日本から世界へ。LA在住シンガーソングライター・DedachiKentaのルーツと現在、見据える未来

【インタビュー】シンガーソングライターDedachiKentaが語る、自身のルーツとLAでの生活、1stアルバム『Rocket Science』の制作秘話。
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2019.11.08 03:00

「僕の音楽でたくさんの人を励ましたいんです。」真っ直ぐな眼差しでそう語ってくれたのは、今注目のシンガーソングライター、DedachiKenta(デダチケンタ)だ。LAの大学に通いながらアメリカと日本を往復してアーティスト活動を行う彼は、11月で20歳。10月30日にリリースされた1stアルバム『Rocket Science』には、国境もジャンルも軽々と飛び越える現在のDedachiKentaを体現するような音楽が詰まっている。そんな彼のバックグラウンドを知るべく、幼少期からの音楽体験やLAでの生活についてインタビュー。また、アルバム制作時のエピソードは、彼が近年で一番影響を受けたというサウンドプロデューサーのKOSEN(Colorful Mannings)とともに語ってもらった。




DedachiKenta
1999年11月26日、長崎生まれ、千葉育ち。18歳の夏に渡米。現在ロサンゼルスの大学に通う19歳のシンガーソングライター。幼少期よりアコースティックギターをはじめ様々な楽器を嗜む。14歳からYouTubeを使って自身の動画を配信。撮影も自らが手掛ける一方、その清廉な歌声は瞬く間に世界中の多くの音楽ファンの心を癒し、虜にした。2018年11月21日にオフィスオーガスタの新生レーベル“newborder recordings”より第一弾アーティストとして「This is how I feel / memories」の2曲でサブスク先行配信デビュー。翌月12月5日に両A面アナログ7inchEPとして同曲をリリース(デジタル配信も同時スタート)。洋邦の枠を超え、全国FM29局のパワープレイに選出される。2019年、YouTubeが注目するアーティスト10組‟Artists to Watch”にも選ばれ、4月10日にはタワーレコード限定CD『breakfast for dinner』を発表。5月22日リリースのAmPmの最新作にVocalとLyricで参加した「more feat. DedachiKenta & FUNTYME」も話題に。現在LAと日本を往復しながら1年をかけて制作された待望の1st Album「Rocket Science」を10月30日にリリース。



「小さい頃から歌うことが好き。10代はYouTubeにカバー動画を週1本はアップしていました。」


ー小さい頃から教会で歌っていたとのことですが、何歳くらいから音楽が好きだなって思い始めたんですか?


DedachiKenta(以下、D):本当に小さい頃から歌うのが好きで。6歳くらいのときに叔母さんの結婚式で「Oh Happy Day」を家族みんなで歌ったんですよ。僕はソロパートを担当したんですけど、その時から歌うのが楽しいなって思い始めましたね。小学生の頃は教会の少年少女合唱隊に入って歌ってました。そこでもソロを取ってたんですよ、ソプラノで(笑)。


ー『天使にラブソングを2』のあのシーンですか。普段聴いてたのはそういった教会で歌われるような音楽が多かった?


D:そうですね。小学生までは、毎週教会に行って歌う賛美歌しか知りませんでした。徐々にiPodを持ち始めたり、ラジオを聴き始めたり、あとは姉や友達に教えてもらって、エド・シーランやテイラー・スイフトとか海外のアーティストを知りましたね。今でもずっと大好きなんですけど。


ー海外のアーティストのどんなところに魅力を感じました?


D:エド・シーランは弾き語りがすごいですよね。僕もギターを弾くのですごくリスペクトしてるし、テイラー・スイフトは発信する音楽がどんどん変わっていくけど、どんなジャンルを歌っても彼女らしさが残ってる。『reputation』とかダークになったけど、それでもテイラーだっていうのがわかるじゃないですか。僕も以前、いろいろな曲をカバーしてYouTubeにあげていましたが、どんな曲を歌っても自分らしくなるっていうところに憧れますね。


ー日本のアーティストの曲を聴くこともありますか?


D:両親が聴いていた歌は知ってます。BEGINさんの「涙そうそう」は、小さい頃父と一緒にお風呂で歌ったりしてました(笑)。日本のアーティストで聴いてたのは、秦 基博さんとか。それとAimerさんの「カタオモイ」という曲が、切ない歌い方が印象的で好きでしたね。そのほかはほとんど知らなくて。




ーやっぱりギターを弾きながら歌うアーティストや楽曲がお好きなんですね。Dedachiさんはいつ頃からギターを始めたんですか?


