KEN THE 390 Billboard Live レポート|15年間歩んできた轍と、目の前に続いていく道

最新アルバム『en route』に参加した豪華客演陣が一堂に会し、KEN THE 390の15周年を祝った一夜のライブをレポート。
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2021.04.20 04:30

4月14日(水)Billboard Live YOKOHAMAにてKEN THE 390の15周年を記念したライブ「KEN THE 390 Billboard Live -15th Anniversary-」が開催された。その一部始終をレポートする。





「KEN THE 390 Billboard Live -15th Anniversary-」レポート。豪華な客演とバンドによって彩られるKEN THE 390 15周年の花道


本来であれば昨年行われるはずだった15周年記念ライブはコロナ禍によって延期に。最新アルバム『en route』のリリースを経て実現した念願のワンマンライブである。会場はBillboard Live YOKOHAMA。この日はバンド編成でのライブとなった。


Billboard LiveというとジャズバンドやR&Bのベテランアーティストが出演し、ディナーショー形式でお酒と料理を楽しみながら贅沢に音楽を堪能する。そんなイメージがあるが、コロナ禍の影響もあってか近年はヒップホップアーティストや若いアーティストのラインナップも増えた印象だ。


PES、Ymagikとともに夏を先取り


暗闇のステージへ微かに音と光が入る。開演の時間だ。「So Fresh So Fly」で登場したKEN THE 390。客席の横を通るL字型の花道を通り、ステージ上に姿を現すと「Funk U Up」「Bangin' -Weekend Classic Edition-」で会場の空気をあたためていく。バンドの紡ぎ出すグルーヴにKEN THE 390のラップが気持ち良くハマっていく様は聴いていて心地が良い。




さらに体温を上げるようにYmagikとPESを呼び込み、春を飛び越えて夏を先取りする「Summer Vacation」を披露。海のようにふくよかな歌声を響かせるYmagikと、グルーヴの波にライドするPES。昨年リリースされたこの楽曲、3人揃ってライブで披露されるのは初めてのこと。「息ピッタリだね」と楽しさを噛み締めるPESの感想はオーディエンスともリンクしていた。






TARO SOUL、SKY-HI、向井太一、盟友たちとの熱きジャムセッション


「今日はいろいろなゲストが次々に、ジェットコースターみたいに飛び込んでくる」そう告げるKEN THE 390は盟友TARO SOULを召喚。






“タロケン”復活の狼煙を上げた「We Back」ののちにSKY-HIが登場。「Lego!! 」、続けてSKY-HI「Critical Point」と3人の客演曲を投下した。TARO SOULが退場したのちもSKY-HIとの楽曲が続く。思い返してみれば、「別日で1日できるんじゃないかってくらいだよね」と2人がステージで話していたように、“タロケン”並に共演曲が多いKEN THE 390とSKY-HI。




「Turn Up」ではSKY-HIがバトルやキャリア初期においてKEN THE 390のお家芸でもあった超高速ラップパートをノーミスフルコンボで魅せる。KEN THE 390は「いつ聴いてもヤベエわ」と唸り、互いに触発されながらステージのボルテージが上がっていく。「Shock」「What’s Generation」はこの日限りのRemix。それぞれThe Chemical Brothersの「Block Rockin’ Beats」、Rage Against the Machine「Guerrilla Radio」のトラックに乗せて、サーカスのジャグリングのように軽快で息の合ったコンビネーションを披露した。




「Billboard Liveだし、バンドだからA Tribe Called Questでも良かったけど、日高(SKY-HI)とだからあえてのオルタナ」とKEN THE 390が話すように、この日のBillboard Liveに新鮮さを伴って強烈なインパクトを残したこのパートは前半のハイライトだった。


「だって自分らしくいるのが一番だから。そうありたいよね」と話すKEN THE 390と、茶化すように「そんな曲作ったンスか?」ととぼけるSKY-HIは、シンガー向井太一を招き入れ最新コラボ曲「Beautiful」を披露した。この曲に込められた思いについては3人のインタビューをぜひ読んでほしい。


KEN THE 390 × 向井太一 × SKY-HIインタビュー|3人で重ねた言葉が描く、美しき多様性


インタビュー時にも語られていたコンビネーションと、KEN THE 390いわく「嫉妬するくらい日高と向井くんは仲が良い」と語る3人の愛に溢れたバイブスと歌声が、ハードな楽曲から一転して会場を柔らかく包み込んでいた。




磯野くん、おかもとえみから漢 a.k.a. GAMI。KEN THE 390ならではのラインナップで魅せる


続いてステージ上にその姿を現したのはおかもとえみ。KEN THE 390に誕生した子どもを想う楽曲「Long Night」をしっとりと歌い上げ、メジャーデビューを遂げた注目のバンドYONA YONA WEEKENDERSのボーカル磯野くんを迎え「バンドワゴン」でピースフルな雰囲気に満たされる。






