FPM田中知之、サブスク時代のDJプレイを語る

FPM田中知之とi-depナカムラヒロシが考えるサブスクリプション時代のDJプレイとは?
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2019.07.01 08:00

毎月block.fmで放送中の、日本を代表するDJの二人 FPM田中知之とナカムラヒロシ (i-dep)がお送りする、DJ視点によるクラブミュージックシーンのラジオ番組「温故知新」。6月6日の番組ではBeatportの月15ドルで音源使い放題サービスの話から、サブスクリプション時代のDJプレイについて話し合っていました。


アーカイブ放送はこちらで聞けます。

「温故知新〜own kool, check things…」

https://block.fm/radios/102

配信日:毎月第一木曜日 22:30 - 24:00

DJ:田中知之 (FPM)、ナカムラヒロシ (i-dep)





ナカムラヒロシ:最近、iTunesが終わりになったりとかですね、サブスクサブスク言うとりますけども。Beatportがですね、DJ向けのサブスクを始めまして。秋にはパイオニアのレコードボックスと連動するっていうことで。


田中知之:買わんでエエんや。言ったら。


ナカムラヒロシ:月に15ドル……14.9ドルとかでそういう風にDJが。


田中知之:現場に持っていって、要するにパイオニアのCDJと……。


ナカムラヒロシ:コンピューターをつなげればサブスクで聞いたものがそのまま。


田中知之:DJプレイできるのね。それもどうかね? もうDJですら、音源を所有しないっていうこと? もしかしたら。


ナカムラヒロシ:でも一応、ダウンロードはするけども、それは所有ではなくて貸出っていうことでしょう? サブスクだから。


田中知之:ああ、そうなんだ。どこまでが貸出かももうわからへんね。


ナカムラヒロシ:でもこの間、田中さん。僕、銀座のパーティーに遊びに行かせてもらったんですけども。面白いプレイされてましたね(笑)。


田中知之:ああ、銀座のホテルの上でね。


ナカムラヒロシ:遊びに行ったら、右側にレコードで……。


田中知之:そう。リビングルームを模したような内装で。それこそ、弓削匠くん。アダルト オリエンテッド レコーズの。彼がレコードをちょっと持ってきたりとかして内装を……言うたらホテルの2階にあるラウンジというかロビーというか、ちょっとくつろぎスペースのバーみたいな。そんなスペースでDJをやろうっていうことでね。Transit General Officeの江頭くんに誘ってもらって僕がDJをやったんですけども。


ちょうどそのいろいろと持ってきてあるレコードがあったので。それが写真に写っていたんですよ。で、「ああー」って思っていたんですけども。それこそ、いま僕がここのスタジオに持ってきているこの音源もですね、言うたらUSBのスティックと同じところに挿すんですけども、これは僕のSSDなんですよね。で、0.5テラ。どんだけ曲が動かせんねん?っていう。


ナカムラヒロシ:フフフ、3ヶ月ぐらいDJできるっていう(笑)。もっとできるか?


田中知之:もっとできるね(笑)。だから0.5テラ入ってるんで、まあ大概のもんがあるんですよ。だから大概のプレイができるんですけど。ただ本当にもう、その曲を探すという検索能力だけの話で。まあ結構大変だったんですけども。でも、ここにレコードがブワーッと並んでいて「ここに並んでいるレコード、大概が俺のここにあるぞ」って。そのボズ・スキャッグスとか大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』とかスティーリー・ダンとかドナルド・フェイゲンとかがバーッと壁にLPレコードがディスプレイされていたんですけども。もうその通りにかけたからね!


ナカムラヒロシ:そうそうそう(笑)。途中で気づいて「うわーっ!」ってなって。でもそれはレコードバッグだったら絶対にできなかったんで。


田中知之:そうね。なかなかできないんで、やっぱりデータを持ち出せるっていうのは大きいし。それでまたBeatportになったら、もうそのクラウドにあるっていうことで、それでDJできるってなるともうなんかいいのか悪いのか、ちょっとわからないね。もうね。そこまで行ったら。


ナカムラヒロシ:でも結局、準備が大切というか。あるだけでは意味がないというか。


田中知之:そうやね。


ナカムラヒロシ:でもよく考えたら1500円を月に払って……DJを始める子には最高ですよね。


田中知之:そうですね。言うたら昔はDJって持っているか持っていないかっていう。回せるか回せないかっていうのはもう持っているか持っていないかだけだったんで。


ナカムラヒロシ:昔は1500円やったら1枚しか……(笑)。


田中知之:1枚。12インチ1枚しか買えない。高い時は1枚も買えないですからね。だから、まあDJっていうののハードルは下がってるよ。本当にこの前も沖野修也くんとずーっと、久しぶりに大阪に……笠谷くんっていう映画監督の誕生日会をやろうってことで、大阪の難波にある味園ユニバースっていう、昔ながらのグランドキャバレーというか。そこをレンタルホールというかクラブに改造したようなスペースがありまして。そこで沖野くんとDJをやったんですよ。


ナカムラヒロシ:ええ。


田中知之:で、それは楽しかったんですけど、それが終わった後でずっとお好み たまちゃん vivaっていうところに飲みに行ったんですよ。


ナカムラヒロシ:おおっ、いいっすねー、viva。


田中知之:で、ああだこうだってね。沖野くんは自分が運営するThe Roomっていうクラブをね、「クラブ」っていう呼び方をやめる。で、「溜まり場」っていうね。それでDJっていうのもやめる。それで選曲家か家元なのか、わからないけど。いろんな言い方をしているんですけども、まあ「DJ」っていう言い方がダサいと。で、本当に、もうこんなのを言ったら身も蓋もないけどもDJ、アホみたいにダサいですよね、いま。


ナカムラヒロシ:フハハハハハハッ! 身も蓋もないかなー(笑)。そう思いますか?


