4月にUK発の新しいベースミュージックのジャンル「Wave」にインスパイアされた話題の新曲「Echo」をリリースした俳優、ミュージシャンのディーン・フジオカが、5月19日(金)にblock.fmの人気番組「TCY Radio」に出演。そこでナビゲーターを務める☆Taku Takahashi&TJOと新曲とそのインスパイア源になったWaveについて、熱いトークを繰り広げた。
今回はそんなトークの中から、誰もが知りたかった「Echo」制作秘話と同曲に影響を与えたWaveについてのパートの中から特にここだけは!という部分を抜粋。トーク中に出てきた音楽用語に関する解説を加え、テキストによるダイジェストをお届けする。
まもなく @DeanFujioka さんが登場🌟話題沸騰中の 「Echo」
— TCY Radio (@tcyradio) 2018年5月18日
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TJO:「Echo」ということでこの曲すでに配信はされているんですが、今度6月20日(水)にシングル盤としてリリースされるんですけれども。
ディーン・フジオカ:はい。
TJO:今、放送されているドラマの『モンテクリスト伯』の主題歌ということなんですけれども、この曲がその予告編で使われた時に1番最初にblock.fmでは記事にさせてもらいまして。それも要は今、UKとか世界的に流行っているWaveというジャンルのもので。
☆Taku Takahashi:Waveじゃんかよ! みたいにね。
TJO:実際にフル尺聴かせて頂いたらめちゃWaveじゃん! みたいになったんですよ。聞きたかったのはどういったところからインスパイアされたということなんですね。
ディーン・フジオカ:そうですね、一番最初は去年の年末くらいにこの話を頂きまして。『モンテクリスト伯』の現代日本版みたいなものを作るということでそれに見合う主題歌を作って欲しいということで。これまでにいろいろな映画とかドラマとかリメイク版があるじゃないですか?
それを観ていた自分の印象からすると、なんかすごくこう、「許し」、「許す」って何だ?というか。コアバリューとして。パッと見、絶望の嘆きというイメージだったんですね。すべてを奪われ、人生ボコボコになって、人間として死んだ男が、類まれな巡り合わせ、奇跡で。だから絶望の嘆きというのを音楽で表現した時にどんなサウンドがピッタリくるのかなって。
なので作詞とか作曲しながらアレンジの方向性をリファレンスとして探すというか。いろいろな音楽をたどりながら探した結果、みんな#Waveとか#Darkwaveとかいろいろあって、これってWaveっていうんだっていうのに後から気づいたっていう感じですかね。
TJO:じゃあ特に参考にしようと考えてやったわけじゃないんですね?
ディーン・フジオカ:そうですね、でもそこに至る前にGrevesの音とかどうかなって思っていたんですね。それでリレイティドにでてきたんですが、それまでは今まで自分が好きで聴いていたもので、それこそBurielとか。もっと戻るとBurialっぽい感じかなってイメージがあって。とにかくベースミュージックっぽい不穏な感じというか。いきなり現れていきなり去ってみたいなリスナーがボロボロになるというか。そういう音作りにしたいなって思っていて。
☆Taku Takahashi:自分が好きなものだったりとか、インフルエンスされたものがWaveと呼ばれているものだったという感じってことですね。マニアックな質問なんですけど聞いておいていいですか?
この曲作る時って、印象的なのは最初のピアノのスタート、それから歌ってそこでヒステリックになるようなドロップだと思うんですが、その最初のピアノはデモの時もピアノをベースにして作っていったんですか?
ディーン・フジオカ:最初はピアノはなかったんですね。フルWaveで行こうと思っていたんですよ。それでなんとなくこういう感じなのかなっていうループを作って、鼻歌を録音して。それで歌詞がなんとなくこういう感じの答えの出ない問いかけみたいな歌詞にしたいなっていうことでああいった歌詞になって「Why~」という。
ただ、フルでそういう曲にしようと思っていたんですけど、それって最初に言っていた1人の幸せの絶頂にある男が全部奪われて絶望の中で死に絶えて、豹変するかのようにヴァンパイアとか悪魔のごとく転生するという感じがなかったんですよね、自分の中で。 アレンジの段階でコードをただピアノで弾いて、それと主旋律のメロ、簡単なやつもアレンジの段階でそのバキバキのWaveサウンドに持って行ったんですよ。
それとWaveサウンドというかもうちょっとこう、つぎはぎ的ななんとなくこういう感じですみたいなピアノのデモのやつ。それで、ピアノのスタートというのがすごく物語とのシンクロ性を持って、最終的にああいう形になって。
☆Taku Takahashi:このコントラストがめちゃくちゃ良いですよね。
TJO:わかります。Waveの部分のドロップとかドラマに合うんですよね。ドラマとゴリゴリのベースミュージックの世界観って合うんだ!っていうくらいテレビ観ていて思って。そこが面白かったなという。
☆Taku Takahashi:すごい引き込まれるんですよ。引き込まれてバコンってみたいな。
ディーン・フジオカ:「サプラーイズ!」みたいな(笑)。
☆Taku Takahashi:自分のやるせない気持ちとか怒りとか葛藤とかそういったものがすごくドラマッチックに伝わってくる内容になっているドロップになっているなって。
TJO:ではここで「Echo」にインスピレーションを与えた曲をご紹介して頂けますか?