このメンツのあとに漢 a.k.a. GAMIが登場するのはKEN THE 390の幅広い音楽性とバックボーンがあるからこそ。「Re:verse」ではそれぞれが歩んできたバトルのヒストリーを振り返るラップを披露。早稲田大学のソウルミュージック研究会サークル「GALAXY」に所属し、Da.Me.Recordsと交わりながらバトルシーンに身を投じてきたKEN THE 390と、「MSC」の筆頭として新宿の街とアンダーグラウンドを闊歩し、鎖グループの代表としてバトルシーンで戦ってきた漢 a.k.a. GAMI。歩く仕草は違えど、広く同じ道の上を歩んできた戦友なのである。




端から見れば意外とも言えるその組み合わせは絶妙なフィット感を醸し、好対照なパフォーマンスを展開した。この後に続く「真っ向勝負」「Break All」で歌われているように様々な壁に立ち向かい壊してきたKEN THE 390の交友録とも言える、多様なゲストが次々に登場してきたステージはクライマックスへと加速していく。


R-指定、般若も登場。KEN THE 390が信じた道の歩み


バトルを語る上で欠かせない、最近ではCreepy Nutsの相棒DJ松永と共に地上波でも活躍中のR-指定が登場し、「ガッデム!! OSAKA ver.」を炸裂させる。この日、歓声を上げることが出来なかった会場のオーディエンスに対し「心の中で叫んでくれ」と鼓舞した。さらには、“ラスボス”として長きにわたり「フリースタイルダンジョン」に君臨した般若も登場し、R指定との「Overall」を投下。






ラップミュージック、ヒップホップへの初期衝動を綴った「Teenage Dream」から、最後は「ずっと繰り返し聴いてもらえる曲を作り続けたい」とその思いを吐露した「リフレイン」で90分のショーはフィナーレを迎える。




KEN THE 390が繰り返し言っていたのは「自分を信じた道を歩み続けること」。今でこそ多様性を重んじることの大切さが少しずつ広まってきた印象はあるが、音楽ジャンルとしてはまだ成熟しきってないからこそ“ヒップホップはこうでなければならない”という固定概念や先入観、偏見が一定数ある。日本だけではないが、特に日本ではそういった傾向が顕著に見られた時代もあるのだ。KEN THE 390はそういった価値観と戦い続けてきたのではないか。


フリースタイルバトルで頭角を顕した高学歴ラッパー。サラリーマンとして大手企業に就職したこともあった。テンプレートなラッパー像としてはネガティヴな捉えられ方をした場面は数多くあったはずだ。当時のラッパーのイメージとしては紛れもなく異端だった。そんな個性を持ち味にして、持ち前のスキルとセンスでKEN THE 390という独自のブランドを確立してきたのだ。


自身のレーベル「DREAM BOY」を牽引してきた男はそんなことを振り返りながら、自分にしか歩めなかった道をこれからも歩んでいく。この日、KEN THE 390が作り上げたショーは彼にしか出来ない表現とラインナップで、見事にそれを調和させてみせた。しかし彼にとってはこのライブも“en route”、道の通過点に過ぎないのだ。




ライブ当日にストリーミング配信も行われた「KEN THE 390 Billboard Live -15th Anniversary-」は、アーカイブが配信中だ。


チケットの購入は4月20日(火)20:00まで、アーカイブ視聴は4月20日(火)23:59までとなる。


▶https://eplus.jp/sf/detail/0265150003?P6=001&P1=0402&P59=1



written by Tomohisa Mochizuki





【リリース情報】



KEN THE 390 『en route』(読み:アン・ルート)

Release date: デジタル 2021年3月12日(金)

パッケージ 2021年3月17日(水)

配信リンク:https://linkco.re/FRgyPcHe


◉通常盤 CD+DVD DBMS-051  3480円(税抜)

仕様:CDジュエルケース

内容:オリジナルアルバム(CD)+2020.11.05 WWW X LIVE(DVD)


◉豪華盤(数量限定) CD×2+DVD×2 DBMS-052  9800円(税抜)

仕様:4枚組特殊仕様デジパック(B5サイズ)

内容:オリジナルアルバム(CD)+オリジナルアルバムインストゥルメンタル(CD)+2020.11.05 WWW X LIVE(DVD)+Music Video & 2020.12.12 まほろ座 LIVE(DVD)



KEN THE 390


HP:https://www.kenthe390.jp/


Twitter:https://twitter.com/KENTHE390


Instagram:https://www.instagram.com/kenthe390/?hl=ja





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