田中知之:うん。ダサいな。しかも四つ打ちのDJ、ダサいなって思って。なんか、わかった顔して四つ打ちDJしているのとか、もう超ダサいなって思うんですよ。もう身も蓋もないことを言いますけども。酒の力を借りて(笑)。でもまあ、本当にそう思うんですよ。語弊はあるけど、「かっこいい四つ打ちのDJをやる」っていうのはかなりハードルが高いと思うんですよ。


ナカムラヒロシ:なるほど。


田中知之:単に四つ打ちのハウスとかテクノをかけていたら、なんとなくかっこよく見えるというものではもはやないし。よっぽどその選曲であるとかミックスであるとか、いろんな諸条件が揃って初めてDJってリスペクトできるようなもんで。まあ、なんかようわからんような女の子のDJがなんとなくヘッドホンを片耳当ててハウスとかテクノをつないでいるのはホンマにダサいなって思うんですよ。


ナカムラヒロシ:なるほどね。


田中知之:だからそれと一緒にされたらホンマに困るなっていう話を沖野くんとしていたわけですよね。「困る」言うたらおかしいんですけど、僕らはもっと高みを目指さなきゃいけないな。やっぱりそのためにはオリジナルトラックも作らなきゃいけないし、それが世界と勝負をするようなクオリティーになっていないといけないし。そういう風に思っているし、それで一生懸命やろうっていう、それだけの話なんですけど。


ナカムラヒロシ:なるほどなるほど。


田中知之:だから全員がダサいわけじゃないですよ。block.fmでパーソナリティーをされているようなDJの人はすごい真剣にやられていると思うんですけども。でも、それ以外の、それに似たような人たちっていうのがあまりにもいっぱいいて。それとどこが違うねん?っていう話じゃないですか。「ドンツードンツー……」っていっているのをミックスでつないで。それで……もう本当に抽象画を見てどっちが好きとかっていう世界ですよ。そういうもんなんで、どっちが上手いとか下手とかセンスがいいとかっていう、もうすごい客観的に見てジャッジが明らかに分かれるものでもないじゃないですか。だからもう本当にね、難しいなって思うんですけども。だからこそ、僕はいまやり甲斐があるなって思って。


ナカムラヒロシ:なんかね、ジャックス(JAXX DA FISHWORKS)が彼、この間質問を受けていて。それで「いいこと言うてるな」って思ったのが「音楽、DJを志してやっているんですけど、集客ができないからもう諦めようと思う」っていうような質問が来ていたんですよ。で、彼のそれに対する答えがなかなかよくて。「DJは絶対に武器が必要だ。たとえば『巨乳で美人』、それも武器だろう」って。


田中知之:DJ SODAちゃん?



ナカムラヒロシ:フフフ(笑)。


田中知之:直接は知らんけど(笑)。まあ、知識を一生懸命言いましたけど。すいません(笑)。


ナカムラヒロシ:それで、「君の武器はなんだい?」っていうのがすごくあって。それは結構的を射ているなって思って。特にいまは集客を求められる……で、ジャックスが言っていたんですよ。「僕は人も集められないけど、やれている」って言っていて。「それは自分でトラックをがんばって作っているし……」って。だからDJとしてその人がなんの武器を持っているのか?っていうことを彼は言っているんですけど。たしかにね、音でフロアを熱狂させるっていうことは本当に難しいなってやっぱり思うんですよね。いまの時代は特に。


田中知之:ほう。


ナカムラヒロシ:で、ジャックスのその答え、「君の武器はなんだい?」っていうのに僕はすごく感銘を受けたなって。


田中知之:まあ、それは全部に言えるよね。それは別にDJに限ったことじゃないよね。


ナカムラヒロシ:うん。全部のことなんですけども。そうですね。だから結構俺はその言葉にグッと来たんですよね。あ、すいません。話を結んじゃって。


田中知之:ええっ? いやいや、いいんですよ。なるほど。だから彼はトラックも一生懸命作っていると思うし、あとは海外のアーティストとの橋渡しをやっているよね。そういう意味では信頼があるし、バイタリティーがすごいある人だよね。うん。でもまあ、本当にいろんな意味で自分もね、そのDJという行為に対してすごい……この間、沖野くんとぶっちゃけて話してね。だから、そんなにDJって言って世の中的に地位が高くなるわけでもないし。どっちかと言ったら「悪いやつなんとちゃうんか?」って思われるわけじゃないですか。実際にね。だからね、そういう意味じゃあんまりポジティブなものではないんじゃないかな?って。まあ、そうなればそうなったで開き直ってがんばるかなって思っているんですけども。


ナカムラヒロシ:フフフ(笑)。



▷ block.fmラジオプログラム


温故知新〜own kool, check things…

放送日:毎月第一木曜日 22:30 - 24:00

DJ:田中知之 (FPM)、ナカムラヒロシ (i-dep) 


日本のクラブシーン黎明期から活躍するFPM田中知之とi-depナカムラヒロシが毎回ゲストをお迎えしてルーツを探るマンスリープログラム。

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田中知之


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ナカムラヒロシ


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written by みやーんZZ



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