今年のEDC Japanにモダンヒップホップを代表するアーティストFuture(フューチャー)の初来日が決定した。アトランタが世界に誇るスターアーティストの記念すべき初ライブが、5月11日(土)、12日(日)の2日開催となる大型野外フェス「EDC Japan」で実現する。
世界中にフォロワーの多いFutureだが、初来日に選んだのは、今年で回目となるEDC JAPANの中で、ダンスミュージックやヒップホップに特化した特別ステージ「cosmicBEACH」という以外な場所をチョイス。だが毎年、時代最先端のアーティストの来日を実現させてきたEDC Japanだけに、特別なライブになることは間違いない。
特に注目は日本人や韓国人アーティストたちによるアジアンアーティストと、Futureたちアメリカン・アーティストたちが入り混じった、グローバルなラインナップだろう。
まずはJay Park + Yultron(ジェイパーク+ユルトロン)やJunior Chef(ジュニア・シェフ)といった韓国系トップアーティストのライブはダンスミュージックやヒップホップ好きだけでなくアジアンミュージックに注目する人であれば見逃せない。
さらに日本から登場するkZm&Awich(カズマ&エイウィッチ)、Masayoshi Iimori + Trekkie Trax(マサヨシイイモリ+トレッキートラックス)、Mars89(マーズ89)といったblock.fmライクでベースミュージックフリークにはたまらない面々のプレイもチェックしておきたい。
アメリカからはFutureに加えて、宇多田ヒカルとのコラボ「Face My Fears」で広く知られるようになったSkrillex、さらに今年最後のアルバムをリリースするダンスユニットMajor lazerの登場もあり、参加する人はぜひ注目してほしい。
EDC Japanのチケットは公式サイトで販売中だが、すでにソールドアウトのチケットもあり、今回参戦を考えている人は早めにスケジュールを確定させたほうがいいだろう。
EDC JAPAN開催前の事前予習として、今年1月に発売された最新アルバム『Future Hndrxx Presents: The WIZRD 』と同名ドキュメンタリー『The WIZRD』を鑑賞しつつ、今こそFutureをともに知ろうではないか。
「Mask Off」などのヒットで知られる35歳の人気ラッパー、Future。ヒップホップファンならマストなアーティストであり、全米シングル総合チャートで最高5位をマークした「Mask Off」はクラブアンセムでもあるので聴いたことがある人が多いだろう。
その知名度は言うまでもないが、日本ではもしかしたら「Mask Off」以外にちゃんとFutureを聴いたことがない、知らないという人がいるかもしれない。
最新作『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』は20曲に及ぶトラックに、Futureの過去から今、傲慢で貪欲、タフでハングリー、そしてクリエイティヴなオルターエゴを集約した自伝的アルバムとなっている。Futureの最新のクリエイティビティを感じるとともに、Future道場への入門に最適な1枚といえるだろう。
本名はネイバディウス・ウィルバーン。5枚のアルバム及びミックステープが全米1位、最新作『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』でも米Billboardアルバム総合チャート1位の座を初登場で獲得した。
Futureにとっては、『DS2』(2015年)、ドレイクとの『What A Time To Be Alive』(2016年)、『EVOL』(2016年)、『FUTURE』(2017年)、『HNDRXX』(2017年)に続く6作目の全米ナンバーワン・ヒットだ。
2015年8月8日付の米Billboardアルバム総合チャートで1位となった『DS2』から3年5ヵ月という短いスパンで同チャートに計6作をチャートのトップに送りこんだ例は、米Billboard誌によると70年代のElton John(エルトン・ジョン)以降、存在しないという。さらに、2017年2月の『FUTURE』と『HNDRXX』の2作を2週連続でサプライズ・リリースした際、“2週連続米Billboardアルバム総合チャート初登場1位”という前人未踏の快挙を成し遂げている。
これだけで、タフな仕事量とそれに伴うFutureの輝かしい功績が分かるだろう。『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』と同時期にApple Musicで公開された、同タイトルの密着ドキュメンタリーでは、DJ Khaled(DJキャレド)やZaytoven(ゼイトーヴェン)、ツアーのバックDJとしてFutureを支える、DJ ESCO(DJイスコ)といった面々が、口を揃えてFutureのストイックなスタジオワークに言及している。
誰よりもハードに、タフな楽曲を生みだし続け、アメリカ・アトランタ発のヒップホップシーンを代表し、君臨する存在がFutureなのだ。