ディーン・フジオカ:ではBurialの「Archangel」。
*Burial
UKダブステップの名門レーベル「Hyperdub」から2005年に「South London Boroughs」でデビュー。シーン初期から現在までにおける最重要アーティストの1人。「Archangel」は、昨年でリリースから10周年を迎えた2ndアルバム『Untrue』に収録されている。古いソウルミュージックのアカペラをピッチベンドしたり、『メタルギアソリッド』などゲームミュージックからのサンプリングなどが初期の音源における特徴。また有名ロックバンドRadioheadのThom Yorkeや先月来日したFour TetといったUKの有名ミュージシャンとのコラボなども行なっている。
TJO:最初に『Echo』のインスパイア源の話でBurialの話がコメントを頂いた時にあって、「ああ、なるほどな」って思ったのが、たぶん世代的にもちょっとこのいわゆる初期のダブステップの走りを体験されているから。これが源にあって、そこから今のWaveにつながっているんだっていうのが僕はしっくり流れてきたっていうか。
☆Taku Takahashi:でももっとダークで、ちょっとダビーで。でも音圧はあるんだけど、派手な音圧じゃないっていうか。「ビヨーッ!」っていう感じじゃなくて、もっと「ヴォーン!」っていう感じっていうか。
ディーン・フジオカ:そうですね。この曲からやっぱりベースミュージックの虜になったという感じですね。本当にこう新しい、何か今から変わるんじゃないかってすごく期待させられてたというか。ちょっと話それますが、グライムとかウイッチハウスとかジャンル的にごちゃまぜになったのがWaveなんだろうなっていうのが後からいろいろ解説読んでわかったというか。
ウイッチハウスっていうのは一見可愛らしいウワモノの音使いがすごく不気味に感じるみたいな。
*ウイッチハウス(Witch house)
2010年代初頭にアメリカのアンダーグラウンドシーンから飛び出した音楽ジャンルの1つ。 オカルトがテーマになった作風が 多く Cocteau Twins、The Cureなどに影響を受けているアーティストが多いと言われる。ドローンのようなドープなウワモノとヒップホップにも通じるビート、ピッチダウンしたおどろおどろしいボーカルサンプルなどが特徴的ながら、中には激しいノイズだらけの曲などもある。またこのシーンのアーティストはアーティスト名や曲名に三角形や十字といった記号が使われていることが多く、一見読み方がわからないのも特徴の1つ。代表的なアーティストはSalem、oOoOO、Balam Acabなど。また日本ではEadonmmがウィッチハウスの先駆者と言える。
☆Taku Takahashi:でもこのダークな感じのパット感とかは「Echo」とかWaveにつながる感じありますね。
TJO:僕はなんかちょっとした違和感が気持ちいいというか。だから最初ディーンさんがWaveのことを知らなかったけど、もしかしたらそういうのを感じていうのはわかるなって。
ディーン・フジオカ:だからジャンルの名前とか僕的にはすごく手探りなかたちでスタートしたんですけれども、なんとなく自分の中でトラックはトラップな感じで、ベースはそれこそ「archangel」みたいな感じでウワモノはグライムとかウイッチハウスみたいな。SkeptaっていうMCいるじゃないですか。ラッブが好きだったんですけど、トラックも好きで。Skeptaがラップしてそうなトラックって何なんだろうなって探して行ったらWaveの音に行ったみたいな。
*Skepta
現在、UKのメインストリームでも絶大な人気を誇るジャンルであるグライム。そのシーンきっての人気アーティストで、2016年のアルバム『Konichiwa」が、イギリスの音楽界において最も優れたアルバムに対して送られる音楽賞「マーキュリー賞」を受賞。また北米ヒップホップシーンとのつながりも深くDrakeやA$AP Rockyらとのコラボも行う。
TJO:ではもう1曲だけインスパイア元になった曲をご紹介して頂いてもいいですか?
