フットボールキットで話題! 「This is Nigeria」に見るナイジェリアの光と闇とは

ユニフォームキットが大人気のナイジェリアってどんな国? Falzによる「This is Nigeria」を見てみよう。
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2018.06.08 11:00

いよいよFIFAワールドカップロシア大会の開幕が迫り、さまざまなブランドがフットボールキットをリリースしている。NikeはKim Jones(キム・ジョーンズ)やVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)とのサッカーコレクションを発表し話題を呼んでいるが、そんななかでインラインコレクションにも関わらず、ナイジェリア代表のキットが爆発的に売れた。




ユニフォームキットが人気! だけどナイジェリアってどんな国? 「This is Nigeria」が教えてくれる


ナイジェリアナショナルチームのフットボールキットは発売と同時に軒並み完売。日本のNikeでもほぼ在庫なしという状況だ。有名デザイナーとのコラボではないインライン商品。しかも日本以外のサッカーナショナルチームがファッションニュースに取り上げられるケース自体珍しい。それくらいデザインやルックがイケてるのである。



photo:Nike



photo:Nike



photo:Nike


「スーパーイーグル」の愛称で呼ばれるナイジェリア代表をイメージし、ボディに鮮やかなグリーンと袖にはブラックとホワイトでワシの矢羽根模様を大胆にプリント。他に類を見ないインパクトのあるキットだ。フットボールファンのみならず、物欲を刺激するアイテムである。


しかし、ナイジェリアって一体どんな国なのか? フットボールファンならチェルシーのヴィクター・モーゼス、アーセナルのアレックス・イウォビを知っていて当然かもしれないが、日本で一般的に知られているナイジェリア出身の有名人といえばボビー・オロゴンくらいではないか。そんな疑問を解決してくれるのがナイジェリアのラッパー、Falz(ファルツ)である。


「This is America」をパロディしたFalzの「This is Nigeria」がバイラルヒット


Childish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)が衝撃的な内容のMVを突如公開し、バイラルした「This is America」。数々のパロディやネットミームを生んだが、中でもナイジェリアのラッパーFalzが歌う「This is Nigeria」のクオリティは一線を画すものである。


ビデオはFalzがラジカセで演説を聴いているところから始まる。Falzの父親は弁護士で、ナイジェリアでは著名な人権活動家。ラジカセから流れているのは父親の演説である。椅子に座ってギターを弾いていた男がおもむろに立ちあがり、大きなマチェーテナイフで袋をかぶせられた男を断首する。「This is America」同様、衝撃的な展開からFalzが口を開く。


"This is Nigeria, look how I'm living now, look how I'm living now. Everybody be criminal”


「俺の住むナイジェリアを見てくれ。犯罪ばかりだ。これがナイジェリアだ」


強盗。殺人。貧困。神父や警察の汚職。詐欺、性搾取、ナイジェリア軍隊F.SARSによる市民への不当な暴力。若者世代のドラッグの流行。ボコ・ハラムによる女性の誘拐。ナイジェリアを取り巻く闇が赤裸々に映し出され、Falzによって暴かれているのだ。


Childish Gambinoは俳優でコメディアンでもある。「This is America」ではアメリカの内包する狂気をピエロのようにおどけて演じてみせた。アメリカの現実を客観視し滑稽に映し出すことで、その異常性を視聴者に突きつけた。同じフォーマットだが、Falzの歌う「This is Nigeria」は、アメリカよりも知られていないナイジェリアという国の実情を描いている分、本家よりもシリアスで衝撃的に映る。







Falzの暴いた闇とスーパーイーグルという光


Falzは父の遺志を継ぎ、社会性の強い楽曲をリリースしてきた。「This is America」のフォーマットがこれほどハマるのはFalzが社会派ラッパーとして活動してきたバックボーンがあるからこそだろう。


Falzの言葉を借りれば“犯罪だらけの国”ナイジェリアの期待を背負うフットボールナショナルチームは、そのほとんどが25歳以下のメンバーで構成されている。


Nikeのユニフォームに落とし込まれた“NAIJA”の言葉には、未来志向の新しい世代のナイジェリア人たちに、自国の鮮やかなカルチャーを祝福してほしいという思いが込められている。世界で戦う新世代のスーパーイーグルたちは犯罪だらけの国に光を当てる希望だ。


ルックにも登場するアレックス・イウォビは21歳で代表の中心選手。若きスーパーイーグルはNikeのインタビューでこう語っている。


「イングランドで育ったけれど、ナイジェリアが故郷だ。ゴールを決めると踊って、トランペットを鳴らしてドラムを叩く。情熱とエネルギーを感じるよ。ホワイトとグリーンのユニフォームを着ることで誇りを感じられる。ワールドカップに出るのは俺たちだけじゃなく、国民やファンの夢なんだ。サポーターのみんなが“ナイジャ代表”なんだよ」。





photo:Nike



photo:Nike



photo:Nike



photo:Nike



2月にNikeはアレックス・イウォビら、代表選手にユニフォームをお披露目したときの映像を公開している。スーパーイーグルたちは各々キットを手にしてこう言った。


「This is Nigeria」





ユニフォームキットはただのモノに過ぎない。しかし、ナイジェリアという国の実情や、そこに込められた思いを知った上で袖を通すと、より愛着が感じられるはずだ。ワールドカップは6月14日に開幕となる。スーパーイーグルたちが“NAIJA”の精神を身に纏い国際的な舞台で躍動することを期待したい。


written by Tomy Mochizukiy


source:https://blavity.com/the-brutally-honest-this-is-nigeria-shows-how-a-this-is-america-remake-should-be-done

http://www.okayafrica.com/falz-this-is-nigeria-song-video-childish-gambino-this-is-america/

https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2018/06/01/615805868/a-nigerian-rappers-take-on-donald-glover-s-this-is-america

https://news.nike.com/news/2018-nigeria-national-football-team-kit

https://news.nike.com/news/naija-mercurial-360

photo:Falz VEVO,Nike US




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