高校生のときにコカインを売りながら撃たれたこともあるというFutureは、若くして死を意識するようになった。それに伴い音楽でストリートからの脱却を志し、OutKastをプロデュースしたRico Wadeによってダンジョンで鍛え上げられた。持ち前の音楽センスを磨かれ、ノウハウを身につけたミートヘッドは、Futureとしてダンジョンから羽ばたくこととなる。
Futureの知名度を広げた1曲として有名なのは、YCとの客演曲「Racks」が挙げられる。この頃のFutureは、流行する前のマンブルラップ(ダラダラとつぶやくようにフロウするラップ)の走りと言われており、当時日本のヒップホップパーティーでもめちゃくちゃ流行した。筆者もFutureやYCの札束を積み上げるアクションをマネしてよく踊っていた。Futureと違って、全然積み上げられてないんだけどね。
Juice WRLD(ジュース・ワールド)とのアルバム『Wrld on Drugs』やZaytovenとのアルバム『Beast Mode 2』を除けば、『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』はFutureにとって2年振りのオリジナルアルバム作品となった。
全編、獣のように唸るベースがうごめく、ハードトラップアルバムで、Futureがこれまでに作ったすべてのもののエッセンスが凝縮されている。今まで、Futureを聴いたことがないなら、前述したようにテキストブックとしてうってつけの一枚だろう。
アルバム全体のコンセプトを決定づける冒頭の「Never Stops」では、ティーンエイジャー時代に銃撃され借金まみれの地獄にいた男が、Forbesで高収入のヒップホップ・アクトとしてピックアップされるに至るまで、そしてBillboardでチャートトップを取ったこと、苦難の人生が栄光に包まれるまでを約5分という時間に凝縮した濃密な1曲。本作のイントロダクションであり、ステートメントだ。アルバムのダイジェスト版ともいうべきキートラックである。
「Jumpin on a Jet」はFutureのオハコとも言える作品性が詰まった楽曲だ。ダークなトラップに乗せ、ライヴで観客がシンガロングする楽曲を作らせたらお手のもの。内容は、自家用ジェットに飛び乗って美人な女と金、宝石…という感じ。この露骨な自慢は疑う余地もなく真実であり、ストリートから成り上がったFutureから語られるからこそオーディエンスは熱狂する。
「Jumoin on a Jet」はアルバム前にリリースされた「Crushed Up」に続いてのシングルカットだが、この曲でも同じようなことを歌っている。「Crushed Up」を手がけたのはたびたびFutureと仕事しているWheezy(ウィージー)。彼は先述したJuice WRLDとFutureの共同名義のアルバム『Wrld on Drugs』のプロデュースにも携わる。
過去から今に続く悪魔の誘惑との闘いをラップする「Temptations」はDrake(ドレイク)やとBlocboy JB(ブロックボーイ・JB)の共同制作者として多く楽曲を手がけるTay Keith(テイ・キース)がプロデュース。アウトロでFuture自身の2ndアルバム「Honest」から同名の楽曲をサンプリング。過去から今なお、悪魔(=薬物や暴力などさまざまな誘惑)との闘いが続いていることをメタ的に示唆している。
この楽曲からはFutureの神に対する信仰心もうかがえる。ドキュメンタリーでも印象深く描かれているが、Futureは神の教えにとても従順である。自身でも神の意のままに、というような発言をインタビューでしており、ライヴ前のバックステージでは祈りを捧げてからステージに立つ。
「Jumpin on a Jet」同様にハスリンラッパーお約束のスゲエだろ自慢を詰め込んだ 「Overdose」では、お金、服、宝石をオーバードーズ(=過剰摂取)していることを歌い、物質的な富と麻薬を大量にキメていることを比喩。つまり、“それくらい俺は成功しているんだ”と言っているのだ。事実、何度も言っちゃうくらい、マジでバカ売れしているんだから本人が歌いたくなる気持ちも分かる。これぞアメリカンヒップホップドリームなのだ。
本作のほとんどをソロで歌うFutureだが、「Unicorn Purp」では『Super Slimy』を共同でリリースした兄弟分Yung Thug(ヤング・サグ)、そしてアトランタ気鋭のラッパーGunna(ガンナ)をフィーチャー。「First Off」では、こちらも昨年『ASTRO WORLD』でアメリカを席巻したワールドクラスのスターラッパー、Travis Scott(トラヴィス・スコット)を迎えている。
本稿ではアルバム収録曲を全て紹介したわけではなく、筆者がアルバムから特に気に入った楽曲をピックアップした。全20曲のアルバムは比較的、トゥーマッチなボリューム感がある。しかし、それぞれのチャプターは確立させつつ、あえて曲と曲の境界線を曖昧にしたような構成で、それほどの長さを感じさせない。20曲のアルバムというより、ひとつのドラマCD(とても過激でハードな)を聴いているような感覚だ。