D:小学6年生のときに始めました。僕の周りでギターを弾いて歌うのが流行ったときがあったんですよ。父の古いギターが家に置いてあったので僕もやってみようと思って、友達にG,C,D,Emのコードを教わって。最初はそれしか知らなかったのでそのコードを練習しまくりました。そのあとにアルペジオとかも弾けるようになって、こういう音も出るんだって発見して。それからどんどん自分のギターの知識が広がっていきました。いまだに、まだまだ学ぶことがたくさんあるなと思います。本当に深い楽器ですね。


ーギターを始めて、YouTubeの動画配信もスタートしたと。


D:そうですね、YouTubeは14歳のときに始めました。それからアメリカに行くまで4年間ほど。カバーを歌ってる人の動画をよく観ていて、それで僕もギター弾いて歌うならできるかなと思って始めました。


ー撮影もご自身で?


D:自分でやってました。最初の2年間は1ヶ月に1本くらいのペースだったんですけど、どんどんYouTubeが面白くなってのめり込みました。オーディエンスがどうやったら増えるのかを調べたら、毎週出した方がいいってことだったので、最後の2年間は毎週出してたんですよ。やってみるとやっぱり週に1本はかなり忙しくて(笑)。時間がある時は弟に撮影を頼んでハンドモーション入れてもらったり、編集も凝ってみたんですけど、あと3時間後に出さないと!みたいなときは三脚を置いて自分で撮ってました。


ーストイックですね(笑)。


D:超ストイックです(笑)。毎週8時間ぐらいYouTubeに費やしたので。ただ、それが自分のリズムになっていたみたいで。YouTubeに出さなくなってから1、2ヶ月は自分の中のリズムが狂った感じで不思議でした。


ーそうやってカバーを歌いながら、自分の曲もつくり始めたんですか?


D:初めて自分で書いたのがデビュー曲になった「This is how I feel」で、17歳のときにつくったんです。その後サウンドプロデューサーのKOSEN(Colorful Mannings)さんと出会ってから、より本格的につくるようになりました。




KOSEN(以下、K):知り合ったのは2018年の5月で。それから一緒に音楽をつくってます。僕も祖父母と父親がクリスチャンで、Dedachi君と同じような環境で育っていて。あとはカリフォルニアの大学を出ていたりとか、いろんな共通点があったんだよね。


D:だからすごく息が合ったんです。


ー普段曲をつくるときはどんな感じで?


D:自分でつくるときと、KOSENさんとコライトするときで違うんですけど。自分で全部つくるときは、部屋でギター弾きながら。アイデアは普段の生活で急に出てくることもあります。デモをつくるときは歌詞も全部つけるんですよ。メロディーだけで人に聴かせるのは完成してない感じがして気持ち悪いので。歌詞も入れて、どういう曲にしたいかっていうのをちゃんと伝えられるようにしています。


ー歌詞は英語がメインですよね。


D:そうですね。英語の歌を聴いて育ったので、こういうグルーヴにはこういう言葉が合ってるとか、英語のほうがナチュラルに浮かびます。だから英語がほとんどですね。





「LAで友達とジャムセッションしてるときが一番楽しい!」


ー去年からLAの大学に通い始めたということですが、LAに行こうと決めたのは何か理由があったんでしょうか。


D:去年の8月からリベラル・アーツの学校で、音楽を専攻してます。インターナショナルスクールに通っていたので、昔から海外で勉強したいなと思ってたんです。LAに行こうって考え始めたのは17歳くらいのとき。自分がリスペクトしてる人や友達もアメリカにいたし、アメリカで音楽を勉強するならLAかなと思って決めました。


ー不安はなかったですか?


D:ありましたよ。家族もいないし、友達も東海岸の方に行った人が多かったので、西海岸に知り合いがいなくて。小学校1年生から高校3年生まで同じ学校にいて、そこから出たことがなかったので、違う世界に行って全く最初から始めるっていうのは怖かったです。今はすごく楽しくて、日本とLAどっちがホームなのかわからなくなってきました(笑)。


ーLAの生活では何が一番楽しいですか?


D:やっぱり音楽に取り組んでいるときかな。本当に心の底から楽しいって思うのは友達とジャムセッションしてるときです。自由に歌って自由に弾いて、自分を表現できる場所。みんなも自由に表現してるんです。僕の友達も世界中からLAに来てるので、自分の国の音楽についても教えてくれるし、LAで見つけたミュージシャンのことも教えてくれる。だからLAに行ってから聴く音楽がすごく増えました。


ーそのジャムセッション、覗いてみたいです。日本でも移動中に課題をやってる姿がSNSでアップされてましたが、学生生活とアーティスト活動を並行するために意識してることってあります?


