日本のファッションや音楽の中心であり、若者のポピュラーカルチャーを牽引する東京・渋谷で、kiLLaは独特の存在感を放っている。既存のヒップホップのスタイルにとらわれないkiLLaのパフォーマンスは大勢の若者を熱狂させている。ヒップホップに新たな可能性を生み出すkiLLaについて、以下から見ていく。
YDIZZY、KEPHA、Arjuna、BLAISEという個性的なラッパーとDJのNo Flower、ビートメイカーのacuteparanoiaの6名に加えて、デザイナーのYESBØWYとYuki NakajoやマネージャーのRYOSUKEを含む9名のメンバーで構成されているkiLLa。デザイナーやマネジャーをグループのメンバーに含めているところが音楽グループとしては特徴的だ。ヒップホップで存在感を放っているだけあって、kiLLaはいかにも「悪そうな若者たち」という感じで、インターネットにアップされているミュージックビデオも挑発的なものが多い。ドラッグやセックスを連想させて退廃的なイメージが歌詞やヒップホップのパフォーマンスから漂ってくるところもkiLLaのヒップホップにある特徴だと思われる。メンバーが好きな漫画として、かつて日本の一世を風靡した『AKIRA』などを挙げていて、kiLLaのヒップホップにあるディストピア的なイメージはその影響を少なからず受けていることが考えられる。しかし、kiLLaのヒップホップにあるスタイルは、何かを意図して形成された訳ではなく、あくまで自分達のイメージを追求した結果できたものだとメンバーは言う。
その見かけや音楽から意外に感じる人もいるかもしれないが、kiLLaは日本のオタク文化に肯定的だ。ラッパーのArjunaは一つの物事に熱中するオタクの集中力を評価して、日本のオタク文化は世界に誇れるものとまで言う。また、kiLLaのメンバーは「グループ」という枠組みに縛られない。「個々のメンバーがそれぞれの個性を発揮すれば、結局それはkiLLaのためになる」と考えるkiLLaは、個人が自由に活動して、独自のスタイルを築いていくことを推奨しているとさえ言うこともできそうだ。個人が独自にSNSで情報を発信する現代において、暑苦しい仲間意識や堅苦しい上下関係をなくして自由であることは、創作活動に欠かせないのかもしれない。特に、アメリカに起源があってダンスやファッションをパフォーマンスの要素に含んでいるヒップホップで、メンバーが自由でないとカッコよくないのではないかと思われる。
kiLLaは2018年の1月にファースト・アルバムの『GENESIS』をリリースした。待望のファースト・アルバムの発表を終えて、今後はメンバーのソロ活動に重点をおいていくとkiLLaは言う。自分達がそれぞれカッコいいと思ったものを寛容にとりいれて、自分達のカッコいいスタイルへと昇華させていくkiLLaは、ヒップホップに新たな旋風をもたらすかもしれない。
kiLLaの活動領域はヒップホップだけに留まらない。kiLLaは領域を超えてクリエイティブな活動を展開している。自身がパーティーオーガナイザーとなって大勢の人が盛り上がる場を作ることはもちろん、ファッションの発信やブランド制作などにも取り組んでその創造性を存分に発揮している。また、kiLLaの活動は日本にとどまることなく、そのヒップホップは海外でも人気である。フランスなどでのパフォーマンスを経て、今後も海外での活躍を視野に入れているkiLLa。ジャンルにもグループにも囚われることなく、ボーダレスに活躍するkiLLaは、ヒップホップ界における時代の寵児になることが期待されている。
Photo: https://www.facebook.com/kiLLa9393/
Written by 編集部