Dean Fujioka - History Maker (TJO Remix) セルフ解説 by TJO

TJOが、当Remixの制作過程をライナーノーツ方式で詳しく解説。
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2016.12.17 02:00

Written by TJO

先週12/9(金)に、ディーン・フジオカ さんの「History Maker」の僕TJOによるオフィシャル・リミックスがリリースされました。

Dean Fujioka - History Maker (TJO Remix) (Preview) from TJO on Vimeo.



そしてリリース初日にして、「PPAP」やThe Chainsmokersの「Closer」などの並み居る強豪を抑えてiTunesダンスチャート1位に輝きました。(総合シングル・チャートでも最高34位に)。さらにblock.fm内の番組はもちろん、各FM局やクラブなどの現場でもプレイしてもらうなど各所で好反応いただいています。サポートしてくれている皆さん、本当にありがとうございます!

このリミックスは、自分にとっても2016年の最後の大きなトピックの一つになった作品。そこで今回は、このリミックスを作るにあたってどんな事を考えながら作ったのか、意外とリミックスを作る際の頭の中について語っている人や記事をあまり見た事がないので、以前書いた自分のMIX CDのライナーノーツ( http://block.fm/news/TJOmixSelfLiner )のように解説をしていきたいと思います。

さかのぼる事、10月下旬。「ディーン・フジオカさんの楽曲のリミックス依頼が来た」と連絡をもらった。正直最初は耳を疑った。今年の3月に一度、EMPORIO ARMANI提供による僕の番組「Smooth Navigation with EMPORIO ARMANI (以下、スムナビEA)」( http://eas.block.fm )でディーンさんをゲストとして迎え、じっくり彼の歴史や好きな音楽の話をさせてもらって以来、メディアでの活躍ぶりを前以上に意識して見るようになったが、まさか自分にそんなオファーが来るなんて想像もしてなかったからだ。しかしスムナビEAで彼と語り合った音楽観や年齢が近かった事もあって通ってきた好きな音楽の道が、とても共感できるものだったから、その驚きはすぐにワクワクへと変わっていった。「ディーンさんのリミックスはぜひやりたい!もしやるならどの曲だろうな?」。そして提案された楽曲が「History Maker」だった。ここでまた僕は驚いた。すでに今期一番の話題作として大評判のアニメ「ユーリ!!! on ICE」のオープニングテーマ曲としてアニメ好きな僕の周りはもちろん、そうでない音楽業界の近しい人達の周りでも「ディーン・フジオカの歌っているユーリの曲はいい!」と話題になっていた曲だったから。

僕自身も深夜にたまたま観たアニメの面白さと共に、その世界観を体現した楽曲に聴き入っていた一人である。個人的に、ライターの佐藤讓さんがSNSでこの曲について僕も大好きな「The Flaming Lips - Race For The Prize」を引き合いに出していて、その「多幸感」という共通するキーワードがスゴくストンとハマったのが印象的に残っている。



そんな印象的な楽曲だったからこそ、リミックスの方向性にとても悩んだ。まず原曲はアニメの世界観を体現したストリングスが力強い3拍子。これをどうしていくか。ダンス・ミュージックのリミックスを作る時、2つの方向性に別れる事が多い。一つは原曲の世界観を大事にして、歌があればその歌をちゃんと活かしたリミックスにするか。そしてもう一つがダンスミュージックと言うんだからちゃんとクラブなどの現場で「踊れる」ことを優先した、本当の意味での機能的なダンス・リミックスにするか。3拍子楽曲のリミックスの事例を探したり、どこまで原曲から変えるかのさじ加減など、近しいDJやクリエイターの方々にも相談し模索した。

今回の場合はディーンさんのファン、そしてユーリのファンに聴いてもらいたいというのが一つ、そして幾つかの彼のこの曲に関するインタビューを探し出しチェックした中で、「History Maker」が「チャレンジし続ける人への応援歌」という言葉が印象に残ったので、ディーンさんの歌う言葉を大事にしようと決めた。この原曲が面白いのは、アニメのテーマから派生した楽曲なので、それこそディズニーを彷彿とさせるような極めてドラマティックなアレンジの曲に仕上げてもいいのに、彼の音楽のこだわりが見え隠れするところだ。まず進行がダンスミュージック、現行のEDMでいうところのブレイク(サビ歌い込み)〜ビルドアップ(徐々に盛り上がり)〜ドロップ(オーケストラと歓声の大合唱)の進行になっていて非常に面白い。逆にこの手法を取り入れたからこそオーケストラと歓声のドロップ部分がディーンさんの歌の後にとてもドラマティックに響いていると思う。楽曲的な部分でもサイドチェイン(「ドンッ」というキックに合わせて他の楽器の音が絞られることでグルーヴをキープする効果)が利いており、単純に「キレイな曲」になっていないところにニヤリとしてしまった。

