Focusriteがアナログシンセの伝説的ブランド、Sequentialを約27億円で買収

レジェンド機材Prophet-5で知られるDave SmithのSequentialが傘下に。Focusriteの資本力をバックにした新製品に期待が高まる。
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2021.04.29 03:00

オーディオ業界の巨大派閥となりつつあるFocusriteがまた一つ強力なブランドを獲得した。いや、音楽の歴史の一部を獲得したと表現したほうがいいかもしれない。


今日的なシンセサイザーの礎となったProphet-5をはじめ、いまでも高い評価を得る数々のシンセサイザーやドラムマシンを設計したSequentialを買収し、その設立者であるDave SmithもまたFocusriteのグループに加わることとなったのだ。


ちなみに同社の過去の大きな買収金額では2019年7月のADAM Audio約25億円、同年12月MartinAudio約60億円となっているので、今回の27億円は2番目に大きな買収となる。





現在のオーディオ制作の根底を支えた革命


Dave Smithは40年以上たった今でも世界中から愛される世界初のプログラム可能なシンセサイザーProphet-5の開発者として、そしてローランドの創設者である梯郁太郎とともにMIDIという革命的な発明を残し、2013年にはグラミー賞を受賞したオーディオ機器業界の偉人としても知られている。


今では当たり前になったMIDIだが、メーカーを超えた機器の連携を可能にする規格という壮大な発明であり、今日のコンピューターとDAWソフトウェアを中心とした制作環境でも根底を支える技術となっている。


現在の音楽制作環境は彼らの発明なくしては成立しないものばかりなのだ。


一方のFocusriteはレコーディング、ミキシング機器で数々の功績を残したもう一人の偉人Rupert Neveが設立した会社。この二つの会社がこういった形で合併するのは、例えるならAppleとGoogleが未来に合併しているような感覚だろうか。


▽Prophet-5



Focusriteの資本力をバックにした新製品に期待


Dave Smithは買収について次のように語っている。

「Focusriteは理想的な我が家であり、文化および技術的にも完全にマッチしています。Phil Dudderidge(現Focusrite会長)と彼のチームは長い歴史の中で品質・ビジョンを維持し、ミュージシャンやオーディオ業界が本当に望んでいることにフォーカスした活動を継続してきました。私たちがオーディオ業界の大国に加わり、お互いの成功に貢献できることを嬉しく思います。」


なお、ブランドだけを剥ぎ取るような買収ではなく、Sequentialの通常業務及び開発業務の指揮は今後もDave Smith本人と彼のチームによって行われることが発表されている。Focusriteの資本力を背景としたあらたな環境で、Sequentialならではの製品開発がさらに加速しそうだ。





買収戦略で着実な成果をあげるFocusrite


Focusriteは数年おきに着々と有力ブランドを傘下に収めている。代表的なブランドとしてはMartin Audio、ADAM Audio、Novationなどが挙げられ、どのブランドもうまくマーケットの棲み分けがなされた構成だ。


買収後に大きく失速するブランドは多いが、Focusriteグループの製品は買収後もかわらず市場で存在感があり、堅実で計画的な買収戦略が地道に成果をあげている。


90’sレジェンド・シンセサイザーの一つであるBassStationを開発したNovationが同じグループになることで、どのようなシナジーが生まれるのかも気になるポイントだ。


▽ Novation Bass Station II



written by Yui Tamura


source:

https://www.sequential.com/


photo:

https://novationmusic.com/

https://www.sequential.com/





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