D:パニクらないことですかね(笑)。やることがほんと多くて。今ちょうど中間テスト期間なんですけど、僕は途中までしか受けてないので、帰ったらその続きもやらなきゃ。考えすぎるとパニックになりそうになるので、あまり考えないように(笑)。目の前のことを一つひとつ冷静にこなしています。





「音楽で人を励ますことが僕の目標。」


ー1stアルバム『Rocket Science』はいつ頃から制作していたんですか?


D:アルバムにしようって動き出したのは今年の5月くらい。大学が夏休みに入ってからですね。このアルバムには「This is how I feel」「Memories」以外にも去年の夏にレコーディングした曲が何曲かあって、それらを完成させつつ、新曲もつくってアルバムにしようって感じでした。アルバムをイメージしてつくった曲は「I’ll be fine」と1曲目の「Rocket Science」。このアルバムに入れなかった曲もあります。8月頭まで日本でレコーディングをして。そのあとLAに戻って、残りの2曲をレコーディングして。夏休みをフルに使って頑張りました。


K:2日に1回くらいスタジオ入ってたよね。


D:大学が始まる前日がマスタリングでした(笑)。


ー前向きにさせてくれたり、そっと背中を押してくれるような楽曲が詰まったアルバムだなと感じたんですけど、自然とそういう曲が集まったんですね。


D:僕は自分が聴いてハッピーになる、自分が聴いて励まされる歌しかつくりたくないんです。だからテーマが共通してるのかもしれないですね。


ー私がDedachiさんを知ったのは「Fly Away feat.Kan Sano」でした。東京からLAに行くワクワクと少しの不安が歌われていて、等身大のDedachiさんが表現されてるのかなと感じたんですが。


D:本当にその通り。この曲は去年の5、6月くらいにつくって、ベーシックなバックトラックは渡米前に録ったんです。LAに行くことが決まっていて、不安もあるけど楽しんでいこうって思っていて。アメリカに行くまでずっとそういうことを考えてたので、それを歌にしました。


ーKan Sanoさんをフィーチャーしたのは何かきっかけがあったんですか?


K:間奏の部分に僕が打ち込みでエレクトリックピアノを入れてたんですけど、誰かにソロを弾いてもらったらいいんじゃないかっていう話が出て。そこからKan Sanoさんにお願いすることになりました。


D:Kan Sanoさんにはこの曲以外に「I can’t seem to let you go」や「Step by Step」にも参加してもらいました。




ー英語バージョンはタイトルが「Catch Me If You Can」。


D:最初は日本語の入ったバージョン用に思いついたアイデアだったんです。ただ、配信の登録をするときに英語バージョンと別のタイトルにする必要があると聞いて、それで日本語バージョンをシンプルに「Fly Away」、英語バージョンのほうを「Catch Me If You Can」にしました。


この曲にはちょっと面白いエピソードがあるんですけど。今年の夏休み、大学の友達がそれぞれの国に帰省してH&Mに行ったらこの曲が流れてて、動画でその様子が送られてきて、全世界のH&Mでストアプレイされたってことを知ったんです。プロモーションしてないのに、誰かがピックアップしてくれたみたいで。しかもそれが日本語バージョンだったんですよ。


K:Twitter見てても、英語バージョンのほうを日本人がシェアして、日本語バージョンを海外の人が聴いてるよね。日本向けにつくったほうが海外で受けたっていうのは面白い。「Fly Away feat.Kan Sano」はSpotifyでも世界中の人に聴かれていているし。


ー曲自体も羽ばたいていった、みたいなエピソードですね!KOSENさんとの共作の「Ambiguous」はエレクトロのトラックが印象的でした。こういったトラックで歌うのはこの曲が初めてですか?


D:そうですね、KOSENさんと出会うまでは歌ったことなかったかな。KOSENさんの曲は独特な音が使われているので、すごく好きなんです。


K:僕も彼と制作を始めた当初は、エレクトロな楽曲を歌うイメージはなかったんですよ。でもこの曲は不思議とすんなりできたなって感じでした。


ー歌詞を乗せるのもスムーズにいきました?


