コーチェラで話題沸騰の“ダーク版 Daft Punk”、Gesaffelsteinの魅力に迫る

最新アルバム『Hyperion』ではDaft Punkとも縁が深いThe Weeknd、Pharrellらをフィーチャーしている。
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2019.04.20 12:30

先週末に引き続き、開催されるコーチェラ2019 。そのラインナップの中で今、注目しておきたいのが、フレンチエレクトロプロデューサーのGesaffelsteinだ。



最新アルバム『Hyperion』でヒップホップ/R&Bに急接近  


Gesaffelsteinの以前の音楽性は、同郷のBrodinskiの初期のスタイルでもあったフレンチエレクトロの中でもダークなテクノ寄りという印象だった。しかし、今年3月にリリースされた約5年ぶりの最新アルバム『Hyperion』では、前作『Aleph』のボディなダークエレクトロのテイストを踏襲しているものの、全体的にトラックのテンポは緩やかになり、よりビート系の曲が増えた印象を受ける。ただ、前作にはなかったヴォーカル曲も数曲収録されたことにより、そのどことなく退廃的なダークさの耽美的なイメージはより洗練されたように思える。  


そんなアルバムにおけるヴォーカル曲の中では、エレクトロニックR&Bとでも呼びたくなるようなThe Weekndとの「Lost In The Fire」や、最近MVも公開され話題になっているPharrell Williamsとの「Blast Off」のような、現行ミュージックシーンの大物たちとのコラボ曲も収録。特にThe Weekndが2018年にリリースしたEP『My Dear Melancholy』でGesaffelsteinは、トラックのプロデュースだけでなくフィーチャリングアーティストとしても参加したことがにわかに話題になった。




アーバンミュージックとフレンチエレクトロの関係 


こういったアーバンミュージックとフレンチエレクトロの接点は振り返ってみると少ないものではない。現在31歳であるGesaffelsteinだが、世代的にみるとフレンチエレクトロというと特に日本ではロック、ディスコを経由したJustice、Breakbotを筆頭したEd Bangerのイメージで語られることが多い。しかし、2000年代の時点でもフレンチエレクトロの重鎮の1人であるTEKI LATEXはエレクトロの隆盛とともに注目されたフランスのヒップホップ・ユニット、TTCのメンバーだったり、先述のBrodinskiにしても近年は運営する自身のレーベル「Bromance Records」を通して、エレクトロを経由したヒップホップ系作品のリリースやそういったサウンドを得意とするアーティストたちを輩出している。そのことからフランスのシーンには典型的なフレンチエレクトロ以外にもヒップホップとの親和性が高い土壌があり、Gesaffelsteinがアーバン系アーティストに接近するのには何の違和感もない。




そういった素養を持っているだけにGesaffelsteinは、2013年に発売されたKanye Westのアルバム『Yeezus』でも「Send It Up」、「Black Skinhead」をフレンチエレクトロの第一人者として知られるDaft Punkと共同プロデュースしている。またそのほかにもラッパーではA$AP Rockyともコラボするなどヒップホップシーンからの信頼も厚い。そのためGesaffelsteinは、ポストダブステップの枠を超えて、現在ではBeyoncéやKendrick Lamarのプロデュースを手がけるJames Blakeのように、ヒップホップ/R&Bのようなアーバンミュージック畑出身ではないものの、フレンチエレクトロの枠を超えたプロデューサーという一面も持っている。 


ダーク版”Daft Punk”はメジャーフィールドで成功するか?  


そして、コーチェラ2019のWeekend1のステージでは故Maichael Jacksonを思わせる全身シルバーの特異な姿で登場。そのいでたちは無機質なロボットのようで、音楽性も相まってさながらダーク版”Daft Punk”のようだった。



また先述の『Hyperion』は、ヒップホップとの親和性という意味でDaft Punkの名盤『Homework』にも通じる要素があると評するものもいるが筆者もそれには同意だ。しかも、これまでのキャリアや近年のコラボを例に考えると、音楽性は少し違えどMVが公開されたばかりの「Blast Off」や以前のThe WeekndとGesaffelsteinのコラボ曲「Hurt You」は、The WeekndとDaft Punkのコラボ曲「I Feel It Coming」を彷彿とさせるスケールの大きさがあり、数あるフレンチエレクトロプロデューサーの中でも次のDaft PunkのポジションにいるのはGesaffelsteinに思えてならない。



なお、『Hyperion』はメジャー大手のColumbiaからリリースされており、これまでアンダーグラウンドなフレンチエレクトロシーンにいたGesaffelsteiがメジャーフィールドに進出したことを意味する。今後はそのダーク版”Daft Punk”的音楽性が、どのように広く広がっていくかに注目したい。その意味では2015年以来の出演となったコーチェラは絶好のお披露目の機会だといえる。 


Weekend2のライヴストリーミングでは先週のアンコールという形でGesaffelsteinのライヴの様子が日本時間4月22日(月)に配信される。是非ダーク版”Daft Punk”というポイントに注目して視聴してみてはいかがだろうか? 


written by Jun Fukunaga 


photo: Coachella Twitter



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