その気持ちを思い出して、音楽の存在を知らない若い男の子がスペースシップに乗っているというコンセプトが生まれたんだ。その男の子がスペースシップに乗って、「1532」というラジオ局を見つけて、「この魔法のようなもの(音楽)は何!? 僕も作ってみたい」と思うようになるというストーリーでアルバムを制作した。アルバムタイトルに関しては他にもいろんなアイデアがあったけど、このアルバムはノルウェーに住んでいた頃の、若い僕のストーリーでもあるから、最終的に「Peder」が一番合ってると思ってこのタイトルにしたよ。ちなみに「1532」は僕の名前を音階として書いた数字。


ー他に考えてたタイトルはどういったものでしたか?


Lido:一番最初に考えたのは「The Boy On the Spaceship」で、その次が「The Little Prince(星の王子さま)」から取った「B612」。でもタイトルが「スペースシップ」だけだと、僕のストーリーだってことを忘れちゃうと思って。


ー今になって本名のPederをよく出すようになりましたが、Lidoを中心に使ってきた理由はなんですか?


Lido:本当は名前の発音が少し違うから、アメリカ人にPederと呼ばれると違和感を感じてた。だから昔はPederと呼ばれるのが嫌だった。Lidoという名前はケニヤで出会った子に付けられた名前で、僕を完璧に表す名前だと感じた。色んな名義で活動してきたから、色んな名前で呼ばれるのに慣れてるのもあるけど、ほとんどの人はLidoと呼んでいるよ。



ーアルバムに収録されている曲はどんな時に聴くのがオススメですか?


Lido:「Rise」は日の出を見る、朝にぴったりな曲。「Please Fasten Your Seatbelt」は真夜中に、混乱していて色んなエモーションを感じて寝れない時に聴きたい曲。「Layaway」はドライブしてる時に聴く曲。「Part Time」は葉っぱ吸ってる時に聴くのが好き。「University」はテンポが激しく変わる曲だから、心の準備をしてから聴かないといけない。友達に「やばい、’University’を聞いた後、しばらく無音の環境で大人しくしないといけなかった」と言われた。


ーそういうつもりで作った曲なんですか?


Lido:そうかもね。その曲は、誰かと遠距離でコミュニケーションを取ってる時に感じるような混乱してる気持ち、悪いタイミングで何かが起きたときの複雑な気持ちをイメージして作った。そういう気持ちがいっぱいで、音楽を通して発散することしかできなくて出来た一曲。フラストレーションを感じたり、怒ったり、悲しんだり、でも解放感な部分もある複雑な気持ちを表す一曲でもあるよ。


ー他の曲も教えてください。


Lido:「How To Do Nothing」は日が落ちてベッドの上で誰かと一緒に聴く曲。「Best For You」は、恋愛がうまくいってないとき、誰かと別れちゃったり、なかなか解決できない問題があって、気持ちを吐き出さないといけないときの曲。「Postclubridehomemusic」はそのまんま、クラブの後のウーバーの中で聴く曲。「Pure/Santiago」は、リセットしたいときにいい曲。前半の「Pure」はその時感じてる気持ちを深く感じさせる、後半の「Santiago」はその気持ちを発散させる感じ。あとは、「Pure」はノスタルジックな気持ちでもあって、「Santiago」は新たな始まりでもあり、これから頑張っていこうということを表現する曲でもある。


ー今回のビジュアルはよりレベルアップした気がしますが、このビジュアルを表現するためにどんなことをしましたか?


Lido:アルバムが完成してからビジュアルを考え始めたけど、砂漠を使ってるビジュアルは本の「The Alchemist(アルケミスト)」にインスパイアされてる。あとは惑星から違う惑星へに行くところは「The Little Prince」にインスパイアされた。どちらの本も似てるストーリーだけど、全てのビジュアルが、何かを探してるような気持ちにさせることを意識した。


ー今回のアルバムにも豪華なゲストがフィーチャーされていますが、印象的だったのが私も大ファンであるシンガーのJojo(ジョジョ)でした。彼女の曲のプロデュースをあなたが手がけていることも、彼女のアルバム制作の裏話を見て知りました。そこではJojoがあなたから「自分に厳しすぎないように」とアドバイスを受けたと言っていました。自分にとって「自分に厳しすぎないこと」が大切だというのはいつ気づきましたか?そして、彼女と一緒に仕事することに対する感想も教えて下さい。


Lido:正直に言うと、まだ自分でも「自分に厳しくしすぎない」がちゃんとできてないかもしれない(笑)。最近わかったのは、作品がうまく仕上がるのは意外と一番最初の方で、よりブラッシュアップするために細かく分析したり、プレッシャーをかけちゃうと、最初の良さがだんだん消えちゃう。それに気づいたから、あんまり考えすぎないようにとアドバイスができるようになった。Jojoは素晴らしい才能の持ち主で、同じものが好きだとわかってすごく嬉しかったし、一緒にスタジオにいるのが楽しい。今回のアルバムにも素晴らしいボーカルを提供してくれたよ。


ー最後に、ファンがアルバムを聴いて一番驚くことは何でしょうか?


Lido:たくさん歌ってるところかな。ハーモニーや声域をいつもより意識して、友達のボーカルもたくさん入れた。みんなにやっと聴いてもらえるのが嬉しい!


ーありがとうございました。







【アルバム情報】




『PEDER』


Release: OUT NOW

Listen here: https://caroline.lnk.to/lido_release 


TRACKLIST

01. Yellow Bike (intro)

02. Rise

03. Please Fasten Your Seatbelt

04. Grouptext

05. Layaway

06. 5 Songs (interlude)

07. Part Time

08. University

09. How To Do Nothing

10. BEST4U

11. Postclubridehomemusic

12. Pure/Santiago


【Lido】

ノルウェー出身のシンガー・ソングライター/プロデューサー。Halsey(ホールジー)の『Badlands』のエグゼクティブプロデューサーであった 他、『Hopeless Fountain Kingdom』や最新作の『MANIC』へも楽曲提供をしている。その他、Chance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)、 Ariana Grande(アリアナ・グランデ)、Ella Mai(エラ・メイ)、A$AP FERG(エーサップ・ファーグ)、Mariah Carey(マライア・キャリー)、BANKS(バンクス)などの作品のプロデュースも手掛けている。2016 年発表のデビュー・アルバム『Everything』以来、2ndアルバム『PEDER』が 2020 年9月18日リリース予定。



Written by Amy

Photo by Michael Drummond





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