『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』は一言でいえば明るい作品ではない(今までも、明るい作品があったことはないけど)。濃密で重みがある。それはリアルなFutureのルーツ、過去の闇から今までがストレートに反映されているからだろう。
ヘヴィな人生を歩んできたからこそ、ドキュメンタリー『The WIZRD』では「人の人生を奪うようなことはしたくない。ただ笑っていたいんだ」と赤裸々にその心境をカメラの前で語っており、楽屋やツアーの合間には家族や仲間たち和やかに過ごす。そして自身の子供たちの教育についても熱心であることを明かし、父親としての姿勢、その愛情を吐露している。
アメリカ全土を熱狂させるストリート発のスター、Futureが登場するのは、5月11日(土)のEDC Japan cosmicBEACHステージのDay1だ。ダンスミュージックやヒップホップアーティストたちが集合するcosmicBEACHをプロデュースするのは、LA最大規模のダンスミュージックイベント『HARD SUMMER FESTIVAL』を手がけるHARDと言えば、今からワクワクする人もいるのではないか。
もうまもなく、Future初となる日本でのライヴが見られる。どんなステージを見せてくれるのか楽しみでしょうがない。まずはとにかく、確実に日本に来てくれることを祈るばかりだ。
来日を前にFutureは4月26日、アルバムから最新のMV「F&N」を公開したのでこちらも合わせてチェックしてほしい。
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
【EDC JAPAN 2019 開催概要】
■日程: 2019年5月11日(土)・12日(日)
■場所:ZOZOマリンスタジアム&幕張海浜公園EDC特設会場
■時間:12時開場、12時開演予定
■主催:INSOMNIAC HOLDINGS,LLC、GMO Culture Incubation
■後援:外務省、観光庁、千葉県、千葉市
■出演アーティスト:AK-69 presents Stacked、Alison Wonderland、Andrew Rayel、Armin Van Buuren、Artbat、Awich × kZm & Special Massive Friends 、Baggi、banvox、Bontan、Born Dirty、DARUMA & JOMMY、Excision、Future、Goldfish、Jauz、Jay Park × Yultron、Josh Wink、Joyryde、Junior Chef、K?D、KEKKE、KSHMR、Major Lazer、Marcel Dettmann、 Masayoshi Iimori+TREKKIE TRAX 、Mars89、Mason Maynard、Melé 、Mija、 N.O.S.、Ookay、Paul van Dyk、Peggy Gou、Phantoms、RL Grime、SAKUMA、Skrillex、Tchami b2b Malaa、 Tiësto、TroyBoi、 YOSA & TAAR、Yukibeb、WAFF、Whethan ※アルファベット順
■特設サイトURL: https://japan.electricdaisycarnival.com/
■チケット:
受付URL:https://japan.electricdaisycarnival.com/tickets/ English:https://japan.electricdaisycarnival.com/en/tickets/?noredirect=
Official Website: https://japan.electricdaisycarnival.com/en/
Facebook: https://www.facebook.com/ElectricDaisyCarnivalJapan/
Twitter: https://twitter.com/edc_japan
Instagram: https://www.instagram.com/edc_japan
=======
source:https://www.billboard.com/articles/columns/chart-beat/8495131/future-sixth-no-1-album-billboard-200-wizrd
https://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/8494229/future-the-wizrd-album-10-best-songs
https://consequenceofsound.net/2019/01/album-review-future-the-wizrd/
https://pitchfork.com/reviews/albums/future-future-hndrxx-presents-the-wizrd/
https://genius.com/albums/Future/Future-hndrxx-presents-the-wizrd
https://japan.electricdaisycarnival.com/
photo:Amazon