平成から令和に元号が変わった2019年のゴールデンウィーク。一つの時代が終わりを告げ、新しい時代の到来を感じさせるアーティスト3組をピックアップして紹介する。
平成ゲームキッズの愛読書だったファミ通が、平成のゲーム第一位を決めるアンケートを行い、およそ7000人の投票によって、ドラクエの堀井雄二、FFの坂口博信が手がけ、キャラクターデザインを鳥山明が担当したドリーム・プロジェクト『クロノ・トリガー』が選ばれた。筆者にとっても思い出深いタイトルである。例えるなら、JAY-Z(ジェイ・Z)とDr.DRE(ドクタードレー)とKanye West(カニエ・ウエスト)が一つのアルバムを作るようなものだ。
この楽曲は、日本において独自の価値観を築くラップの麒麟児 SKY-HI(スカイハイ)と、グラミーノミネートアーティストであるstarRo(スターロー)がコラボした、『クロノ・トリガー』的な凄みのあるクロスオーバー作品だ。2018年12月リリースだが、つい先日MVが公開された。
旧き良きゲームを思わせるドット画のMV、勇者目線とモンスター目線で語られるSKY-HIのラップ、starRoプロデュースのフューチャーベーストラック、それぞれが絶妙に噛み合い、楽曲をひとつの物語へと昇華。楽曲の世界観の魅力を存分に楽しめるMVだ。分かりやすいストーリーテリングを展開する、リリックの表現力はさすがSKY-HI。トラックもラップもキャッチーかつハイクオリティ。聴く人を選ばないところもポイント。
【Spotify】https://open.spotify.com/track/6BpzSIDyPiSnVdqAqefQUl?si=TCIWYjGbQw-QuGYlxYG_0g
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/music-video/role-playing-soldier/1459177425
3月6日のサルの日に発表され、多数のアーティストたちのカメオ出演も話題となった「RAP GAME」。新鋭のラッパーによってのリミックスが個性豊かで楽しい。
▶関連記事
3/6(サルの日)に突如リリース、SALU新曲「RAP GAME」MVにはSKY-HI、Awich、唾奇などが登場
原曲ではSALUのラップに対する思いや感謝、決意表明が綴られていたが、リミックスではそれぞれの視点と解釈でRAP GAMEを語っている。16小節の間にそのラッパーのスタンスがぎゅっと凝縮されているようだ。
韓国と日本を拠点に活動するSkolor(スカラー)、大阪出身、19歳の新鋭としてシーンを駆け上るKvi Baba(クヴィ・ババ)、といった令和でも活躍が期待される両者はオートチューンで歌うようにラップするが、Skolorはハイキー、Kvi Babaはローキー。声のトーンが対照的な2人のリミックスは互いの個性が滲み出ていて、リミックスというフォーマットの醍醐味が味わえる。
そして、そのストイックさと超絶スキル、天性のポップセンスを兼ね備えた永遠のゴールデン・ボーイSKY-HIのリミックスでは、ヒップホップファンが歓喜する面々の名前やラインがリリックに組み込まれており、涙モノ。さすがである。ラップは当たり前に超クール。
【Skolor Sound Cloud】https://soundcloud.com/skolor/rapgame
SALU/RAP GAME
【Spotify】https://open.spotify.com/album/60jjsOWTTYe4HpsGwA50I8?si=-6b-cJsoR0ycREjJxDQGnQ
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/album/rap-game-single/1453937001
2019年、ウッドストックから半世紀を迎える今年、ヒッピームーヴメントのリバイバルが活発だ。ストリートブランドがこぞってタイダイ染めのTシャツや、グレイトフルデッドベア、スカル、フラワー、ピースマーク、スマイリーモチーフをフィーチャーしたアイテムをリリースし、ヒッピーカルチャーのアニバーサリーイヤーを祝福している。
そういった動きもあってか、日本のヒップホップシーンでもリアルタイムのヒッピーカルチャーを体験していないキッズたちが、間接的な影響を受け独自のムーヴメントを生みだしているように感じる。
東京・羽村市出身のOKBOY(オーケーボーイ)、福生市出身のDogwoods(ドッグウッズ)の曲「ZIZIOMAGANJA」はまさにという感じ。スカスカでユルユルのトラックに、2人の気の抜けたウィスパーラップが脳味噌をトロトロに溶かしてくれる。
MVを監督したのはPARKGOLF(パークゴルフ)とのコラボが記憶に新しい山梨在住のラッパーYUNGYU(ヤンユー)と行動をともにするビデオグラファーUeno Plenty(上野プレンティ)。羽村市にある横田基地の周辺で撮影したという。
米軍基地のある街、だからこそヒッピーカルチャーの影響を受けて育ったのだろうか。そんな背景も想像させてくれる電子MDMA酩酊チューン。
(追記)
気になったので、本人にDMで詳細を聞いてみたところ、OKBOYとDogwoodsはともにカナダ・トロントへの留学経験があり、留学中や帰国してからの渡航先であるニュージーランドなどで数々の“ヒッピー”(スタイルでカテゴライズされない本物の)に出会い、人生の指南を受けたそうだ。
ちなみに横田基地近くの雑貨店を営む夫婦は、ヒッピーカルチャーを愛しており、交流していたことから、その影響もあるかもしれないとのこと。MV中の動きは自身から滲み出る“波動”を投げる波動ダンスなんだって。2人が大切にしている波動、解釈するとハッピーバイヴスと形容しておこう。それをポイっと外に向けてアウトプットしようというピースな意味がある。
彼らは5月5日、釈迦坊主(シャカボウズ)が主催するイベントTOKYO SHAMANに出演。このイベントは釈迦坊主がヤバイと思ったアーティストをキュレーション。A-Thug(A・サグ)やTohji(トージ)といった注目アーティストも登場する。気になった人は足を運んでみては。
【Spotify】https://open.spotify.com/track/6Qeubmvo3aMcumxE8MI4Wk?si=Pbf9EtoKTjqOyX8ACHNTtw
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/album/now-healing-ep/1457450627
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
photo:SKY-HI YouTube