皆さんはDMXという人物をご存知だろうか。DMXはアメリカ合衆国出身の男性ラッパーとして活躍するアーティストであり、ほかにも作詞家や俳優といった幅広い才能を持った人物である。ここではDMXについて、彼のこれまでの活動や生活について紹介しよう。
DMXは本名をEarl Simmons(アール・シモンズ)といい、1970年12月18日生まれの男性アーティストである。DMXという芸名を付けたのは、Earl Simmonsが1980年代に使用していたドラムマシンであるOberheim DMXに由来している。出身はアメリカ合衆国ニューヨーク州ウエストチェスター郡ヨンカーズで、1990年から音楽活動を始めている。
ラッパーとして音楽活動をする一方、作詞家や音楽プロデューサー、俳優としてなど幅広い活動をしている。
DMXはニューヨーク市で生まれた後、幼少期にヨンカーズへ移住し、その後はストリートでの犯罪行為を多く行っていたが、ビートボクシング、ターンテーブルなどに取り組んでいるうちにヒップホップに関わることが苦難の日々からの脱却につながると考えるようになった。このことがDMXがラッパーとして活動しようと考えるきっかけになっている。
1991年にはTHE SOURCE MAGAZINEの中のコラムであり、未契約の有望ラッパーを紹介している「Unsigned Hype」の中で取り上げられたことをきっかけにレーベル「Ruffhouse」と契約を結ぶこととなった。翌年の1992年にはシングル「Born Loser」でデビューするものの、十分な結果を出すことはできなかった。
1994年には2ndシングル「Make a Move」をリリースし、1997年にはアメリカ合衆国出身のレッドマンやメソッド・マンらと参加した客演では高い評価を獲得している。1998年にも多くの客演を経てヒット・シングルであった「Get At Me Dog」をフィーチャーした自身のファーストアルバム「It's Dark And Hell Is Hot」をリリースしている。この曲は、初登場にもかかわらず全米チャートで首位を獲得し、売り上げ枚数は400万枚を超えるほどであった。
このため、DMXはアメリカ合衆国出身のヒップホップMCとして活躍していた2pacと比較される立場となるのである。
1999年にはセカンドアルバムである「Flesh of My Flesh, Blood of My Blood」をリリースし、この楽曲も初登場ながら1位を獲得している。また、同年末にはサードアルバムである「...And Then There Was X」を出した。このアルバムの中に収録されている「What's My Name」と「Party Up(Up In Here)」がヒットし、このアルバムの売り上げ枚数は500万枚を突破するという記録を出すこととなった。
2001年にリリースされたアルバム「The Great Depression」の評価はあまり良くなかったが、2003年には大ヒットシングル曲となった「Where Tha Hood At」と「Get it on the Floor」を収録した5作品目のアルバムとなる「Grand Champ」をリリースし、このアルバムも全米チャートで首位を獲得したことから、DMXは史上初のデビュー作からアルバム5作連続チャート首位を取ったアーティストと言われるようになった。
2006年にはコロンビアレコードと契約し、シングル曲やアルバムをリリースしていく。このようにラッパーとして輝かしい業績を達成する一方で、DMXは俳優としての活動も行っていた。映画「Belly」や「ロミオ・マスト・ダイ」に出演したほか、アクション映画にも進出するが、ヒット作品となった「ブラック・ダイヤモンド」以後はヒット作には恵まれなかった。
ラッパーDMXの私生活についても少し紹介しよう。DMXには前妻であったテイシェラ・シモンズとの間にできた4人の子供を含めて10人の子供がいる。また、DMXには逮捕歴もある。暴走行為や麻薬所持、文書偽装などいくつもの罪で逮捕されているのである。1998年にはレイプと肛門性交、そして拉致監禁によって起訴、翌年には傷害の疑いで逮捕されたが、どちらも無罪になっている。
2021年に復帰作として9年ぶりのニューアルバム『Exodus』を制作していたDMXだが、リリース1ヶ月前に他界してしまった。Swizz Beatz(スウィズ・ビーツ)がエグゼクティブ・プロデューサーをつとめた遺作アルバムにはJay-Z(ジェイ・Z)とNas(ナズ)をはじめ、Alicia Keys(アリシア・キーズ)、Lil Wayne(リル・ウェイン)らが参加している。
アルバム自体はほぼ生前に完成されていたとのことだが、リリース時にすでにこの世にいないとはなんとも寂しいことか。旬なラッパーも含め、彼の存在に影響されたラッパーは数知れない。
4月2日に心臓発作を起こし、病院に緊急搬送されたのちに4月9日に亡くなったラッパーのDMX。後日その死因がコカインの過剰摂取によって心臓発作を引き起こし、脳への血液循環が悪くなったことで心停止に至った、いわゆるオーバードーズであることが明かされた。
DMXが倒れてすぐに救急隊員が駆けつけ病院に搬送され、一時は脈も戻ったとのことだが、脳死の状態でありそのまま息を引き取ったという。彼の病院前には彼の曲を鳴らす人々が集まっていたことからも、どれだけ愛されたラッパーだったのかがわかる。
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Photo: https://www.facebook.com/dmx/
Written by 編集部