Taeyoung Boyの新作EP『TOP BOY』、GOODMOODGOKUのセルフプロデュースアルバム、MMMと鎮座DOPENESSを迎えたJUU&G.JEEの楽曲をピックアップ。
KK(ケーケー)、RICK NOVA(リックノヴァ)とともにラップグループMSN(メセン)としても活動するTaeyoung Boy(テヤンボーイ)。MSNでの活動と並行してEPなど精力的にリリース、今年2月にはソロ名義として待望のフルアルバムとなる『HOWL OF YOUNGTIMZ』が発売となった。
Pablo Blasta(パブロブラスタ)やShurkn Pap(シュリケンパップ)ACE COOL(エースクール)、Normcore BoyzのGucci Prince(グッチプリンス) 、WILYWNKA(ウィリーウォンカ)といったラッパーが参加。加えて竹内まりや「Plastic Love」のカバーでも注目のシンガーFriday Night Plans(フライデーナイトプランズ)、WILYWNKAと共演した「DOGS」では楽曲プロデューサーにはYENTOWNのChaki Zuluを迎え、映像監督にはSpikey Johnを起用。と、日本におけるヒップホップのトレンド、クールなエッセンスをパッケージングした作品として話題となった。
アルバム以来のリリースとなる『TOP BOY』は4曲入りのEP。4曲それぞれ多彩な楽曲上でフロウする。キャッチーで比較的誰でもとっつきやすいのがTaeyoung Boyの魅力であるが、アッパーな「Speed」や、ストレートなリリックで綴られた「Age」などハードな一面も。1曲目の「PLAYA」のMVが公開されている。個人的にお気に入りは3曲目の「The Way」。フューチャーベースチックなポコポコメロディが心地良いチルでメロウな楽曲。Taeyoung Boyのセクシーさが際立つムーディなラップを聴くことができる。
【AppleMusic】https://music.apple.com/jp/album/top-boy-ep/1466936356
【Spotify】https://open.spotify.com/album/4MZWjN4P0FLBfYH8egQ6B8?si=YbnXJAm2RD-l10i-0ajshQ
GOODMOODGOKUは北海道旭川出身のラッパー。もともとはGoku Green名義でBLACK SWANから16歳でデビュー。アルバム『LEX DAY GAMES 4 』を16歳にしてリリースしたLEX(レックス)しかり、Shurkn PapのMaisonDeを筆頭に全国にトラップシティの名を発信するREMY FOOL(レミーフール)は14歳と、国内でも10代のアーティストの活躍が目覚ましいが、若くしてシーンに登場したアーティストの先駆け的存在の1人ともいえるGOODMOODGOKUは、お父さんがDJで幼少期からブラックミュージックに触れていたらしい。なんともうらやましい環境だ。ウチは、ビリー・ジョエルが多かったな(大人になってその魅力が分かったけど)。
SoundCloudがその一因と言えるが、ちゃんと若い人でも作品を発信できる環境が場所を問わず整っていってる証といえる。どんどんデビューする平均年齢が若くなっていったらいいね。僕は何者でもないけれど、若いアーティストをサポートし、世に送り出すスタジオ、レーベル、プロデューサー、アーティストにもこの場を借りてシャウトアウトしておきたい。ありがとうございます。
話は逸れたが、昨年8月にリリースした荒井優作とのコラボレーションEP『色』から、「24時間」がとくに好きだったんだけれど、GOODMOODGOKUの世界観は音数の少ないトラックに、ウィスパーに近い、ささやくようなラップに深く沈み込んでいくような感覚へ誘われる。
今回の『GOODMOODGOKU』は全編自分でプロデュースを手がけている。このアルバムは、フルでじっくりゆっくり、深呼吸しながらリラックスして聴きたいリスニングラップアルバムだ。1曲目の「Lost」から既存のヒップホップアルバムとは一線を画す実験的な姿勢が示されている。アンビエントのピアノのメロディ、インダストリアルなビート、トラックが多様に変化していき、聴く者を飽きさせない。
音と声、どちらが前に出すぎることもなく、GOODMOODGOKUのささやくようなラップとトラックが一体となって融合している。“グッドムード。”とカナ書きされたジャケの抜け感もUSアーティストっぽくて好き。
【AppleMusic】https://music.apple.com/jp/album/goodmoodgoku/1466939178
【Spotify】https://open.spotify.com/album/3q5zMnfImaAOxJTszb84pI?si=G69PKlpaTYameCplDEk0yw
まだアメリカが知らないアジア音楽の最新形をディグするSoi.48とstillichimiyaのYoung-G、MMM(トリプルエム)によるOMK(ワンメコン)。そんな彼らが、リスペクトを寄せるタイの重鎮ラッパー、JUU(ジュウ)がYoung-Gによるプロデュースでアルバム『ニュー・ルークトゥン』を来月7月にリリース。
公式によると、JUUは“88risingと真逆な方向からアジア・ローカルをレペゼンし、それ故にグローバルに通用する全くフレッシュな音楽を作り上げてしまうタイの異能”と称されている。“水牛に乗ったドレイクか? ”の文言はパンチラインすぎる。
タイトルの『ニュー・ルークトゥン』とは、タイの歌謡ジャンル、日本で言う演歌的存在であるルークトゥンを最先端HIPHOPに落とし込んだものだ。ルークトゥンにもヒップホップと同様、過去曲をサンプリングしてオマージュする様式がある。共通項のあるルークトゥンとヒップホップを融合させ、最新系にアップデートさせた作品だ。完成した暁にJuuが「これはニュールークトゥンだ」とYoung-Gに言ったという。そこで、アルバムタイトルが決まったそうだ。
異才JuuとOMKの面々が邂逅したアルバムから先行シングルとしてリリースされたのがこのTime 2 Yam「深夜0時、僕は2回火を付ける」である客演にJUUの弟子である若手フィメールラッパーG.JEE、日本からは鎮座DOPENESSとMMMが参加。
70年代のルークトゥンをループしたトラックに、鼓膜に絡みつき耳から離れないJUUのフックに続いてMMMが貫禄のラップをカマし、G.JEEが美しい澄んだ声でハードな内容をスピットする。最後は日本が誇るラップ怪人、鎮座DOPENESSがキッチリシメる。異能と異形と異常がまざりあった楽曲は、現存するどのラップにも似て非なる圧倒的個性とオリジナリティ。ニュールークトゥン恐るべしである。
日本語パートにタイ語字幕が当てられたタイ版のMVの再生回数が日本版よりもケタ1つ上回っている点にも注目。タイにおけるJUU&G.JEEの影響力と、OMKの存在感が数字として現れたといえる。JUU & G.JEEとYoung-Gによる『ニュー・ルークトゥン』はEM Recordsより7月27日にリリース。
【bandcamp(プレオーダー)】https://emrecords.bandcamp.com/album/new-luk-thung
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
photo:EM Records YouTube