「……ドラカリス」
シュボッ!
デナーリス(Daenerys Targaryen)の命令で、炎を吐き出すドラゴン(たち)。この瞬間に心踊らない者がいるだろうか?
……と前回と同じことを書いているが、この「ドラカリス」風景を自分の爪で見事に再現してたのは、「片田舎のカリーシ」こと @otoganim_W さんだ。
中指に「ドラカリス」と書き込むという念の入れようが凄いぞ!
(by 原宿・表参道ネイルサロンAVARICE)
そんな本コラムは、髪型がジョン・スノウ(第5シーズンまで)で髭はカール・ドロゴ、性的傾向はオベリン・マーテルだが、ヴィセーリスとオリヴァーとランセルのどれがいいか悩む丸屋九兵衛がお届けする、GoTこと『ゲーム・オブ・スローンズ』連載である。
しかし、ここで「片田舎のカリーシ」の右手も見て欲しい。
おお! ダイアウルフ(direwolf)!
ということは、ドラゴンと狼が向かい合う図。まさに、The Dragon and the Wolf! 第7シーズン第7話ではないか!
とはいえ、「ドラゴンとダイアウルフでは、物語における重要度において勝負にならんやん」というのが、率直な反応かもしれない。
だが実は、スターク家(House Stark)にとってのダイアウルフは、単に「家紋として使われている動物」ではない。
つまり、ラニスター家(House Lannister)にとってのライオンやバラシオン家(House Baratheon)にとっての鹿(stag)とはレベルが違い、ターガリエン家にとってのドラゴンのように、半ば共生関係とでも言おうか。とっても深い絆を分かち合う仲なのだ。少なくとも、原作『氷と炎の歌』では。
というわけで、今回は原作寄りの回である。
トルムンド(Tormund)の部下に、イグリット(Ygritte)に横恋慕してジョン・スノウ(Jon Snow)に敵意をメラメラと燃やしているオレル(Orell)という男がいたのを覚えているだろうか。
得意技は幽体離脱(シーズン3エピソード2から登場)
彼は意識(魂?)だけ鷹だか鷲だかの中に入って、空中から敵地偵察するのが得意。本体(人間)が死んだ後も鳥の中に転移し、憎っくきジョン・スノウを鉤爪で攻撃したこともあった。
オレルの死後は、スキンヘッドがトレードマークのThenns(フリーフォークの1種族)の幽体離脱担当者がちょっとだけ出てきたりもした。
この幽体離脱はウォーグ(warg)という能力だ。日本語だと「狼潜り」と訳されていると思う。スキンチェンジャー(皮装者)とも言うようだ。
このウォーグ。
ドラマを見ている限りは、スターク家ではブラン(Bran Stark)の専売特許。自分の飼い狼サマー(Summer)の中に入ってお散歩するわ、時にはホーダー(Hodor)の体を乗っ取り、操ったりもした。
霊感少年ブランだからこその能力という解釈が一般的だろう。
しかし!
原作でのブランは「飛び抜けてはいるけど、例外ではない」。つまり、スターク家の子供たち、ジョンも含めて6人は、程度の差こそあれ飼い狼と超自然的かつ霊魂的な絆を持っているようなのだ。
第7シーズンでは、アーヤ(Arya)が狼ナイメリア(Nymeria)と再会するシーンがあった。
あれでアーヤはナイメリアが元気にやっていることを知るわけだが、原作ではちょっと違う。ナイメリアが狼の群れの女番長としてブイブイ言わせているのは同じだが、アーヤはその状況を遠く離れていても直感的に悟るのだ。
超絶的な以心伝心! 「ジョン・スノウが助かったのも、魂がゴーストの中にいたおかげ」説が出るわけである。
その深さは「飼い狼の名前がスターク・チルドレンの運命と関係している!」という説も生み出した。
●ロブ/グレイウィンド:……言ったそばから解釈不能だ。ごめん。
●サンサ/レディ:物語の開始時点では、とっても淑女だったサンサ。しかし狼の死後、過酷な経験を経て、レディ以上の存在に成長していく。
●アーヤ/ナイメリア:伝説の女戦士。その通り、アーヤは凄腕の剣士となった。
●ブラン/サマー:ブランが冬を終わらせ、夏を連れてくる運命? もっともサマーちゃん自身は死んじゃったが。
●リコン/シャギードッグ:「shaggy-dog story」は「無意味なジョーク」のこと。つまり、噛ませ犬を運命づけられていたのか。嗚呼、可哀想なリコン……。
●ジョン/ゴースト:うん、冥界から戻ってきたよね。まさに亡霊。
原作寄りの話をしたので、原作のタイトルそのものについて、もう一度考えてみる。
『氷と炎の歌』が意味するところは何か?
「ジョンとデナーリスの歌」なのか、「狼とドラゴンの歌」なのか。
あるいは、「ホワイトウォーカーとドラゴンの歌」なのか、「死と生の歌」なのか。
さらには、「氷=スターク、炎=ターガリエン」だから「スタークとターガリエンの歌」という解釈もある。その場合、結局はスタークにしてターガリエンであるジョン・スノウの物語なのか。
ま、原作との相違点もいろいろあるので、断定は難しいけど。
なんにせよ、最終章たる第8シーズンを楽しみに待ちたい……を通り越して、いろいろ心配だっ。
▷「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」は4月15日(月)午前10:00から世界同時放送
【七王国まで何マイル?連載シリーズ】
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第2回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-2
第3回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-3
第4回:七王国まで何マイル? 〜ゲーム・オブ・スローンズの歴史学 chapter-4
第5回:ホワイトウォーカーとワイトの違いって何? GoTビーストを一挙総括
第6回:ジョフリーの剣に込められたGoTファンタジーの意外な流儀とは?
第7回:衝撃の「別惑星」説! なぜGoTはファン心理をくすぐるのか
第9回:ミリオタが「ゲーム・オブ・スローンズ」の”長槍愛”を語る
第11回:あなたの大剣度は?ゲームオブスローンズの武器のチートシート
第12回:ゲームオブスローンズのドラゴンが一瞬で好きになる、見分け方とは?
第13回:GOTの大いなる伏線! スタークとダイアウルフで分かる重要設定とは?
第14回:スターク家の後継者はサンサかジョン・スノウか?GoTの王位継承制度とは
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written by 丸屋九兵衛(@qb_maruya)
photo:YouTube, Amazon
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