幕開けから1年。シンガーeillが語る、1stアルバム『SPOTLIGHT』に込めたファンへの想い

注目のシンガーeillにインタビュー。“初めて聴いてくれる人が見えるアルバムになった”と語る、1stフルアルバム『SPOTLIGHT』への想いを聞く。
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2019.11.08 06:00

今もっとも注目を集めるシンガーのひとり、eill(エイル)の1stフルアルバム『SPOTLIGHT』がリリースされた。作詞・作曲はもちろん、アートワークやMVの撮影にも関わったという彼女のクリエイティブを深掘るインタビューを敢行。2018年にリリースしたミニアルバム『MAKUAKE』とは少し違う想いも込められた作品に仕上がったと語る。




eill
東京出身。SOUL/R&B/K-POPをルーツに持つ新世代シンガーソングライター。15歳からJazz Barで歌い始め、同時にPCで作曲も始める。10代から清水翔太のコーラスやPAELLAS、SKY-HI等へ客演で参加する。2017年12月、韓国ヒップホップ・アーティストRheehabとOceanと制作した音源「721」をSoundCloudに公開。2018年6月、SG「MAKUAKE」、7月には、高橋海(LUCKY TAPES)が参加した「HUSH」、10月にはミニアルバム「MAKUAKE」を発表。Apple Music「今週のNEW ARTIST」、SPACE SHOWER「NEW FORCE」、Spincoaster「BREAKOUT 2019」、HMV「エイチオシ」に選出されるなど、2019年に大きな飛躍が期待されているアーティスト。2019年5月以降「20」、「ONE LAST TIME (Prod.AmPm)」、「この夜が明けるまで」等と配信シングルを連続リリース。11月6日に待望のファースト・アルバム「SPOTLIGHT」のリリース。TOWER RECORDS「タワレコメン」に選出されたほか、収録曲の「SPOTLIGHT」が全国30局以上の放送局でパワープレイに、MVもSSTV「POWER PUSH!」、M-ON!「Recommend」に決定。また12月にリリースされる韓国の人気5人組ガールズグループ“EXID”の2ndシングルにも作詞・作曲で参加するなど話題を集めている。



「昔はライブが苦手だったけど、今ではステージに立つことが自分の励みになる。」


ーまずは改めて、デビューから今までの経緯を聞かせてください。デビュー曲の「MAKUAKE」は自分でリリースにこぎつけたということですが。


eill(以下、e):デビューする前に、曲を作ってはボツになるっていう期間が2年くらい続いてたんです。どうしても10代のうちにデビューしたかったので、「自分の人生の幕は自分で開けるんだ」って心に決めて、「この曲で私デビューします!」って宣言して、デビューさせていただいたっていう感じです。


ーもともと自分でどんどん進んでいくタイプなんですか?


e:いや、そんなことなくて。周りの意見を気にしたり、みんなが良いと思うものを作らなきゃって気持ちのほうが正直大きかったんです。でも「MAKUAKE」を作る時にすごく壁にぶつかって。結局自分のことだから自分でどうにかするしかないってことにそこで気づきました。そこから意識が変わったというか、何事も自分から動かないとスタートしないんだなって思うようになって。




ーそのあとリリースしたミニアルバム『MAKUAKE』も“自分が良いと思うもの”を詰め込んだ作品だと思うんですが、聴いた人たちの反響はどうでした?


e:自分が思ってた以上に聴いてくれる人がいることにすごくびっくりしました。それまでずっと出せなかった分、ミニアルバムは自分自身が歌いたいこと、言いたかったことを書いたアルバムだったので。それに賛同してくれる人がこんなにいるんだなって。



ー自分が信じるものに共感してくれる人が想像以上にいたんですね。去年から今年にかけては、ご自身のリリース以外でも客演としていろんな楽曲に参加されていて、本当に引っ張りだこですよね。


e:ありがたいです。SKY-HIさんの「New Verse」っていう曲は日高さんが歌詞とメロディーを書かれてるんですけど、自分が書いてないものを歌うことが初めてだったんですよ。最初はちょっと不安だったんですが、歌ってみたらすごく歌いやすくて。日高さんにディレクションしてもらうのも楽しかったし、新しい経験ができました。