D:結構難しかったですね。英語はすっと出てきたんですけど日本語が難しくて。限られた日本語でどのくらい伝えることができるかっていうところでいろいろトライしました。


K:最初につくったときは、2人でギター弾いてグルーヴを考えて、そこで仮の歌詞を乗せたんです。そのあとで中村彼方さんという知り合いの作詞家の方にもアイデアをもらって。スタジオで結構何度もトライしたんだよね。




ー時間をかけてつくられた曲なんですね。「Life Line」は前向きな中にも少し影があるところが印象的で。少し弱い部分もあることですごく共感できました。


D:以前マネージャーさんとソングライティングのことを話していたときに、ハッピーな歌をつくる時も少し悲しい要素を入れるともっと広くオーディエンスに届くよ、っていう話を聞いたんですね。その話がかなり僕に響いたんです。「Alright」もハッピーな音だけど、歌詞を見ると暗いところもあったり、自分は完璧じゃないっていうのをちゃんと出して。完璧じゃないけど前向きに行こうっていう歌詞が多いですね。




ーDedachiさんの楽曲には「勇気づけられた」っていうコメントも多いですが、きっとそういうところがリスナーにも響いてるんですね。


D:そうだと嬉しいです。音楽で人を励ますことが僕の目標なので。「20」という曲もそうですね。これはLAでAdamというプロデューサーとKrystaというソングライターとコライトしたんですけど、制作時間が5時間しかなかったんですよ。Adamに「どういうテーマがいい?」って聞かれて、「もうすぐ20歳になる前に今の気持ちを歌にしたい」って、すごくシンプルに決まりました。今まであったことも振り返りつつ、これから「Jumping into 20」する歌にしようって話してつくったんです。これから起こること全てに僕は飛び込んでいこう、みたいな。未来に向かっていくような歌にしたいなと思ってつくりました。


K:毎年21、22ってつくってもいいかもね(笑)。


D:100までつくりますか(笑)。




ーアルバムの最後の曲「More than enough」はEastWest Studiosでレコーディングしたとか。


D:EastWest StudiosとIgloo Musicで録りました。僕もアメリカの大きいスタジオでレコーディングするのは初めてだったので、すごく印象に残ってます。しかもこの曲をミックスしてくれたエンジニアは数々の映画のサウンド・トラックを手掛けたJustin Moshkevichという人で。彼のレコーディングの進め方にもすごく驚いたし、彼がつくる音が本当に壮大で。とにかく感動しました。


K:ストリングスが8人、ホルンが3人。それも2回か3回重ねていて。ギターはプリンスのバンドで弾いていたKat Dyson。すごく豪華な人たちに参加してもらえたんです。


ー最後に、今後の活動のヴィジョンを教えて下さい。


D:やっぱり世界に出ていきたいですね。僕は日本人だけどちょっとユニークなところで育ったので、完全に日本人な感じもしないし、完全に外国人な感じもしない。自分がどこに属してるのかわからないっていう感じが今の自分で。だから音楽の面でも「日本人アーティスト」っていう感じじゃなくて「自分はアーティストで、音楽が大好きで、音楽でいろんな人を励ましたり、ポジティヴな影響を与えていきたい」っていう気持ちで活動していきたいと思ってます。場所もどこだっていい。人がいれば世界中どこでもいいです。


ーコラボしたい人やトライしたいジャンルはありますか?


D:このアルバムではたくさんの人とコラボできて、すごく刺激をもらいました。特にKOSENさんと出会う前は、KOSENさんがつくるような音楽は聴いたことも歌ったこともなかった。自分にできるかなと思ったんですけど、やってみたらすごく楽しくて。それによって自分自身の音楽が広がったので、これからもいろんなジャンルに挑戦してみたい。ロックでも、ヒップホップでもジャズでもカントリーでも、いろんな音楽を楽しんで、音楽が大好きな人たちとコラボしていきたいですね。Coachellaを目標にする?なんて話もみんなでしてたんですけど、目標をひとつに絞っちゃうのは違うかなとも思うので。僕の音楽でたくさんの人を癒やして励ましていくっていうのが一番の目標です。




【リリース情報】




DedachiKenta『Rocket Science』


POCS-23002

¥2,800(tax out)


1 Rocket Science

2 This is how I feel

3 Fly Away feat. Kan Sano

4 I can't seem to let you go

5 Ambiguous

6 Life Line

7 I'll be fine

8 Step by Step

9 Alright

10 20

11 Memories

12 More than enough

-Bonus track-

13 Catch Me If You Can (Fly Away feat. Kan Sano)

14 Chromatic Melancholy (Ambiguous)

15 AYUMI (Life Line)


▶配信


【Apple Music】

https://music.apple.com/jp/album/rocket-science/1481150688


【Spotify】

https://open.spotify.com/album/4aPdMZF8bvvtzsBqFbMA91



DedachiKenta Official HPhttp://www.office-augusta.com/dedachikenta/index.html



Photo by Ki Yuu


Written by Moemi





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