先日、アメリカで行われた第61回グラミー賞授賞式では、Childish Gambinoが昨年、世界的に話題になった「This is America」で主要4部門中2部門を制覇。特にヒップホップアーティストとしては初となった最優秀楽曲賞受賞に注目が集まったほか、主要部門以外では「This is America」で最優秀ミュージックビデオ賞を受賞し、そのMVの監督を務めたChildish Gambinoとは盟友ともいえる関係にある日本人映像作家のヒロ・ムライにも注目が集まった。
そのほかに主要4部門では、カントリーシンガーのKacey Musgravesが最優秀アルバム賞を、新世代の歌姫として注目を集めるDua Lipaが最優秀新人賞を受賞。ほかの部門では最優秀ポップ・アルバム賞(ボーカル)をAriana Grandeが、最優秀ポップ・パフォーマンス賞のグループとソロの2部門をLady Gagaが受賞。さらに最優秀ロック楽曲賞をSt. Vincent、最優秀ラップ・アルバム賞をCardi B、最優秀R&Bアルバム賞H.E.R.、最優秀R&Bソング賞をElla Maiが受賞するなど今年のグラミー賞では女性アーティストたちが躍進した印象を受けるが、Consequence of Soundによると実際に今年の女性アーティストの受賞者数は昨年比82%も増加しており、実に31組もの女性アーティストたちがグラミー賞を受賞したとのこと。
また今年は授賞式ではアーティストたちからのパフォーマンス辞退も開催前から話題に上がっていたものの、結果的には例年よりも女性アーティストのパフォーマンスは際立った印象を受ける。そんな今回のパフォーマンス枠には、司会を務めたAlicia Keysの”自分が書いた曲だったらな(Songs I Wish I'd Written)”メドレーや、Jennifer Lopezによるモータウントリビュート、今年3月に75歳の誕生日を迎えるレジェンドDiana Rossの特別パフォーマンスが披露され、さらにLady Gaga、Cardi B、Janelle Monáe、Camila Cabello、Dua Lipa、St. Vincentらも登場。人種的な背景やジェンダーに縛られないものになった。
さらに受賞式では、オバマ元大統領の夫人であるミシェル・オバマも登場し、授賞式の序盤から「音楽はジャンルに関係なく、わたしたちの尊厳と悲しみ、希望と喜びを共有する力を持っています。お互いの声に耳を傾け、お互いを引きつけることを可能にします」と宣言。
また、去年は授賞式の結果を受けて「女性アーティストはもっとがんばれ」という旨のグラミー賞を主催するNARAS(ナショナル・アカデミー・オブ・
実際に彼女は、去年のBBC Radio 1 Live Lounge出演時にはCharli XCX、Zara Larsson、MØ、Almaらとコラボし自身のヒット曲で女性たちの間で人気の「IDGAF」を披露。女性アーティストの実力を見せつけたそのパフォーマンスにはSNS上から”ガールズパワー”を感じたという評価が集まり話題になったことも記憶に新しい。
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また今回のグラミー賞でもSt. Vincentとコラボし、トップレーベルのガールズパワーを遺憾なく発揮したパフォーマンスを披露したことも話題になった。
昨年の第60回グラミー賞では全ノミネート者のうち、女性アーティストが占める割合が1割にも満たなかったため女性たちの間では批判の声が多かったが、今年はそれに比べると随分と女性アーティストに対する評価が見直された形になったのではないだろうか。特に先述のDua Lipaが最優秀新人賞を獲得した部門では、ノミネートされた8組のうち、Greta Van FleetとLuke Combs以外は全て女性アーティストで、そこには昨年来日したJorja Smithも含まれており、日本の音楽ファンからしても注目のカテゴリーになっていたはずだ。
💫Grammys💫#GRAMMYs #Grammys2019 #Grammy pic.twitter.com/arsSRV0tGx
— JMoney (@JorjaSmith) 2019年2月11日
このように今年のグラミー賞は人種やジェンダー、そして現在の音楽業界におけるヒップホップ人気が評価された形となったわけだが、Jennifer Lopezによるモータウントリビュートは、ラテン系の彼女がパフォーマンスしたことに対して批判が集まったことや、Cradi Bの史上初となる女性による最優秀ラップ・アルバム賞受賞には一部から批判や不満の声があがったことなどから、まだまだグラミー賞における人種やジェンダーに関する問題は色々な意味で根深いこともわかる。
ちなみに20年前の1999年に行われた第41回グラミー賞では、主要4部門中、女性アーティストのセリーヌ・ディオンが最優秀レコード賞を、 Lauryn Hillが最優秀アルバム賞と最優秀新人賞を獲得しているほか、マドンナが最優秀ダンス/レコーディング賞と最優秀ポップ・アルバム賞、Sheryl Crowが最優秀ロック・アルバム賞、Brandy & Monicaが最優秀R&Bパフォーマンス・デュオ/グループを受賞している。そのため、今、振り替えてみるとこの年のグラミー賞は女性アーティストたちが活躍した年だったことがわかる。
Much has changed in pop culture since 1999. Here's a look at the best of the Grammys from 20 years ago pic.twitter.com/kf1rDfnEgL
— TicToc by Bloomberg (@tictoc) 2019年2月11日
次の20年後にはグラミー賞は一体どのように変わっているのだろうか? 現在、業界が抱えている問題が改善されていれば良いなと思うばかりだ。
written by Jun Fukunaga
source:
https://www.grammy.com/grammys/news/2019-grammy-awards-complete-nominees-and-winners-list
https://www.hollywoodreporter.com/news/31-women-take-home-awards-grammys-2019-1184290
https://www.youtube.com/watch?v=W2-PK969zfQ&list=PLzAduZ80dWSsQ4QiqrwcleIUN9KwEvRqh
https://www.vulture.com/2019/02/dua-lipa-grammys-2019-speech-step-up.html
https://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/8497850/cardi-b-defends-grammy-win-backlash
https://en.wikipedia.org/wiki/41st_Annual_Grammy_Awards
https://www.hollywoodreporter.com/news/31-women-take-home-awards-grammys-2019-1184290
https://consequenceofsound.net/2019/02/31-female-artists-grammys-2019/
https://front-row.jp/_ct/17145348
photo: St. Vincent YouTube