ー以前YOSA&TAARさんにインタビューさせてもらったとき、eillさんの声が印象的だったからオファーしたっていう話もされてました。


e:TAARさんは私が高校生のときから知り合いなんですよ。昔からずっと歌って欲しいって言われてたんですけどなかなか実現できなくて、やっと「Red」でご一緒できたんです。


ー最近だとSlushiiともコラボされたんですか?


e:そうなんです。この間、Slushiiが出演してたイベントに遊びに行ったんですけど、「一緒に歌おうよ」って言われて急遽、まだリリースとかはされてないんですけど、コラボした曲をそこで初披露しました。


ーSlushiiもアニメ好きだし、eillさんもそうなんですよね?


e:はい。もともとコラボ曲を作ってたときはメールでのやり取りだったんですけど、その後Slushiiが日本に来たときに、一緒に「進撃の巨人展」に行ったんですよ。それでめちゃくちゃ仲良くなって。私は日本語、Slushiiは英語なんですけど、お互い好きなアニメの話でずっと盛り上がってました(笑)。


ーコラボ曲のリリースが楽しみですね!今年はkoéでの自主企画イベントと、asiaでのワンマンライブも大成功だったとお聞きしました。特に初めてのワンマンライブはいかがでしたか?


e:私ひとりだけを見に来てくれてるっていう場所がまず新鮮でした。みんな私のことを知ってくれてるお客さんじゃないですか。一緒に口ずさんでる人もいるし、MCも真剣に聞いてくれてるし、どれも初めての経験ですごく思い出深いです。実は、もともとライブが苦手だったんですよ。見られることがあんまり得意じゃないタイプだったので。でも、バンドメンバーと一緒にライブを重ねていくうちに、最近はライブがめちゃくちゃ楽しくなってきてるんです。そうなったのはお客さんの存在が大きくて、すごく嫌なことがあってもステージに立つと「私は誰かのために歌えてるんだ」って思えるというか。それをステージで再確認できるとすごく励みになります。


ーeillさんの歌で励まされてるファンもたくさんいると思います。前向きに引っ張っていくような歌が多いですし。


e:そうですね。私もステージからみんなの目の輝きとか見てます(笑)。結構見えるんですよ。ライブに来てくれる女の子は可愛い子が多いから、「みんなかわいいなー」とか思ってます(笑)。


ーワンマンだけでなく夏フェスもたくさん出演されてましたよね。特に思い出に残ってるフェスをひとつ選ぶとしたらどこでした?


e:りんご音楽祭かな。私、虫がほんとに嫌いで(笑)。だから野外のフェスに出るのはちょっと不安だったんですけど、実際はめちゃくちゃ楽しくて!虫は楽屋の天井とかにもいたんですけど(笑)、それ以上に「こんなに空気がきれいな場所で歌うことってなんて素敵なんだろう」って思って。お客さんのテンションもすごく高いんですよ。昼間の出番だったので明るい場所で歌うのは恥ずかしいかなと思ってたんですけど、お客さんの顔もよく見えて、コミュニケーションも楽しかった。それでフェスにもっと出たい!って思うようになりました。でも帰ったら化粧ポーチの中に虫が入ってて、それだけはショックでしたけど(笑)。来年もいろんなフェスに出たいですね。