その時に、以前スムナビEAで共演した際に彼が岡村靖幸さんの楽曲を紹介してくれた際に言ってくれた言葉が記憶に蘇った。「自分なりのポップスを作りたい」。( http://eas.block.fm/sn-archive/deanfujioka/ )。なるほど、つまりこれはディーンさんなりのポップスなのだ。彼のこだわりを感じ、僕自身もリミックスに対するモチベーションがさらに高まった。「リミックスはTJOとしてのポップスを表現しよう。」そして悩みながらも最初に出来たリミックスのイメージが4つ。

1つは歌モノとも相性の良い2Step / UK Garage。

2番目はJauzなどに代表されるようなブリブリしたベースラインが耳に残るBASS HOUSE。

3つ目はディーンさんのゲスト出演時に、彼が選曲&僕がミックスを担当したスペシャルDJ MIX( http://block.fm/news/deanmix )で垣間見られたメロウでスロウなバラード。

そしてメロディが活きながらも同時にビートが利いた最近の流行のFuture Bass。

ディーンさんはダンスミュージックへのアンテナ感度も高いから、最新のモードなどの攻めた要素も受け入れてもらえるだろうと積極的に取り入れ、まずは4バージョンをデモで作ってみた。

自分的には3つ目のメロウでスロウなバラード・バージョンがしっくり来ていた。番組共演時に紹介していたD’angeloの「Untitled」やMIX内で選曲されていたLido、他にもレーベル「Soulection」のStarRoさんの作品やフランスのレーベル「Roche Musique」などに代表されるようなモダンでメロウな雰囲気を参考にしながら、「静まったライブ会場でそっとピアノが鳴って、ディーンさんがメロウな歌い出しでこの曲を演奏してくれたらヤバいだろうな」という勝手な妄想ライブ演出までしていた。(笑)

しかし、リミックスのリクエストに「block.fmなどのラジオや現場でもプレイされるもの」というのがあったので、メロウなだけだとクラブなどの現場でかけてもらうのは難しいと思い、最終的に平歌の部分を3番目のメロウ〜そしてドロップを4番目のFuture Bassとしてこの2つを合体させる事にした。

ただ自分の中では妄想ライブは終わっておらず(笑)、一気に盛り上がるサビのその前に、ビルドアップの部分でドラマーの方が激しくビートを叩きだし、徐々にテンションを上げて一気に突っ走る画が浮かんだので、ビルドアップ部分で駆け出すようなブレイクビーツを追加し、Trap〜Future Bassのドロップが来る流れを作った。そしてちょうどこのリミックスを制作していた時期、11月11日にblock.fmが5周年を迎え、番組企画で過去5年間のラジオでかかってきた名曲群を聴き込んでいて、朝方のフロアでみんなと共に聴きたい多幸感に溢れた楽曲に多く触れ合っていたこともあって、自然と「History Maker」の多幸感とリンクした、エモーショナルなピークを作りたいと思っていた。そう考えるとこのリミックスを作った時期に周年があったのはスゴく良い影響を及ぼしていたんだなと思う。

最終的に今回はアレンジャーとしてAva1anche君に参加してもらった。マネージメントと3者で話し合った結果、MarshemelloやOokayなどのエモーショナルなFuture Bassをレファンレンスにメロディックで力強いシンセとベースラインを導入してくれ、一気にリミックスは完成へと向かった。Ava1anche君は他にも僕の意図を汲み取ってくれて、ビルドアップ部分にJersey Clubmのビートを加えたり、ヴォーカルカットアップでさらに展開を加えてくれた事でリミックスの音楽性の幅がさらに広がった。

Ava1anche君の作品は本当にヤバいのでぜひチェックして欲しい。

こうして出来上がったのが、Dean Fujioka - History Maker (TJO Remix)だ。ディーンさんとの番組共演で共有出来た感覚、制作タイミングで大きな刺激を与えてくれたblock.fmの5周年、そして僕の方向性を汲んでサポートしてくれたマネージメントとAva1anche君、一つ一つの要素が重なってこのリミックスが出来た。それがファンやリスナーの方々からも好意的な反応をいただけているのは本当にとても嬉しい。今回形にはできなかったけど、他のバージョンならああしたい、こうしたいというアイデアも沢山湧いてきてたので、今後ディーンさんとまたクリエイティブなことが出来るのであればいつかぜひそのアイデアも実現してみたいなと。そして頭の中で描いていた妄想ライブもいつか現実のものとなる時が来たら、その時はちゃんとライブ会場の大音量で体験したいと思う。

iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/history-maker-tjo-remix-single/id1180018691


▶︎TCY Radio by ☆Taku Takahashi , Takeru John Otoguro*毎週金曜日21:00-22:30放送中http://block.fm/program/tcyradio/



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