ディーン・フジオカ:いいですか? すいません、Trash Roadで「Devils」。
*Trash Lord
あまり情報が公開されていないため謎の部分が多いが、Waveシーンを代表するレーベル/コレクティヴ「Wavemob」のコンピレーションにもピックアップされているアーティスト。
TJO:この曲、これぞWaveって感じですね。どこで出会いました?
ディーン・フジオカ:これはですね、SoundCloudですね。Graves以降で話していくとやたら旧ソ連、東欧の国とか、あとロシアとかそこら辺のクラブシーンの音に集まっているというか。気づいたらベラルーシとかそういう感じなんだとか。「King praig」っていう女性DJがベラルーシにいるんですけど、彼女の一時間くらいのDJプレイのYouTube動画をずっと観てたりとか。BPMが65とか70くらいのすごくスローなやつで。
ちょっと宗教感を感じるというか、「アヴェ・マリア」的な。ちょっと魔法使い的なでも聖母マリア的な感じもあって。東方正教とかのイコンの絵のイメージの曲を掘っていたらこのTrash Roadにぶつかって。この曲のウワモノの音の感じが自分の中でさっきいったグライムとかウイッチハウスのウワモノの感じでこれだなって思って。すごい不良というか、あまり幸せになれない人生の結末を予感させるというんですかね。
*King Plague
ベラルーシ出身の女性DJ/プロデューサー。オリジナル曲の作風はドローンからウィッチハウス、Wave系までをこなすという印象。DJミックスではそれらに加え、Emo TrapなどSoundCloud Rap、エレクトロニカなどが追加される。モスクワで行われたBoiler Roomにも出演するなど東欧、ロシア周辺で人気の模様。
TJO:「Echo」とかまさにそんな感じですもんね(笑)。
☆Taku Takahashi:ぶっちゃけ暗めじゃないですか? わりとダークな曲を聴くことのほうが多いんですか?
ディーン・フジオカ:わりとウェットでスローな音楽好きですね。
☆Taku Takahashi:ダークじゃなくてもいい?
ディーン・フジオカ:そうですね。色は黒とか灰色じゃなくても、ディレイとかリヴァーヴの感じが好きというか。ダビーなものが好きで、明るいものでもニュートラルなものでも
TJO:でも同時にYUC’eさんにリミックスを頼むという、この幅の広さ。
ディーン・フジオカ:あの時は「Let it snow」という曲を去年末の別のテレビドラマの主題歌で作って。それは自分が覚えている子供の時に日本の歌謡曲のイメージなんですよね。あれが。それを現代的なアレンジにしたら「Let it snow」、オリジナルの方の感じなのでYUC’eちゃんの「Future Candi」を聴いてすごいなって思って。
この感じで「Let it snow」のメロディが合体したらどれだけアゲアゲになるというか。そういことで是非お願いしたいなということで声をかけさせてもらいました。
***
このように「Echo」の制作秘話や、それにインスピレーションを与えた曲などについて熱く語ってくれたディーン・フジオカ。今回のゲストトークの冒頭でも話していたように日本の俳優の中で自称1番のblock.fmのヘビーリスナーと宣言するとおり、その音楽に対する情熱と造詣の深さは本物だ。
6月20日にリリースされるEP『Echo』にはWaveな新曲「Echo」だけでなく、カップリング曲の「Hope」も収録されていたり、特典付きの2種類の初回限定版にはミュージシャンとしての彼の素顔をあますことなく収めた貴重な映像も確認できるので、ファンはそちらもお楽しみに。
また番組の放送のゲストトークの後半ではディーン・フジオカがどのようにして音楽を発見しているかについてや、最新のオススメ曲なども紹介してくれているので、放送を聞き逃した人は是非公開中のアーカイヴでチェックしてみよう!
なお、block.fmでは今回、ディーン・フジオカの出演を記念して、彼のサイン入り色紙を抽選で3名にプレゼントするぞ! 応募の詳細は下記のとおりなので、リスナーのみんなは奮ってご応募を。
■ディーン・フジオカサイン色紙プレゼント応募方法
💫Dean Fujiokaよりリスナープレゼント💫 先週の「TCY Radio」に登場した @DeanFujioka によるサイン色紙が3名様に当たるチャンス❣️ #TCYRadio #DeanFujioka #ディーンフジオカ
— block.fm (@blockfmjp) 2018年5月21日
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written by Jun Fukunaga