「聴く人の心に刺さるような楽曲を、自分らしく生み出していきたい。」


ー初めてのフルアルバムのタイトルが『SPOTLIGHT』ということで。『MAKUAKE』から『SPOTLIGHT』って、いよいよショーが始まった!っていう雰囲気がすごくあって、聴く前からワクワクしちゃいました。


e:アルバムタイトルを決める時、幕が開けたその次は自分にライトが当たることが必要だなと思って。そのライトは誰かが当ててくれるライトでもあるんだけど、自ら当たりに行くってことが今の私にとっては大事で。スポットライトは自分で当てるものなんだってことをアルバムのコンセプトに置きました。あと、『MAKUAKE』では自分自身のために書いた曲が多かったんですけど、『SPOTLIGHT』は誰かの心を照らしたいっていう意味も込めていて。聴いてくれる人が初めて見えたアルバムになりました。


ーライブやフェスを経て見える景色が広がっているという感じなんですね。プロデューサー陣もすごく豪華ですが、誰と作るかっていう部分もeillさんが関わってるんですか?


e:そうですね。この人と一緒にやりたいって言ってコンタクトを取ってもらったり、まずは自分からお願いしたこともありました。「チームeill」的な感じでいちばん一緒に作ってるのが、宮田‘レフティ’リョウさん、nabeLTDさん、Haruhito Nishiさんなんですけど。みんなでスタジオに集まって、ギター弾いて鍵盤弾いて、効果音録ってきてそれを入れて、ビートを打って…っていう感じで、みんなでずっと作ってます。アレンジを誰かに頼むっていうよりはそのチームで作品を作るという感じですね。


ー効果音も自分で録るんですか?


e:「MAKUAKE」もラストサビの前に「シャッ」っていう音が入ってるんですけど、あれは家のカーテンの音なんです。今回の「SPOTLIGHT」も歩く音とかいろいろ入れました。




ー細かいところもご自身で作り込んでるんですね。SOURCEKEYは日高さんのプロデューサーユニットですよね。


e:そうです。ラップみたいなものをアルバムに入れたいと思ったんですけど、なかなか自分ひとりじゃ難しい部分があって。もしラッパーの方にお願いするんだったら日高さんにお願いしたいと思って、お願いしました。


ーSOURCEKEYプロデュースの「Ma boy」ではオートチューンがかかったラップみたいに歌ってるところがありますね。


e:早口のところ。レコーディングのとき全然言えなくて(笑)。指導してもらって頑張りました!


ー苦労したようには全然聴こえなかったです。2曲目の「この夜が明けるまで」は、曲調はすごくポップですが歌詞は少し悲しい感じというか。


e:「この夜が明けるまで」はもともとすごく明るい曲だったんです。でも、この曲を聴いてたときに「歌詞は悲しくて切なく、ギターのイントロから始まって、メロディーは明るい曲にしよう」っていうのが突然降りてきて。それを組み立てて作りました。


ーメロディーが明るい分切なさが増してる感じがします。同じメロディーで歌詞を英語にしたのが「ONE LAST TIME」ですよね。


e:はい。日本語の方が先にできてたんですけど、英語で歌ったら絶対かっこいいなって思ってて。そんなときにAmPmさんにプロデュースしてもらえることになって、できあがったらすごくかっこいいから先に出しちゃおう!ってことで先にリリースになったんです。


ーアレンジと歌詞が変わることで全然違う印象になりますよね。「Perfect love」はシティポップ感が今までになかった感じで素敵でした。普段からこういった曲調の楽曲も聴かれるんですか?


e:山下達郎さんと竹内まりやさんが大好きで聴いてますし、山下達郎さんはライブに行かせていただいたこともあります。かっこいいですよね。だからそれをちょっと意識してアレンジをしたんです。


ーシティポップだったりダンスだったり、いろんな要素が詰まってるアルバムですね。


e:そもそもジャンルを意識して作ることは全然ないんです。『MAKUAKE』はダンス中心だったんですけど、今回はじっくりイヤフォンで聴いてもらうっていうイメージを持ちながら作ったので、わりとポップス寄りになっているのかなって思います。


ーアルバム通して生音感があるなという印象も受けました。


e:そうですね。スタジオに入ってセッションして作ることが多いからかもしれません。一緒に作ってるミュージシャンの方たちがライブの空気感とか、こう弾いたらライブで盛り上がるなっていうのを全部理解してる方たちなので。だからこそ生音にしか出せないエモさみたいなものが曲の中に入ってるのかなって思います。


ー音源で聴いててもかっこいいので、ライブで聴くのも楽しみですね。


e:レコーディングで限界までいくので、それをさらにエモくするのに毎回苦労するんですけどね(笑)。でもそういう部分を私ひとりじゃなく、みんなで作りあげるのが大事だと思ってます。




ー音の面だけじゃなくて映像面にもeillさんが関わってるということですが。「20」と「Succubus」のMVはご自身でディレクションと撮影をしたそうですね。以前から撮影もご自身でやってたんですか?


e:スマホアプリでカバー曲を歌う動画を撮ったりはしてたんですけど、ちゃんとした映像専用ソフトで作ったのは初めてでした。「20」はもともとビデオは撮らない予定だったんですけど、自分にとってすごく大事な曲だから作りたいなぁと思って。それで自分で作っちゃいました。やってみたらすごく楽しかったし納得いくものができたので、じゃあ「Succubus」も作ろうってことになって。自分でやれることは全力でやりたいと思ってるので、できることは自分の力で。


ー映像を作るにあたって苦労したことはありました?


e:「20」は等身大の私を見せたいと思って、私の友達に出演してもらいました。友達と花火してるところとか、普通にご飯食べてるところを撮ってたんですけど、撮った動画の数が多すぎて尺に全然収まらなくて。全部楽しそうでいい感じに撮れてたので、それを厳選するのに苦労しましたね。あとはスマホアプリなら色味の調整とかも簡単だけど、色味を作るところからやらなきゃいけなくて。撮った場所によって明るさも全然違ったので、その編集に時間がかかっちゃいました。2,3週間くらいずっと編集してた気がします。


ー出来上がったときの達成感がすごそうですね。


e:アップされたビデオを電車の中で泣きながら見ました(笑)。




ーアートワークもいつも素敵ですが、こちらもアイデア出しとかをするんですか?


e:そうですね。「こんな感じのジャケットがいい」ってアイデア出して、みんなと相談しながら作ってます。『SPOTLIGHT』は今までのジャケと少し違う感じになってて。ストリートっぽいイメージで撮りたくて。だから衣装は私服だし、場所は私の地元のコンビニの駐車場なんです。


ーまさに今のeillさんがアートワークでも表現されてるんですね。最後に、21歳の1年間はどのように過ごしていきたいですか?


e:デビューしたときは何がしたいのか明確に見えてなかったところもあったんですが、やっと誰かのために歌いたいと思うようになれて。今この『SPOTLIGHT』を作り終えて明確に見えた部分がけっこうあったんですよ。これからは、まずは人として自分の考えをきちんと持っていきたい。歴代のアーティストの方も音楽とかファッションだけじゃなく、考え方が素晴らしい人ばかりだと思うので。私が憧れるのはおこがましいかもしれないですけど、まずは自分の考えをちゃんと持って、堂々とできる自分になるっていうことがひとつ。あとはさっきも話に出た音楽のジャンルについて。自分の音楽がひとつのジャンルに絞りきれないことを気にしてた部分もあったんですよ。周りからも絞ったほうがいいんじゃない?って言われることもあったし。でもそれが私だし、今の時代はジャンルとか関係ないと思っていて。私より若い子なんかもっとそういうのが関係なくなってくるだろうし。その時のシーンだったり、聴く人の心情に刺していけるような曲であればジャンルなんか関係ないって思えるようになったので。そういうものにとらわれないで、自分らしく新しいものを作っていけたらいいなって思います。次の作品も作り始めてるので楽しみにしていて欲しいです。




【リリース情報】


eill『SPOTLIGHT』




▶配信リンクhttps://ssm.lnk.to/spotlight


eill Official HPhttps://eill.info/#top



Photo by Ki Yuu


Written by Moemi





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